
【2010年9月8日 スイス、ワインフェルデン発】
フェアワイルド・ファウンデーション*は、野生から採集された食品・化粧品・薬に使われる植物の持続可能な管理と取引についての基準を改定した。
世界的には年間40万t以上の薬用・アロマティック植物が取引されており、こうした種の多くは野生から採取されている。世界的に薬として使われている5万~7万種の植物のうち、約1万5000種が過剰な採取や生育域の喪失によって脅かされていると考えられている。
「今回改定されたフェアワイルド基準を活用することで、薬用植物を持続可能な形で管理・採取することができるようになり、これらの採集・取引に関わる人々が、その知識や努力に見合う公平な取引をすることができるようになる」とフェアワイルド・ファウンデーションで広報とマーケティングを担当している役員会のメンバーであるベルト・ヤン・オッテンは言う。最新の基準は植物の専門家や世界各地のハーブ製品業界の代表者たちとの広範な議論の末に作成された。
「世界市場におけるハーブ製品の大手の加工業者として、商品の核となる原料の持続可能な供給を確保するための計画に一役を担うことが有益であるのは明らかだ」とトラディショナル・メディシナルズのジョセフ・ブリンクマンは言う。この会社は現在、フェアワイルドの認証を取った原料を使って製造されているJust for Kids Organic Nighty Night® Herbal TeaやOrganic Throat Coat® Herbal Teaなどの製品を販売している。
フェアワイルド基準の認証機関であるIMO (the Institute for Marketecology)のハイコ・シンドラーによれば、世界のハーブ製品産業はフェアワイルドの認証計画の採用に予想以上に乗り気である。「今年、13の国の23の野生の植物採集をおこなっている企業がフェアワイルドの認証を受けようとしている」と彼はコメントする。
フェアワイルド基準は、持続可能な形で取引された製品であるという認証を受けたいと考えている企業だけのものではない。今回の改定以前の基準は、すでに自然資源の管理計画の基盤として多数の国の政府機関に利用されており、生物多様性条約への貢献を果たす助けとなっている。
BfN(ドイツ連邦自然保護庁:フェアワイルド基準の開発に資金的な援助をおこなった)の長官であるベアテ・イェッセル教授はこうコメントする。「国際生物多様性年の今年、政府・産業界・消費者は、薬用植物の過剰な利用が、広い範囲で人々の健康や経済、生物多様性を脅かし、原産国でしばしば最貧の社会集団に属する採集者たちの暮らしをむしばんでしまう可能性があることにそれぞれ気がつかなくてはならない。」
フェアワイルド基準バージョン2.0は、フェアトレードに焦点をあてた最初のフェアワイルド基準と、生態的(エコロジカル)な持続可能性に焦点をあてた「薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採集に関する国際基準(ISSC-MAP)」の基礎的な要素をすべて組み合わせたものである。さらに改定版には、実際に現場で基準を採用した際に得られた教訓も組み込まれている。
注:フェアワイルド基準は、野生から採取された植物(および植物に近い)資源に関する下記の11の主要な分野における採集の最適な手法(ベストプラクティス)および取引に関するガイダンスを提供している。
1. 野生の植物資源の維持
2. 環境に対する悪影響の回避
3. 法律、規則、協定の遵守
4. 慣習上の権利および利益の配分の尊重
5. 採集者と雇い主の間での公平な契約関係の促進
6. 野生からの採集活動への子供の参加の制限
7. 採集者とそのコミュニティへの利益の確保
8. フェアワイルドの採集事業で働くすべての労働者へのフェアな労働条件の確保
9. 責任のある管理手法の適用
10. 責任あるビジネス手法の適用
11. フェアワイルドの購入者による関与の促進
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* フェアワイルド・ファウンデーションは、野生の薬用植物の持続可能な採取とフェアトレードを確保するためのフェアワイルド基準を運営しています。
* 野生生物の取引を調査・監視しているトラフィックは、フェアワイルド基準の生態的な基準策定に携わり、フェアワイルド認証制度を支援しています。
* またトラフィックは、10月に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)において、フェアワイルドに関するイベントを開催します。くわしくはこちら
■ 詳細に関するお問い合わせ
フェアワイルド基準の適用、またはフェアワイルド認証製品の入手に関する詳細については、www.FairWild.orgをご覧いただくか、フェアワイルド・ファウンデーションにご連絡ください。(info@FairWild.org)
本件に関するお問合せ:トラフィックイーストアジアジャパン 金成かほる(Tel:03-3769-1716)
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