ホーム野生生物ニュース薬用動植物ニュース>野生植物の持続可能な形での採取:世界各地で次々に成功

野生生物ニュース

野生植物の持続可能な形での採取:世界各地で次々に成功

2010年09月17日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
100917White-Palle-resin-Ind.jpg Ailanthus triphysaを採集している様子
© Arpana Basappa

【ドイツ、ベルリン発】

 トラフィックは、このたび新しいレポート『Wild for a cure: ground-truthing a standard for sustainable management of wild plants in the field(野生植物の持続可能な管理の基準:フィールドにおける実証)』を発表した。薬やアロマ(芳香)、染料、食品として利用される野生の植物の持続可能な採取に関する新しい基準は、世界的に活用されることにより、植物種やその生育地を守り、また植物の採集に頼った生活をしているコミュニティの利益になるという新しい道筋を示している。

インドでは: Ailanthus triphysa (訳注:ニガキ科の一種)の木の樹脂はインドの伝統薬やお香に使われるが、インドのカルナータカでは現在、樹皮を剥がしたり木を枯らしたりすることなく樹脂を採集することができるようになった。

カンボジアでは:新しい協同組合が、より適切な採取・乾燥・市場販売をおこなうことで、薬用植物を採集しているコミュニティへの利益を増加させている。

ブラジルでは:アマゾナス州において、女性の共同組合と大手の天然化粧品会社が持続可能な方法で採取された製品の販売に関する協力関係を目指している。

レソトと南アフリカでは:その塊茎が消化器疾患の治療に使われるペラルゴニウム・シドイデスPelargonium sidoides(訳注:フウロソウ科の一種)の採取・管理戦略が、今後の植物の持続可能な採取とコミュニティにとっての長期的な利益を提供することになるだろう。

 この新しいレポートでは、南米、南アフリカから東南アジアにおよぶ地域でおこなわれているプロジェクトについて詳しく紹介している。こうしたプロジェクトでは、持続可能な野生からの採集に関するガイドラインを適用することで、地域の人々にとっての暮らしや利益を改善しながら、野生から採取される重要な自然資源を守るための新しい方法が考案された。  薬や化粧品や栄養補助食品に利用されている推定5万~7万種の植物のうちおよそ1万5000種が脅かされており、こうした植物の供給を確保するための実用的なガイドラインを開発することは、今もっとも緊急の課題である」とトラフィックのグローバル薬用植物プログラムのリーダーでこのレポートの共著者でもあるアナスタシア・ティモシャイナは言う。

 ガイドラインは十分な柔軟性を持っており、ボスニア・ヘルツェゴビナやブラジル、カンボジア、インド、レソト、ネパール、南アフリカといった地域で、管理の多様さや土地保有のシステムといった現地の条件に合うように適用させることができることをこのプロジェクトは示した。

 
100917report_Wild_for_A_Cure.jpg

 本レポートでは、採集者、地元の組織、資源管理当局、産業界といった地域のあらゆる関係者が、開始当初からパートナーとして関与することや、製品に「付加価値」を与え、伝統的な知識を持つ人々へ公平に利益を分配するために考案された方法を用いて、採取された製品を販売するための確実で現実的な市場が開発されることの重要性についても指摘している。

 適切な人材や資金が、野生植物の資源評価、採集のモニタリング、採集・加工技術および現地のプロジェクト従事者の訓練や、もっとも大切な伝統的知識の保護や利益の共有に割り当てられるべきである。

 「BMZ(ドイツ経済協力開発省)が資金提供している「Saving Plants that Save Lives and Livelihoods(生命と生活を支える植物を守る)」プロジェクトは、人類の将来のために野生の植物を管理するための、言葉を行動に移す重要な一歩を踏み出した」とディルク・ニーベル経済協力開発ドイツ連邦大臣は言う。  「トラフィックを支援することで、野生からとられる重要な野生植物資源の保全に貢献し、地域の人々の生活や利益を改善することができたことを、今度の生物多様性条約会議に先駆けて示すことができることは喜ばしい。」

 この調査で評価がおこなわれた「野生の薬用・アロマティック植物の持続可能な採集に関する国際基準(ISSC-MAP)」は、薬用・アロマティック植物の公平な取引を確保することを目指す現行のフェアワイルド・ファウンデーションの基準に統合された。野生から採集された天然原料を持続可能な形で管理・取引することを目指すフェアワイルド基準の新しいバージョン2.0は、9月8日に発表されている。(注)

 「薬用植物資源の持続可能な利用を保証するためにドイツが継続的に協力してくれたことは、特に資源に頼って暮らす人々がいる国において、保全と開発援助政策が融合するモデル事例である」とWWFのグローバル・スピーシーズ・プログラムのディレクターであるCarlos Drews博士は言う。

