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薬用植物への癒し ―薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採取に関する国際基準(ISSC-MAP)

2008年05月23日
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 トラフィックは、第9回生物多様性条約(CBD)締約国会議において、共同プロジェクト「生命と生活を支える植物を守る(Saving Plants that Save Lives and Livelihoods)」を推進している。

【ドイツ、ボン発 2008年5月19日】

 「生命と生活を支える植物を守る」イニシアティブでは、国際的な基準を施行することでどのように薬用植物の供給の持続性を確保できるかを実証している。


▲自然のヒーリングパワー(Healing Power from Nature): ISSC-MAPイニシアティブとは(日本語吹替版:上映時間約6分)

 毎年、50万tの乾燥した薬用・アロマティック植物( medicinal and aromatic plants = MAP )が国際的に取引されている。さらによくわかってはいないがかなりの量が国内や現地の市場で取引されている。その植物の50%以上が野生から採取され、薬用・アロマティック植物に対する需要は世界的にも増加している。多くの場所で土地利用の変化や生育地の劣化と相まって、そのような植物種の4分の1ほどが危機に瀕していることになる。

 「推定5万から7万種の植物のうち、薬や化粧品や栄養補助食品に使われている約1万5,000種は脅かされていることになる」とトラフィックの薬用植物プログラムの代表であるスザンヌ・ホンネフは言う。

 「多くの途上国においては、野生から採取された植物が地方の大部分の人々にとって唯一の効果的な薬物療法である。なぜなら他の医療形態を利用することはできず、費用的にも負担しきれない。より豊かな国々においては、多くの人々が自然薬の利点を再発見している。

 「2004年に私たちは、薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採集に関する国際基準(International Standard for Sustanable Wild Collection of Medicinal and Aromatic Plants (ISSC-MAP))を共同で立ち上げた」と、ドイツ連邦自然保護庁(BfN)の植物保全セクションの代表であるウウェ・シップマンは言う。

 「2007年のはじめに発表されたこの基準は、現在MAP分野の企業や政府、資源管理者やその他関係者に対して、野生から採取された薬用・芳香植物の管理システムの持続可能な利用を構築するための具体的な指導ツールを提供している。」

  ISSC-MAPは、野生からの持続可能な採取を可能とする適切な割当システムを構築することで、野生の植物の過剰利用、違法採取や違法取引を止めさせることを目指している。ISSC-MAPの中核となるのは、地域共同体や先住の住民たちの慣習的な権利と、事前情報に基づく同意(PIC)や相互に合意する条件(MAT)のような、遺伝的資源や管理責任に関する利益共有の合意形成である。

 現在、トラフィック、WWF、IUCNなどは、ドイツ経済協力・開発省(BMZ)の財政的支援を受けて、「生命と生活を支える植物を守る」共同イニシアティブを通じて世界規模のプロジェクトでISSC-MAPの施行を開始した。現在プロジェクトは、様々な条件や組織構造下で実行されており、ブラジル、カンボジア、インド、レソト、ネパール、ボスワナ・ヘルツェゴビナ、そして他の代替的な資金で、中国、ウクライナにおいて進行中である。

 「ISSC-MAPがその地域的な背景に適応し、現地で使われているのは私たちにとっても喜ばしいことだ。政府、共同体、森林局、企業によっては、ISSC-MAPを支援し、それぞれの国においてその理解を推し進めていくことに強い関心を示している」とBMZの環境および自然資源の持続可能な利用部門の代表、フランク・ファス・メッツは言う。

 「このことが、途上国の生物多様性条約施行にあたって、支援をおこなうための能力強化、技術移転、資金援助プログラムの開発を助けることになるだろう。」

 IUCNの種保全プログラムの代表であるジェーン・スマートによれば、「世界中、特に途上国において人々は基礎的な医療としてしばしば薬用植物に頼っている。私たちが、持続的かつ長期的にこれらの資源を採取していく方法を作り出すことはとても重要なことだ。」

 現在のCBD会議では、2007年にパリでおこなわれた条約の科学技術上および技術上の助言に関する機関の会議での提言を受け、植物保全に関する世界的戦略について再検討される見通しである。

 「私たちはみな、自然の薬局から得られる薬が持つ独自の治療効果の恩恵を受けている」とWWFインターナショナルの種保全プログラムのディレクターのスー・リーバーマンは言う。「しかし、いままさに、圧力を受けている自然の植物個体群へ効果的な治療をほどこす時である。」

 イニシアティブへ参加し、採取される野生の植物からの製品がISSC-MAPの遵守を確保するべく活動することを表明した政府および企業やNGOを歓迎する」とトラフィックのスザンヌ・ホンネフは言う。

 生物多様性条約は世界的でも保護に関するもっとも包括的な条約である。その条約の第9回締約国会議が、2008年5月19日から30日までドイツのボンで開催されている。会議は政府やビジネス界、NGO、政策決定者がISSC-MAPイニシアティブについて理解を深め、支援していく理想的な場である。

 


■詳細に関するお問い合わせ
Richard Thomas, Communications Co-ordinator, TRAFFIC, tel: + 44 1223 279068, email: richard.thomas@traffic.org
Susanne Honnef, Head of TRAFFIC's Medicinal Plant Programme, mobile: + 49 162 29144 92

2008年05月23日
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