
![]() ©Brian J. Skerry / National Geographic Stock / WWF |
【トラフィックイーストアジアジャパン発】
2010年6月23日から2日間、オーストラリアのブリスベンで5つのまぐろ類地域漁業管理機関(RFMO)が 合同で協議する混獲合同作業部会(Kobe II Bycatch Workshop)が開催される。これは、マグロ漁業における海鳥やウミガメ、サメ類、海洋性哺乳類などの混獲削減にむけた取り組みについて議論することを目的とするものである。各RFMOの加盟国だけではなく、オブザーバーとして国際連合食糧農業機関(FAO)といった関連する国際機関やトラフィックなどNGOが出席する。
マグロ漁業によって混獲される生物のうちサメ類について、トラフィックは、2009年にレポート『Trends in Global Shark Catch and Recent Developments in Management(サメ類の国際的な漁獲動向と管理措置をめぐる最近の進展)』を発表し、サメ類の漁獲動向とFAOが2000年に策定したサメの保護および管理に関する国際行動計画(IPOA-Sharks)にもとづく国内行動計画(NPOA)や各RFMOなどの管理措置について分析をおこなった。FAOに漁獲量データが十分に報告されていないだけではなく、種別の漁獲量データが不足していること、漁獲後に投棄されたサメが含まれずに保持された重量のみが報告されていることなどを明らかにし、サメ類の持続可能な利用にとって、現在の施策とモニタリングには改善が必要であることを指摘した。漁業がどのようにサメ資源に影響を与えているのかを分析するためには、このような状況を改善することは重要である。これまで、トラフィックは、種を識別するためヒレがついた状態で水揚げすることを求め、さらにすべてのサメ製品は最終消費地までトレーサビリティのためのタグをつけることが必要であるとRFMOに対して主張してきた(2009年12月7日野生生物ニュース「メバチの管理措置が失敗していることに懸念」)。
![]() ©TRAFFIC East Asia-Japan |
今年3月に、カタールのドーハで開催された第15回ワシントン条約締約国会議では、8種のサメが附属書 II への掲載を提案された。漁業国は、水産資源はワシントン条約ではなくRFMOによって管理されるべきと主張し、議論の末、附属書 II 掲載の提案はすべて否決された。今月末に始まるまぐろ類地域漁業管理機関合同会合の混獲作業部会で、漁業国がワシントン条約締約国会議の場でRFMOが管理すべきとした自らの主張に対してどのような答えを導き出すのか、トラフィックは注目している。
レポートの日本語版は、こちらからダウンロードできます。
『サメ類の国際的な漁獲動向と管理措置をめぐる最近の進展(Trends in Global Shark Catch and Recent Developments in Management)』
関連ニュース
大手輸送関連企業の代表たちが歴史的な宣言に調印、野生生物の違法取引ルート断絶に立ち上がる
2017年05月31日
2017年5月、海外で日本人が野生生物の密輸容疑で逮捕される事件が2件起こった。いずれも日本へ向けた飛行機に乗り込む前に空港で発覚し、スーツケースの詰め込まれた動物たちは救出された。密猟の現場から需要のある市場への輸送は、野生生物犯罪に不可欠なプロセスである。この違法取引ルートを絶つべく輸送セクターの企業が動きだした。
© Purple Lorikeet / Creative Commons Licence CC BY-SA 2.0
2017年02月14日
トラフィックが新たに発表した報告書によって、マダガスカルの希少な木材資源が、近年実質的に管理不能な状態にあったことが示された。マダガスカルには、ローズウッドやエボニーといった木材種の固有種が多数生育し、その魅力的な色調と優れた耐久性を理由に、特にアジアで家具や調度品として大きな需要がある。
© Julien Noel Rakotoarisoa / MEEF
ヒレはお金についていく:新たな調査結果、
サメ取引におけるより良いトレーサビリティと全体像把握の必要性
2016年11月18日
新たなトラフィックの報告書によって、東アジアにおけるフカヒレの取引は、どこでどのように利益が得られるかによって急速に変化しており、より良いトレーサビリティと市場の世界的な全体像の把握が必要であることが浮き彫りになった。
【CITES-CoP17】閉幕:野生の動植物保全における多くの進捗、懸念される違法取引の増大
-更なる取り組みの必要性
2016年10月05日
第17回ワシントン条約締約国会議が、10月4日に終了した。野生動植物の取引規制に関する各国間の2週間に亘る協議では、国際社会が協調して、違法取引の根絶と持続可能な利用を確かなものにするための大きな前進があった。多岐に亘る野生生物に関する課題に重要な前進が見られ、数々の新しい決議が採択された。
©TRAFFIC
関連出版物
The Southern Bluefin Tuna Market in China
発行:TRAFFIC Hong Kong【2017年6月】 著者:Joyce Wu【英語】50pp
The Shark and Ray Trade in Singapore
発行:TRAFFIC,Malaysia【2017年5月】 著者:Boon Pei Ya【英語】59pp