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「2012年の薬用植物」に甘草が選ばれる

2012年04月16日
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111230Glycyrrhiza_glabra-square.jpg 甘草を描いた図版:1885年に出版された 『Flora von Deutschland, Österreich und der Schweiz (ドイツ、オーストリア、スイスの植物)』から。甘草は何世紀にもわたって治療に使われてきた。

【2011年11月21日、ドイツ、フランクフルト発】
 甘草(リコリス)Glycyrrhiza glabra が世界的にみても人々の幸福にとってもっとも重要な植物として、「2012年の薬用植物」に選ばれた。

 審査はドイツのヴュルツブルク大学、WWF 、トラフィックによっておこなわれ、WWFドイツが開催したイベントで発表された。

 「甘草は咳やのどの痛みを瞬時に和らげることができる特別な植物である。何世紀も前から古代のギリシャやエジプトの医者が、咳や嗄声(させい)(※声がかれること)やぜんそくの治療に利用してきた」とヴュルツブルク大学の薬用植物学の歴史の専門家Johannes Mayer教授は言う。

 中世ドイツの修道女ヒルドガルド・フォン・ビンゲン(または聖ヒルドガルド)によれば、甘草は人々の気分を高めるのを助け、抗炎症、抗ウイルス、抗けいれんや粘膜保護の作用を持つという。

 甘草は、地中海から東アジア、アメリカ大陸、オーストラリアを原産とする低木で、高さ1m ほどになるマメ科Fabaceaeの一種である。薬効を持つために広く栽培され、また飲料用にも利用されている。

 利用されるのは根だけである。これまで根から400種類もの多種多様な化合物が分離されている。なかでももっとも重要なのはグリシルリチンである。グリシルリチンは、さとうきび糖のおよそ50倍の甘さを持つ化学物質である。

 今日甘草は、中国の伝統的な中医薬の中で重要な成分「甘草(カンゾウ)」として利用される。一方、ヨーロッパの主要な消費・取引国であるドイツでは毎年約500tの甘草が輸入され、そのうち100 t は薬効性のあるお茶として国内で消費されている。

 甘草の根はまた、製菓や多くのハーブリキュールに利用されている。日本では、甘草は薬として使われているが、化粧品の成分としても使われている。

 「甘草の薬効は、あらゆる自然薬の主要な構成要素となっている」とWWFドイツの保全の専門家スザンヌ・ホンネフは言う。

 「近年、ドイツの人々は自然薬の本質的な価値について意識するようになってきている。結果的に薬用植物の取引がまさしく再興を迎えている。」

 「しかし、このことが野生植物の個体群に圧力をかけ、そうした植物を危機的な状況に追い込むかもしれない。」

 WWFおよびトラフィックは現在こうした圧力を抑えようとしており、2010年には薬や他の用途に使われる植物の、野生からの採取を持続可能な形で実施できるようにするためのフェアワイルド基準の導入への支援をおこなっている。

 フェアワイルド基準は、環境に対して健全で社会的に公正、そして経済的に持続可能な形で野生の植物資源を採取できるようにするための厳格なルールを兼ね備え、植物製品の認証のための基盤として、またそうした植物資源の取引を管理する法律や規則の策定のための基盤としての役割も果たしている。

 「フェアワイルド基準は、野生の植物製品の持続可能性を確保し、消費者が自信をもって認証を受けた製品を購入することができるようになるための大きな一歩だ」とトラフィックのプログラム・ディレクター、ローランド・メリシュは言う。

 生産者を支援し、資源の持続可能な利用を確保するための戦略を立てると同時に、フェアワイルド基準の実施支援者達は、生計への依存度がもっとも高い低所得の採集者たちに対し、取引から生じる利益の公平な分配を確保することにも取り組んでいる。

2012年04月16日
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