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不充分な漁業管理がコーラルトライアングルのサメを危険にさらす

2012年09月11日
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120908SharkUtilization-re2-2.jpg 乾燥させるため通りに並べられたフカヒレ(香港)
© Jürgen Freund / WWF-Canon

 

【中国、香港発】

 WWFとトラフィックは、絶滅のおそれのある種の資源量を保全するため、コーラルトライアングルのサメ漁業を管理する、より協調した取り組みの必要性を示す新しい報告書を発表した。

 本報告書『An Overview of Shark Utilisation in the Coral Triangle Region(PDF, 600KB)』は、コーラルトライアングルの6カ国-インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモール-とその近隣国であるベトナムとフィジーの海域のサメ類の漁獲、取引、管理を分析している。

 インドネシアとマレーシアは、世界のサメ漁獲国上位20の中に入る。またインドネシアは、群を抜いて最大の漁獲国である。

 「この報告書は、関係諸国の管理対策の実施やデータの収集において、極めて致命的な欠陥を明らかにしている。いくつかのケースで、地域漁業組織の基本的な条件と、国際条約との間にある矛盾が示されている」と、トラフィックのグローバル海洋プログラムのリーダー、グレン・サントは言う。

 際立った主要な問題は、サメ類の明確な管理対策の全般的な欠如、漁獲と取引報告上の種の識別不足、地域全体の漁獲と取引において有効なデータの不足などである。

 サントはさらに、「データの不足は、地域のサメ類の持続可能な管理に弊害をもたらし、関係諸国のうち数カ国で重要な漁獲対象となっていることから、至急対処する必要がある」と言う。

 いくつかの漁は、肉目当てでサメ類を対象とするが、サメ類の持続可能ではない漁獲の主要な操業は、現在、フカヒレ・スープ用のヒレを利用するアジアでの需要のためである。

 「この地域での持続可能なサメ漁業の進展は、遠い道のりである。サメ資源を効果的かつ、責任を持って管理するための宣言を表明できる国は、今のところない」と、サントは言う。

 報告書は、責任あるサメ利用に必要とされる要因の分析をするために、地元と地域管理組織に働きかけている。

 さらに、「サメ資源の責任ある利用は、信頼のおける管理、取引、消費を必要とする。これらの各要素は、持続可能な資源からできた製品を取引しているという、信頼のおける管理とモニタリングを必要とする」と、サントは言う。

 「サメ管理対策の包括的な提案の導入は、各国で優先されなければならない。サメ海洋保護区は、緊急的かつ予防的に他の管理対策を補完するものとして、重要な要素である。特に、非常に重要である隠れ家と生育地域の保護を提供することができる」と、WWF香港の自然保護ディレクターであるアンディ・コールニシュは言う。

 多くの種が絶滅のおそれがあるという根拠が増えるに従って、サメの資源量の減少は長年の世界的な懸念になってきたが、基本的な管理でさえ全般的に不足しているせいで、資源量は減少を続け、その窮状はIUU(違法・無報告・無規制)漁業によってさらに悪化している。

 「この報告書は、サメ類が捕獲されている重要な漁場において、持続可能な漁業の進展が遅いことを示している。このことから、サメ製品が、MSC(海洋管理協議会)認証のような本当に持続可能な出所から来たものか、消費者が確認できない限り、フカヒレやその他の部分の消費を止めるべきだとWWFは主張する。MSCは、野生捕獲の漁業において、現在有効な、唯一信頼のおけるエコラベルである。現在までに取得しているサメ類の認証は、世界で2つだけである」と、コールニシュは言及する。

 さらにコールニシュは、「サメ製品の大部分は、持続可能ではない資源からできている。それはヒレ(フカヒレ)だけではない」と付け加え、「サメ類は、肉、皮、肝油も大量に取引される」と言う。

 サメ類は、サンゴ礁とその他の生息地でとても重要な役割を担っている。食物連鎖の頂点に立ち、海洋生態系の繊細なバランスを維持するのを助けている。

 サメ類の1,044の近縁種のうち、181は絶滅のおそれのある種としてIUCNのレッドリストに掲載されている。488は情報不足として分類されている。

  


 

120908coraltriangle.jpg

©トラフィック

 ●FAOの統計によるサメの漁獲国上位20(2000年~2010年の平均値、降順):

インドネシア、インド、スペイン、台湾、アルゼンチン、メキシコ、米国、パキスタン、マレーシア、日本、フランス、ブラジル、タイ、ニュージーランド、スリランカ、ポルトガル、ナイジェリア、イラン、韓国、英国

●世界的に報告されているサメの漁獲の80%近くを上位20のサメ漁獲国が占めている。

●コーラルトライアングル-海の苗床-は、世界の海洋社会の中心である。 アジア太平洋地域の6カ国-インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモール-をまたぐ周辺海域600㎢を包括している。

●世界で発見されているサンゴ類のうち76%、世界の岩礁域に生息する魚種のうち37%、マグロ類や、クジラ類、イルカ類、エイ類、サメ類、世界で発見されているウミガメ7種のうち6種を含む、一般によく知られている極めて重要な種の生息地である。

●コーラルトライアングルは、1億2千万人以上の人々の生活を支え、マグロ類の重要な産卵と生育場である。その岩礁域と沿岸域の構造は、成長する観光業をも支えている。

●コーラルトライアングルについて:http://www.panda.org/coraltriangle


注:この記事の中での地理的名称、および資料の表記は、いかなる国、領土、地域、当局の法律の現状、もしくは境界国境の設定に関するトラフィックまたは、その支援機関の意見を反映するものではない。

 レポートのダウンロードはこちらから
『An Overview of Shark Utilisation in the Coral Triangle Region(PDF, 600KB)』

 

 ■詳細に関するお問い合わせは:
Paolo Mangahas, Communications Manager, WWF Coral Triangle Programme, email:pmangahas@wwf.org.my

Andy Cornish, Conservation Director, WWF-Hong Kong, email:ACornish@wwf.org.hk

Glenn Sant, Global Marine Programme Leader, TRAFFIC, email:glenn.sant@traffic.org

  

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©TRAFFIC

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