
![]() | |
ダウリチョウザメ
©WWF-Russia |
―「試験的な漁獲」はチョウザメ資源量のモニタリングを目的としたシステムであるが、このシステムが1984年に課された商業的な漁獲の正式な禁止を巧みに逃れるために、禁止によって生じた不足分を補うことに利用されていることが、アムール川のチョウザメに関するレポートでわかった。
過剰漁獲や違法漁獲に対して深刻な懸念があるにもかかわらず、ワシントン条約事務局がアムール川のチョウザメに関する2008年の輸出割当を公表した。レポート『Siberia's black gold: Harvest and trade in Amur River sturgeons in the Russian Federation(ロシア連邦におけるアムール川のチョウザメの漁獲と取引)』はその公表直後に発表された。
「ロシア政府が「試験的な漁獲」を定義し、その限度を明確に設定することは重要な意味を持つ」とトラフィックヨーロッパのシニアプログラムオフィサーのアレクセイ・ワイズマンは強調する。アレクセイはモスクワを拠点としており、このレポートの主執筆者である。
例えば、2002年には、最高でおよそ800kgのアムール川のチョウザメのキャビアが、「試験的な漁獲」として認められた漁獲可能量にもとづいて合法的に採取された可能性がある。しかし、正式な獣医証明書(チョウザメ製品を取引するにあたって必要である)を受領している分の総量は2,173kgで、この合法的な数値の2.5倍以上になる。
トラフィックとWWFのアムール川のチョウザメのキャビア取引に対する調査は、汚職、違法漁獲と「試験的な漁獲」の抜け穴の悪用の証拠をみつけた。歴史的に見て、チョウザメはアムール地域において重要な経済資源である。ダウリチョウザメ(カルーガ)とアムールチョウザメの2種が、中国とロシアの国境の一部となっているアムール川に生息している。2000年から2004年におこなわれたロシア極東地域の地元住民への聞き取り調査や取材によって、漁獲されるチョウザメの数が著しく減少していて、個々の魚体の平均重量は減少していることがわかった。これは過剰漁獲の確たる徴候である。
また現行の法律の問題もある。国内市場において、チョウザメ製品は公衆衛生的な必要条件と品質基準への適合性を確かめる書類のみが必要である。チョウザメ製品が合法的に入手されたことを示す書類は必要ではない。
「チョウザメの漁獲やキャビアの利用を規制する現行の法制度は、不十分かつ複雑であり、違法取引がはびこる抜け穴を残している」とワイズマンは言う。
ロシアでの違法漁獲と同様、レポートではまた、ロシアから中国へのアムール川全域のアムール川産のチョウザメのキャビアの違法取引についても立証している。そしてこれらは中国から日本や米国へ輸出されていると考えられている。著者は、ロシアを原産とするキャビアの違法取引に対してこれらの国々が共に協力して取り組むべきだと呼びかけている。
![]() |
>> レポート(英文)のダウンロードはこ ちらから
『Siberia's
black gold: Harvest and trade in Amur River sturgeons in the Russian
Federation(ロシア連邦におけるアムール川のチョウザメの漁獲と取引)』
関連ニュース
大手輸送関連企業の代表たちが歴史的な宣言に調印、野生生物の違法取引ルート断絶に立ち上がる
2017年05月31日
2017年5月、海外で日本人が野生生物の密輸容疑で逮捕される事件が2件起こった。いずれも日本へ向けた飛行機に乗り込む前に空港で発覚し、スーツケースの詰め込まれた動物たちは救出された。密猟の現場から需要のある市場への輸送は、野生生物犯罪に不可欠なプロセスである。この違法取引ルートを絶つべく輸送セクターの企業が動きだした。
© Purple Lorikeet / Creative Commons Licence CC BY-SA 2.0
2017年02月02日
トラフィックは、2016年にユーロポール(欧州刑事警察機構)と覚書を結んだ。これは、環境犯罪、特に絶滅のおそれのある動植物の違法取引に対抗する両機関の連携を強化すると共に、情報交換や相互支援を円滑にしていくことを目標としている。2017年2月2日、さらなる協議を目的に、会談をおこなった。
ヒレはお金についていく:新たな調査結果、
サメ取引におけるより良いトレーサビリティと全体像把握の必要性
2016年11月18日
新たなトラフィックの報告書によって、東アジアにおけるフカヒレの取引は、どこでどのように利益が得られるかによって急速に変化しており、より良いトレーサビリティと市場の世界的な全体像の把握が必要であることが浮き彫りになった。
【CITES-CoP17】閉幕:野生の動植物保全における多くの進捗、懸念される違法取引の増大
-更なる取り組みの必要性
2016年10月05日
第17回ワシントン条約締約国会議が、10月4日に終了した。野生動植物の取引規制に関する各国間の2週間に亘る協議では、国際社会が協調して、違法取引の根絶と持続可能な利用を確かなものにするための大きな前進があった。多岐に亘る野生生物に関する課題に重要な前進が見られ、数々の新しい決議が採択された。
©TRAFFIC
関連出版物
The Southern Bluefin Tuna Market in China
発行:TRAFFIC Hong Kong【2017年6月】 著者:Joyce Wu【英語】50pp
The Shark and Ray Trade in Singapore
発行:TRAFFIC,Malaysia【2017年5月】 著者:Boon Pei Ya【英語】59pp