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生物多様性と野生生物取引

地球上にはさまざまな生き物がいて、互いにつながり合って生きています。そして、これを支える生態系があります。
その全体を『生物多様性』と呼びます。熱帯林、農地、里山、河川、沿岸、海洋など生態系のタイプはさまざまですが、 私たちはそこから得られる恵みをもとに暮らしています。木材、薬用植物、衣類、農作物、魚介類、サンゴなど。

ところが、もし、ある生物種を過剰に利用するとしたら、どうなるでしょう。 その生物は数を大きく減らし、恵みを得るのが困難になっていくことでしょう。過剰な利用は生物多様性を損なうのです。

cMartin Harvey / WWF-Canon

人が野生生物を利用するとき、売買や交換などの経済的行為をともないます。 つまり、野生生物の取引が生じます。 適正な水準を超えた野生生物の取引は、生物多様性を脅かす要因になります。 生物多様性を守るためには、生息地を保全するのと同時に、野生生物取引の問題にも取り組んでいくことが大切なのです。

野生生物取引とは?

野生生物取引とは、野生の動植物種を売買したり、交換したりすることを言います。
生きた動物や植物だけでなく、毛皮、薬、ペット、木材、魚、皮革製品といったさまざまな製品が取引されます。

【なぜ野生動植物は取引されるのか】
野生生物が取引される理由はたくさんあります。例えば、水産物や肉などの食料、 燃料や牧草、木材や樹脂などの建築材料、皮革・毛皮・羽毛などを使った衣類や装飾品 、鷹狩りからトロフィーハンティングといったスポーツ、動植物に由来する薬による医療、宗教、コレクション、ペットなどです。

野生生物の取引をおこなう最大の動機は経済的なものです。それは地元の人々のささやかな現金収入を目的としたものから、海洋漁業や伐採企業のような大規模な利潤追求型のビジネスまで様々です。

野生生物を実際に捕獲し、採取する人々と、最終的にそれらを消費する人々の間には、保管、出荷、輸送、加工、工業生産、マーケティング、輸出、小売業など数多くの仲介者が存在することになります。実際は、ただ最終消費者という形であっても、だれもが何らかの形で野生生物の取引に関わっていることになります。

【取引の規模-世界の輸入総額は1,600億米ドル前後】
数万という種の、数億という野生動植物が取引の対象とされています。TRAFFICの推計によれば、 1990年代初めの段階で、合法的な野生生物製品の全世界の輸入総額は1,600億米ドル前後と考えられています。

野生生物の国際取引で、数量においても金額においても、もっとも重要な分野は木材取引と水産資源取引です。 国連食糧農業機関(FAO)によれば、1億 t 以上の魚(1998年)、10億m2 以上(1999年)の木製製品が国際取引されています。薬用植物とアロマティック植物の国際取引は44万 t 以上(1996年)になります。また金額でみると、合法的な木材製品の輸出は1,320億米ドル以上(1999年)、1998年の合法的な海産物の輸出は約500億ドルであったといいます。

cBrent Stirton / Getty Images
【野生生物取引における懸念】
人口増加に伴い、野生生物に対する需要も高まります。先進国では野生生物に対する需要を増幅させるようなライフスタイルが浸透していて、多種多様な水産資源、皮革製品、木材、薬の原料とされる動植物、ペット、装飾品などに対する絶え間ない需要があります。その対極には極度の貧困が存在し、野生生物は人々が最低限、生活を維持するための手段とされ、生活に必要なものを手に入れるため野生生物が取引されることになります。

このように人々の暮らしと野生生物とは切っても切れないものです。生物多様性を守るためにも、人々の暮らしを守るためにも、持続可能な野生生物の取引を考える取り組みは大切です。

cBrent Stirton / Getty Images

取引される多様な生き物

多様な野生生物が人々の暮らしを豊かにしています。世界で利用・取引されている野生生物をご紹介します。
cBrent Stirton / Getty Images
絶滅の危機にあるトラを救う 日本への象牙輸入について 人とクマとクマノイと
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