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【香港発、2016年11月8日】
今月発表された新たなトラフィックの報告書により、東アジアにおけるフカヒレの取引は、どこでどのように利益が得られるかによって急速に変化しており、より良いトレーサビリティと市場の世界的な全体像の把握が必要であることが浮き彫りになった。
『中国、香港、台湾におけるフカヒレおよびイトマキエイの鰓板の取引(Shark fin and mobulid ray gill plate trade in mainland China, Hong Kong and Taiwan)』により、これらの製品の取引が非常に動的であることが明らかとなった。例えば、世界で取引されるフカヒレの40%を扱う香港からのフカヒレの再輸出は近年顕著に変化してきた。長年、最大の輸入国であった中国向けの再輸出量は2010年に大幅に減少したが、2010年、2013年、2014年にベトナムが香港からのフカヒレの最大の輸入国となったことで、その量は相殺された。報告書によると、ベトナムは、他の消費市場へフカヒレを別ルートで運ぶための経由地としての役割を果たしているにすぎない可能性があり、状況をさらに複雑にしている。
「近年の取引ルートの変化は、例えば、中国への輸入量の減少が、フカヒレおよび身肉の世界全体の取引の減少を意味すると結論づけるのがもはやできないことを意味する」と、トラフィックのシニア・プログラムオフィサーであり、この報告書の著者であるジョイス・ウー(Joyce Wu)は述べた。「実際に何が起こっているのかを十分認識するためには、物事をより広い視野で捉える必要がある」。
取引の複雑さは、一貫性のないデータの記録制度により一層複雑なものとなっている。これは、この地域におけるフカヒレの取引の規制が大幅に妨げられており、追跡できない市場供給と合わせ、ヒレが持続可能な出所から来ているのか、また、法律に則って漁獲されているのかの証明が不可能となっていることを意味する。
また、中国、香港および台湾の店員は、自分たちが販売しているフカヒレの85%のサメの種を分かっていなかった。
「複雑な市場の動態と、取引される種や出所に関する基本的な情報ですら欠如していることは、何が取引され、どこを通ってどこに行きついたかを正確に追跡する明確なトレーサビリティ制度の導入の必要性を意味している」と、トラフィックの水産プログラムリーダーであるグレン・サント(Glenn Sant)は述べた。
先月、南アフリカで、クロトガリザメ、3種のオナガザメ類、9種のイトマキエイ類が新たにワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の附属書Ⅱに掲載され、すでに附属書に掲載されており、商業的に漁獲されているサメおよび2種のオニイトマキエイに加わることとなった。この掲載は、取引が持続可能な水準で行われることを担保するために、許可を必要とすることで、これらの種の保護を提供するものである。ワシントン条約締約国会議において、政府代表たちは、トレーサビリティ制度を開発する計画およびサメとエイの現在の掲載に関する施行を改善するための研修についても承認した。
「ワシントン条約は、各国政府がサメとエイの種に関する、漁獲から市場まで適用可能なトレーサビリティ制度を開発するための絶好のチャンスを提供している」と、サントは述べた。
「トレーサビリティは、サメおよびエイの製品の持続可能で合法的な取引の仕組みを強化する上での鍵となるものである。要するに、製品にトレーサビリティ情報がただし書きで書かれている場合に、その製品が合法的で持続可能であるという点について確信があるということだ」。
トラフィックは、以前、有害でないという所見(NDFs)を得るためのガイドラインを開発した。NDFは、ワシントン条約の締約国が、取引が持続可能な水準であるかどうかを決定する際に用いられる仕組みである。
「サメとエイの個体数の長期的な生存にとって絶対的に重要となるのは、取引される製品が合法で持続可能な形で調達されていることを確実にすることである」と、サントは述べた。
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