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違法なメロがまだ食卓に

2008年11月17日
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メロ © Stuart Hanchet, NIWA, New Zealand
 
メロ ©Stuart Hanchet, NIWA, New Zealand

  【オーストラリア、ホバート 2008年11月5日】
WWFとトラフィックは、メロ(訳者注:マジェランアイナメやライギョダマシの流通名)のモニタリング対策の強化と保護対策が弱体化している国々に対する貿易制裁を求めている。

 マジェランアイナメとライギョダマシの将来や南極海に集中するそれらを基盤にした価値の高い漁業は、IUU(違法、無規制、無報告)漁業の大きな圧力を受けている。

 トラフィックによって11月5日に発表された調査結果によると、IUU漁業によって、「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会 (CCAMLR)」が監視しているこれらの価値の高い種の保護対策がひどく損なわれている。

 新しい報告書『Continuing CCAMLR's Fight Against IUU Fishing For Toothfish(メロのIUU漁業に対するCCAMLRの戦いは続く)』 は10月27日~11月7日にホバートでおこなわれていたCCAMLRの会議で提出された。調査によれば、2004年から2007年の間、IUU漁獲による取引の割合は、CCAMLRの平均推定値である総水揚げ量の10%に対し、平均して17%であった。

 近年のIUU漁業の推定値は、以前トラフィックが2001年に評価した時より低いが、深刻なIUU漁業が存在することを示している。この漁獲がメロの保護に対する深刻な脅威であり続けているのだから、この数値は説明される必要があり、さらなるCCAMLRの介入を通じて小さくしていく必要がある」とトラフィックのグローバル海洋プログラムのリーダーであるグレン・サントは言う。

 「所管の船舶を違法漁業に関与させることを許している国々に対して、より大きな圧力が必要なことは明らかであり、これらの国々に貿易制裁を課すことがCCAMLRが踏み出さなければならない次なるステップである」とサントは言う。

 キロあたり35米ドルにまでなるというメロは漁業者の間で「白い金(white gold)」という名を得ている。メロに対する世界的な闇市場はWWFによって年間2億米ドルに値すると推定されている。

 WWFオーストラリアの南極海イニシアティブのマネージャーのロブ・ニコルは、「保護しなければならないのは、海賊(不法漁業者pirates)ではなくメロなのです」と言う。

 「たとえ、領海のパトロールが有効な時でも、結果的には、それはただパトロールされていない公海へ不法漁業者(pirates)を移動させるだけである。より厳しい取引規制は法執行力を高める手助けとなり、不正な魚が売れなければ不法漁業者(pirates)はメロを追いまわさなくなるであろう。」

 ニコルはさらにこう言う。「世界の4分の3の魚資源は深刻な枯渇状態あるいは過剰漁獲に見舞われており、不法漁業(pirate fishing)はひどい状況をさらに悪化させている。もし、合法な漁業産業を続けていきたいのであれば、政府は協力してIUU漁業に対し断固たる措置をとらなくてはならない。パトロールは重要な部分であることには変わりないが、特に公海での漁業が懸念されているところでは、その補完的な措置として取引管理が必要である。
  この報告書の結果は、さまざまな補完的な対策の必要性を裏付けている。これが、自分たちの食卓にのぼる魚が、合法的に捕獲されたものであると消費者が知る唯一の方法である。」

 「WWFとトラフィックは、CCAMLR に出席している政府に対して、今週開催される会合において、違法漁業と、違法に漁獲された魚の取引を撲滅するための保護対策の導入または改正に向けた断固たる措置をとられることを希望する。」

 

*報告書はこちらでダウンロードできます。
Continuing CCAMLR's Fight Against IUU Fishing For Toothfish(メロのIUU漁業に対するCCAMLRの戦いは続く)』 (PDF, 1.4 MB)

***注釈***

マジェランアイナメは、Merluza negra (スペイン) Bacalao de profundidad (スペインとチリ) Chilean Sea Bass (アメリカとカナダ) Legine (フランス) メロ (日本) Patagonian toothfish (英国) Butterfish (モーリシャス) と通常、さまざまな呼び名で売られている。 日本ではかつて銀ムツともよばれている。

マジェランアイナメは南極海の島嶼域周辺や、チリやアルゼンチンのパタゴニア海域の陸棚から陸棚斜面に生息する大型魚類である。最大で2mになり、50年以上の寿命がある(Kock, 2000)。

CCAMLR (南極の海洋生物資源の保存に関する委員会)の加盟国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、チリ、欧州委員会(EC)、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、ナミビア、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国、ウクライナ、米国、ウルグアイである。委員会の加盟国ではないが条約加盟国は、ブルガリア、カナダ、フィンランド、ギリシャ、オランダ、ペルー、バヌアツ、モーリシャス、クック諸島である

**************************************************

■詳細に関するお問い合わせ

WWF-Australia: Jonathon Larkin, Communications Co-ordinator:
jlarkin@wwf.org.au
+61 (0)0410 221 410

TRAFFIC International: Dr Richard Thomas, Communications Co-ordinator: richard.thomas@traffic.org +44 1223 279068


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©TRAFFIC

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