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野生の植物の持続可能な採取を推進する新たな基盤

2008年11月17日
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左から右:ジュリア・マートン-ルフェーブル ( IUCN事務局長)、BfNの長官ビート・ジェッセル教授、WWFの Executive Director of Conservationであるギレルモ・カスティリヤとトラフィック事務局長のスティーブン・ブロードが新たに ISSC-MAPに関する合意を交わした。©TRAFFIC
  左から右:ジュリア・マートン-ルフェーブル (IUCN事務局長)、BfNの長官ビート・ジェッセル教授、WWFの Executive Director of Conservationであるギレルモ・カスティリヤとトラフィック事務局長のスティーブン・ブロードが新たに ISSC-MAPに関する合意を交わした。©TRAFFIC
【スペイン、バルセロナ発 2008年10月9日】

2008年10月9日に、薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採取に関する国際基準(International Standard for Sustainable Wild Collection of Medicinal and Aromatic Plants (ISSC-MAP))の4つの創設団体の間で、FairWild Foundationを通じた、基準の世界的な実施を承認するための重要な合意が交わされた。

 ISSC-MAPは、薬や化粧品に使われる植物の野生個体群が過剰に採取されないよう適切な管理を推進する基準である。新しい合意のもと、FairWild Foundationは、業界のラベリング・システムの開発を手助けすることになる。このシステムによって製品が持続可能なISSC-MAPの基準を使って収穫されたものであることが容易に認識でき、認証されることになる。

 ISSC-MAPは、ドイツ連邦自然保護庁 (BfN)とIUCNの種保存委員会の薬用植物専門家グループ (MPSG)、WWFドイツとトラフィック、そして企業団体や企業、認証者や地元に根ざしたNGOなどの連携によって開発された。これは、バルセロナで開催されたIUCNの世界自然保護会議(World Conservation Congress)において発表された。

 「この新しい合意は、人々の健康と快適な暮らしにとって重要な野生植物の持続可能な利用へ重要な一歩を踏み出したことになる。この基準を企業が採用することで、世界の野生植物資源を持続可能に利用し、公平に分配し、IUCNの世界自然保護会議を通してのテーマである健全な環境、健康的な人々、を強化することができるようになる」と、IUCNを代表してこの合意に署名したIUCN 事務局長のジュリア・マートン-ルフェーブルは言う。

 「成功する野生植物採取基準は、自然保護の目的だけでなく、社会的・経済的文脈からしても、薬用植物の持続可能な利用を確保するために欠くことのできないものである。世界の主要な薬用植物の輸入国のひとつとしてドイツは、そのような理念において行動をとる特別な責任がある」とBfNの長官であるビート・ジェッセル教授は言う。

  アルニカArnica montana は打撲やねんざの治療に使われる © G. Ammermann / WWF
 
アルニカArnica montana は打撲やねんざの治療に使われる
© G. Ammermann / WWF

 40,000 t 以上の薬用・アロマティック植物が毎年取引され、そのうちおよそ80%の種が野生から収穫されている。取引される3,000種近くの多くは過剰に利用され、過剰に採取されたり生育地を失うことで絶滅の危機に瀕している。この基準を実施することで、植物がこれ以上過剰利用されることに歯止めをかけ、IUCNのレッドリストの掲載基準による絶滅の危機に瀕する種とならないようにする。

 「野生植物の過剰採取は深刻であるが、しばしば無視される問題である。このタイミングのよい合意は、ハーブ製品業界を通じて、持続可能性が基準になるよう追求していく過程の道しるべである」とトラフィックの事務局長のスティーブン・ブロードは言う。

 「世界的に人々は薬用植物に頼り、自然療法からの薬の特異な治療的高価による恩恵を受けている」とWWFのExecutive Director of Conservationのギレルモ・カスティリヤは言う。「この新しい合意は長期に渡る持続可能性と、これらかけがえのない製品の供給を確保するための重要な一歩となる。」

注:

ISSC-MAPの協議に関わっている機関や専門家:ドイツ連邦自然保護庁 (BfN)とIUCNの種保存委員会の薬用植物専門家グループ (MPSG)、WWFドイツ、とトラフィック、そして企業団体や企業、認証者や地元に根ざしたNGO。


FairWild Foundationは、Swiss Import Promotion Organisation (SIPPO)とthe Institute for Marketecology (IMO)とForum Essenziaの共同イニシアティブとして2005年に設立。自然製品の社会的、環境的な持続可能な利用を推進している。


ISSC-MAPは6つの原則に基づいている:●野生の薬用・アロマティック植物資源を維持する●環境への悪影響を防ぐ●合法性●慣習上の権利●責任ある管理運営の適用●責任あるビジネス運営の適用である。基準や実施に関してさらに詳しくはこちらまで。(ISSC-MAPのウエブサイトへ)btn_migi.gif


この件に関するドイツのBfNの発表はこちらから(BfNのウエブサイトへ)btn_migi.gif

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■詳細に関するお問い合わせ

Richard Thomas, TRAFFIC International, Email: richard.thomas@traffic.org mobile: +44 752 6646 216.


2008年11月17日
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