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中国が押収象牙在庫を処分-需要削減のための象徴的で歴史的な式典-

2014年01月22日
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6.15t以上の押収象牙を粉砕した中国当局©TRAFFIC

【中国発 2014年1月6日】

 中国政府は、蔓延しているゾウの密猟と違法な象牙取引に対処するための国際的な活動をバックアップすることを示す行動として、法執行活動を通して蓄積された押収象牙6.15tを処分した。

 政府関係者が、立会人(中国駐在の大使館、国連環境計画中国オフィス、IUCN中国オフィス、WWFとトラフィックを含む非政府組織などの代表)たちと共に、この式典に出席した。

 ここ1,2年で、ガボン、フィリピン、米国が、押収象牙の在庫を処分し、さらにフランスも同様の意思を示している。

 「押収象牙の処分は、消費を減少させるための他の政府主導の取り組みと連携して、象牙の違法な市場に大きな影響を与える、という重要な公的宣言になる」と、トラフィックの象牙取引専門家のトム・ミリケンは言う。

 保管している押収象牙の処分における成功事例と透明性が、確実な象牙在庫管理システムの運用上明らかにされるべきである、とトラフィックは考えている。すべての象牙在庫の正確な書類が、保持されるべきであり、処分される象牙の在庫記録の詳細が、作成されるべきである。また、独立した監査は、象牙が違法市場の中に紛れていないという証拠を提供するために、処分を予定している量と、実際に処分された量とが合致することを保障できる。

 中国には、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)で象牙取引が禁止となった1989年前に取得した在庫と、"押収象牙は商業目的で利用することはできない"、というワシントン条約の規則の下、アフリカ4カ国によるワシントン条約公認の「一回限り」の象牙販売をおこなった2008年に取得した在庫からなる合法な象牙市場がある。

 中国は、違法な象牙取引を強固に取り締まるために準備していることを前もって表明していた。象牙の処分は、総計3.2tの象牙を密輸したとして8人の中国市民が有罪判決を受け、中国東部の安徽省で3~15年の懲役刑を宣告されたわずか数週間後に、おこなわれた。

 WWF中国の特別プログラムの代表であるファン・ジィヨン(Fan Zhiyong)は、「WWFは、押収象牙を処分することは、違法な象牙取引対策の法執行強化を保障する政府の宣言の表明であり、ゾウの密猟と違法な野生生物取引対策の国際活動を後押しすることになる、と信じている」と言う。

 「何万頭ものアフリカゾウが、強大な象牙需要のために密猟者によって捕殺されている。中国の行動は、国内の象牙市場を一掃し、アフリカのゾウの存続を保障するための中国政府の重要な宣言である」

 高い密猟数の値は、トラフィックがワシントン条約の締約国を代表して管理しているゾウ取引情報システム(ETIS)を通じて集めている象牙取引の数値を反映している。

 補正されたETISのデータによると、象牙の違法取引は、2011年に、少なくとも16年間で最も高い値に達し、2012年まで受け入れ難いほどの増加傾向を示している。予備指標では、違法取引の数値は、2013年にさらに高い値に達することを示す。不完全なデータではあるが、2013年の大規模な象牙の押収(1件につき500kg以上の押収)の生データが、少なくとも過去25年間の象牙の押収において、最大の値を示している。

 大規模な象牙の押収は、典型的な組織犯罪の介入を示しており、2013年のデータは、合計41.6t以上の18件の押収を含む。ETISの分析は、アジアにおける象牙の主要な消費地が中国であることを明らかにした。

 「中国の行動は、他のどの国がおこなう行為より、ゾウの密猟と違法な象牙取引の増加傾向を覆す可能性を持っている」と、ミリケンは言う。

 象牙処分の式典は、国家林業局(State Forestry Administration)主催の、違法な野生生物取引に関する会合の中で、違法な野生生物取引との闘いに関与している北京市森林警察局(Beijing Forestry Police Department)、 広東省税関(Guangzhou Customs)などがおこなった極めて重要な行動に対し、敬意が表されたあとに続きおこなわれた。

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