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野生の植物、持続可能な利用と人々の暮らし:世界植物保全戦略の進展状況

2012年05月23日
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120504GSPC-side-event-May-2012.jpg カナダで開催された生物多様性条約のSBSTTA-16での世界植物保全戦略施行のための能力強化に関するサイドイベントにおいて、Missouri Botanical Gardenの園長であり、GPPCの議長であるピーター・ワイス・ジャクソン博士が参加者に話をしている。© A Timoshyna / TRAFFIC

【カナダ、モントリオール 2012年5月4日】
 カナダでおこなわれた生物多様性条約の準備会合である科学技術助言補助機関(SBSTTA)の第16回会合(SBSTTA-16)で植物保全が注目された。

 特に、世界植物保全戦略(GSPC)の進展状況が重点的に議論された。世界植物保全戦略の包括的な目的は、植物多様性の損失をくい止めることである。世界植物保全戦略のウエブサイトではこのようにある「Without plants, there is no life(植物なしには、生命は存在しない)」

 SBSTTA-16には、条約締約国やその他多くの政府代表者やNGOが参加している。代表者らは、世界植物保全戦略の展開の進捗状況、とりわけ戦略実施のためのオンラインのツールキットの開発を喜んでいた。

 フェアワイルド基準の原則がいかにして、生物多様性国家戦略のような関連する計画やプログラム、政策などを通じて締約国政府や民間部門が世界植物保全戦略の特定の目標を実施する際の支援ツールとなりえるか、トラフィックの薬用植物プログラムのリーダー、アナスタシア・ティモシャイナは強調した。

 ティモシャイナによれば、「野生植物の保全に関して、今ほど急を要する時はない。この戦略はこのかけがえのない資源の未来を守る手助けをすることができる。そしてフェアワイルド基準は戦略実施を手助けするのにぴったりのツールである」という。

 またトラフィックとWWFが会合に対して共同で提出した文書では、フェアワイルド基準は持続可能で倫理的な方法で野生から植物を調達するのを証明できると提言している。

 世界植物保全戦略をとりまく議論は5月3日に終わったが、多くの提言が、今年10月にインドで開催される締約国会議での採択の可能性に向けて動いている。

 提言の中には、世界植物保全戦略のツールキットを国連の公式言語に翻訳する要請が盛り込まれ、植物保全戦略の各国のフォーカルポイントを特定する要求も改めて述べられている。植物保全戦略の発展や実施を支援するため、植物保全に向けたグローバル・パートナーシップ(Global Partnership for Plant Conservation: GPPC)のメンバーを含め、パートナー機関の関与を推奨している。さらに、歓迎すべきこととしてワシントン条約と世界植物戦略との協力に関連し、ワシントン条約植物委員会によって起案された決議草案が言及されている。この決議草案はワシントン条約の次回締約国会議で検討されるべく提出されるものである。

 提言ではまた、地球規模生物多様性概況第4版(Global Biodiversity Outlook-4)の準備にあたっては、各所にちりばめられた植物保全に関連した情報の重要性についても強調している。地球規模生物多様性概況第4版は、生物多様性条約にとって重要な出版物の次回版である。

 5月1日の火曜日には、トラフィックは植物園自然保護国際機構(Botanic Gardens Conservation International: BGCI)や GPPCが主催したサイドイベントで、フェアワイルド基準の原則を活用した野生植物の持続可能な利用にあたっての能力開発について話をした。トラフィックはGPPCのメンバーであり、植物保全戦略の中の、「目的III(Objective III):植物多様性は持続可能で公正な方法で利用される(Plant diversity is used in a sustainable and equitable manner)」に関するワーキンググループの共同議長である。

 サイドイベントでは他に、IUCN、エジンバラ王立植物園(Royal Botanic Garden Edinburgh)、UNEP世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)、フランス国立自然史博物館(French National Museum of Natural History)、BGCIからの発表がおこなわれた。

 次の日のサイドイベントでは、野生植物の持続可能な利用と人々の暮らしに関する問題について話し合われた。イベントの中で、トラフィックは再度、野生から採集される原料や製品の生態学的、社会的、経済的な持続可能性を保証する世界的な枠組みを提供するためのベストプラクティスとしてフェアワイルド基準を提案した。

 BGCIの事務局長(Secretary General of BGCI)であるサラ・オ-ルドフィールドは言う。「植物資源の持続可能な利用の問題に対応するため、GSPCのツールキットとしても主要なツールであるフェアワイルド基準の実施拡大のために共に取り組んでいくことは極めて重要である。」

 この会議に先立ち、3月にトラフィックは、ドイツのフィルム島で、ドイツ連邦自然保護庁(BfN)が開催した欧州専門家会合(European Experts consultation)の一部として開かれたGSPCの開発に関するセッションをコーディネートした。フィルム島での会議の結果、提言されたものの多くは、WWFとTRAFFICの共同ポジションペーパーの提言と同様に、インドで開催される次回の生物多様性条約会議に提出するための修正提言に反映されている。

 


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