ホーム野生生物ニュース水産物ニュース>ヒレはお金についていく:新たな調査結果、
サメ取引におけるより良いトレーサビリティと全体像把握の必要性

野生生物ニュース

ヒレはお金についていく:新たな調査結果、
サメ取引におけるより良いトレーサビリティと全体像把握の必要性

2016年11月18日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

【香港発、2016年11月8日】 

 今月発表された新たなトラフィックの報告書により、東アジアにおけるフカヒレの取引は、どこでどのように利益が得られるかによって急速に変化しており、より良いトレーサビリティと市場の世界的な全体像の把握が必要であることが浮き彫りになった。

 『中国、香港、台湾におけるフカヒレおよびイトマキエイの鰓板の取引(Shark fin and mobulid ray gill plate trade in mainland China, Hong Kong and Taiwan)』により、これらの製品の取引が非常に動的であることが明らかとなった。例えば、世界で取引されるフカヒレの40%を扱う香港からのフカヒレの再輸出は近年顕著に変化してきた。長年、最大の輸入国であった中国向けの再輸出量は2010年に大幅に減少したが、2010年、2013年、2014年にベトナムが香港からのフカヒレの最大の輸入国となったことで、その量は相殺された。報告書によると、ベトナムは、他の消費市場へフカヒレを別ルートで運ぶための経由地としての役割を果たしているにすぎない可能性があり、状況をさらに複雑にしている。

 「近年の取引ルートの変化は、例えば、中国への輸入量の減少が、フカヒレおよび身肉の世界全体の取引の減少を意味すると結論づけるのがもはやできないことを意味する」と、トラフィックのシニア・プログラムオフィサーであり、この報告書の著者であるジョイス・ウー(Joyce Wu)は述べた。「実際に何が起こっているのかを十分認識するためには、物事をより広い視野で捉える必要がある」。

 取引の複雑さは、一貫性のないデータの記録制度により一層複雑なものとなっている。これは、この地域におけるフカヒレの取引の規制が大幅に妨げられており、追跡できない市場供給と合わせ、ヒレが持続可能な出所から来ているのか、また、法律に則って漁獲されているのかの証明が不可能となっていることを意味する。

 また、中国、香港および台湾の店員は、自分たちが販売しているフカヒレの85%のサメの種を分かっていなかった。

 「複雑な市場の動態と、取引される種や出所に関する基本的な情報ですら欠如していることは、何が取引され、どこを通ってどこに行きついたかを正確に追跡する明確なトレーサビリティ制度の導入の必要性を意味している」と、トラフィックの水産プログラムリーダーであるグレン・サント(Glenn Sant)は述べた。

 先月、南アフリカで、クロトガリザメ、3種のオナガザメ類、9種のイトマキエイ類が新たにワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の附属書Ⅱに掲載され、すでに附属書に掲載されており、商業的に漁獲されているサメおよび2種のオニイトマキエイに加わることとなった。この掲載は、取引が持続可能な水準で行われることを担保するために、許可を必要とすることで、これらの種の保護を提供するものである。ワシントン条約締約国会議において、政府代表たちは、トレーサビリティ制度を開発する計画およびサメとエイの現在の掲載に関する施行を改善するための研修についても承認した。

 「ワシントン条約は、各国政府がサメとエイの種に関する、漁獲から市場まで適用可能なトレーサビリティ制度を開発するための絶好のチャンスを提供している」と、サントは述べた。

 「トレーサビリティは、サメおよびエイの製品の持続可能で合法的な取引の仕組みを強化する上での鍵となるものである。要するに、製品にトレーサビリティ情報がただし書きで書かれている場合に、その製品が合法的で持続可能であるという点について確信があるということだ」。

 トラフィックは、以前、有害でないという所見(NDFs)を得るためのガイドラインを開発した。NDFは、ワシントン条約の締約国が、取引が持続可能な水準であるかどうかを決定する際に用いられる仕組みである。

 「サメとエイの個体数の長期的な生存にとって絶対的に重要となるのは、取引される製品が合法で持続可能な形で調達されていることを確実にすることである」と、サントは述べた。

 
香港の水産物店 ©Joyce Wu/TRAFFIC

2016年11月18日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

20170715c.jpg

香港で史上最大級7.2tの密輸象牙を押収

2017年07月18日

2017年7月4日、香港税関は葵涌(クワイチョン)でコンテナに隠された7.2tの密輸象牙を押収した。年に2万頭を超えるアフリカゾウが密猟されている中で起きた今回の摘発は、過去30年で最大級の規模と見られており、象牙の違法取引をめぐる国際的な組織犯罪の深刻さを物語っている。こうした一連の野生生物の違法取引に問題に対し、各国政府は今、強く連携した取り組みを進めようとしている。合法的な象牙の国内市場を持つ日本にも、この流れに参加する積極的な姿勢と取り組みが強く求められている。

©Keiko Tsunoda

関連出版物

17_SBT_Market_in_China.jpg

The Southern Bluefin Tuna Market in China

発行:TRAFFIC Hong Kong【2017年6月】 著者:Joyce Wu【英語】50pp

17_The_Shark_and_Ray_Trade_in_Singapore.jpg

The Shark and Ray Trade in Singapore

発行:TRAFFIC,Malaysia【2017年5月】 著者:Boon Pei Ya【英語】59pp