「新たに作られたフェアワイルドのガイドラインは、広範囲なシナリオの中での採取・管理体制を支持するための非常に重要な手段であり、世界規模の保護団体による挑戦である」とIUCNの生物多様性保全グループのディレクター、Jane Smart氏は言う。

 

プロジェクトは「薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採取に関する国際基準(ISSC-MAP)」の実施について調べたものである。ISSC-MAPはその後拡大されたフェアワイルド基準に完全に組み込まれることになった。新たに改正されたフェアワイルド基準は2010年9月8日にすでに発表されている。(詳しくはこちらhttp://www.trafficj.org/press/medicinal/n100909news.html

地域の人々の生活や野生の植物の多様性の保全を支援するフェアワイルド基準の貢献について、名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(2010年10月18日~29日)の際に、会議参加者向けのサイドイベント ( http://www.cbd.int/register/side-events/view.aspx?id=1761 )、およびどなたでも参加いただけるセミナーが開催されます( http://www.trafficj.org/press/medicinal/j100909event.html )。

 


■本件に関するお問合せ:
トラフィック イーストアジア ジャパン 金成かほる Tel:03-3769-1716
TRAFFIC International、Richard Thomas(Communications Co-ordinator)
Tel: +44 (0)1223 277427、Fax: +44 (0)1223 277237、Email: richard.thomas@traffic.org

■ レポートはこちらからダウンロードできます。『Wild for a cure: ground-truthing a standard for sustainable management of wild plants in the field(野生植物の持続可能な管理の基準:フィールドにおける実証)』

2010年09月17日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20160315Global transport leaders sign historic declaration.jpg

大手輸送関連企業の代表たちが歴史的な宣言に調印、野生生物の違法取引ルート断絶に立ち上がる

2017年05月31日

2017年5月、海外で日本人が野生生物の密輸容疑で逮捕される事件が2件起こった。いずれも日本へ向けた飛行機に乗り込む前に空港で発覚し、スーツケースの詰め込まれた動物たちは救出された。密猟の現場から需要のある市場への輸送は、野生生物犯罪に不可欠なプロセスである。この違法取引ルートを絶つべく輸送セクターの企業が動きだした。

© Purple Lorikeet / Creative Commons Licence CC BY-SA 2.0

170224.jpg

マダガスカルの木材伐採、制御不能 新たな調査で明らかに

2017年02月14日

トラフィックが新たに発表した報告書によって、マダガスカルの希少な木材資源が、近年実質的に管理不能な状態にあったことが示された。マダガスカルには、ローズウッドやエボニーといった木材種の固有種が多数生育し、その魅力的な色調と優れた耐久性を理由に、特にアジアで家具や調度品として大きな需要がある。

© Julien Noel Rakotoarisoa / MEEF

170112.jpg

野生植物の採集者、協同モデルの成功事例からヒントを得る(ベトナム

2017年01月20日

トラフィックは、生物多様性の保護と地域社会の活性化に向け、野生の薬用・アロマティック植物採集者の理解を高めようと活動している。この活動を成功させるため、ベトナムのバッカン省で採集者グループや協同組合を設立する地元の採集者を支援している。現在、トレーニングプログラムや他の成功モデル研究を通して、これら採集者組織の知識向上に努めている。

© TRAFFIC

161004CoP17.jpg

【CITES-CoP17】閉幕:野生の動植物保全における多くの進捗、懸念される違法取引の増大
-更なる取り組みの必要性

2016年10月05日

第17回ワシントン条約締約国会議が、10月4日に終了した。野生動植物の取引規制に関する各国間の2週間に亘る協議では、国際社会が協調して、違法取引の根絶と持続可能な利用を確かなものにするための大きな前進があった。多岐に亘る野生生物に関する課題に重要な前進が見られ、数々の新しい決議が採択された。

©TRAFFIC

関連出版物

15_Hard_to_bear_Malaysia.jpg

Hard to Bear: An Assessment of Trade in Bear Bile and Gall Bladder in Malaysia

発行:TRAFFIC Southeast Asia【2015年6月】 著者:Lee, S.L., Burgess, E.A., Chng, S.C.L.【英語】50pp

14_Traditional_and_Wild-1.jpg

Traditional and Wild: Revitalizing traditions of sustainable wild plant harvesting in Central Europe

発行:TRAFFIC and WWF Hungary【2014年4月発行】 著者:Kristina Rodina, Anastasiya Timoshyna, Andreja Smolej,Darijan Krpan, Elena Zupanc,Éva Németh,Gabriela Ruzickova,Gergő Gáspár, József Szántai,Malgorzta Draganik, Péter Radácsi,Stanislav Novák, Szilárd Szegedi【英語】40pp

pagetop