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遅れる漁業管理対策

2007年03月30日
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 世界的な漁業管理対策の強化が、かつてないほど緊急に必要とされている。世界の漁業を規制する地域漁業管理機関(RFMO)による取引関連措置について検討したトラフィックの最新レポートは、このように結論した。

 RFMOは世界の大洋にまたがりおこなわれる漁業を管理する政府間機関である。

 「世界の漁業をRFMOの管理下に置く必要がある。そうしないかぎり、過剰に漁獲され絶滅の危機に直面している種は増加の一途をたどる」とトラフィックのグレン・サントは言う。

 このレポート「Catching On? Trade-related measures as a fisheries management tool(Catching On?:漁業管理手段としての取引関連措置)」では、RFMOによる漁業の管理にあたって取引関連措置がどのように利用されているかを検討した。特に、漁獲物の合法性を認証する書類の使用、RFMO規制に準拠している船舶かどうかを特定するための「ホワイト」リストと「ブラック」リスト、さらに保護・管理措置の施行を怠っている国に対する取引禁止の適用について調べた。

 このレポートは、2007年3月5日~9日にローマで開かれた国連食糧農業機関(FAO)水産委員会(COFI)の重要な会議に先立ち発表された。

 「世界の漁業の今後が決まるときである」とサントは言う。「海の略奪行為に対して何らかの措置を講じるか、それとも種が絶滅して、水産業界が衰退するか、そのどちらかだ。」

 多くの漁業資源の急速な減少が続き、保護対策は違法、無報告、無規制(IUU)の、いわゆる「海賊」漁業により台無しにされている。

 「RFMOによる取引関連措置の実施は、IUU漁業を抑える重要な鍵である」とサントは言う。「それは、公海で、積み荷が陸揚げされる港湾で、それが販売される市場で、違法漁業活動と取り組むことを意味する」。

 現在、既存のRFMOの対策は、FAOが策定した「Model Scheme on Port State Measures to Combat IUU Fishing(仮訳: IUU漁業を阻止するための寄港国による措置に関するモデル制度)」により設定された基準に遠く及ばない。

 「RFMOはこれらの基準を反映させるために既存の計画を強化する必要があり、また、それらが確実に守られるよう、法的拘束力のある措置を講じるべきだ」。

 「この世界的問題と取り組むには、国際協力が不可欠だ。ひとつのRFMOがIUU船舶に対する厳しい対策を導入したとしても、問題がほかの場所に移るだけだ。」

 取引関連措置に関し、トラフィックはそれを補うシステムの導入を提案している。例えば、船舶の位置と漁業活動を常時監視できる衛星追跡システムなどである。漁獲証明制度(CDS)は、合法的な漁獲物陸揚げに関する信頼性の高いデータを提供し、持続可能な割当量の設定を可能にし、違法取引のレベルを知る手がかりになる可能性がある。しかし、これまでのところ、RFMOおよび関係諸国によるCDS制度の導入は遅れており、いまだに取引の監視のみ、それも多くの場合、取引の一部のみの監視という、低水準の措置に頼り続けている。

 今回のレポートではRFMOに対し、IUU漁業が合法的漁業に与える影響を最小限に抑えるための努力と、他の管理責任とのバランスを取れるようにしなければならないと、注意を促している。

 「取引関連措置を組織的に活用することが効果的だ」とサントは言う。「漁獲証明書、船舶の監視、監視員の乗船、漁獲物の積み替えと船舶が漁獲物を水揚げ・販売する場所の規制を総合しておこなうことで、効果が上がる。RFMOに必要なのは、これらの措置を確実に導入するための政治的意志と十分な資金だ。」

レポートのダウンロードはこちら
「Catching On? Trade-related measures as a fisheries management tool(Catching On?:漁業管理手段としての取引関連措置)」
2007年03月30日
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