ホーム野生生物ニュース水産物ニュース>サメの漁獲上位国/地域の保全策の遅れのため資源量落ち込むー10年経ってもサメを救う国際計画はいまだ実施されずー

野生生物ニュース

サメの漁獲上位国/地域の保全策の遅れのため資源量落ち込むー10年経ってもサメを救う国際計画はいまだ実施されずー

2011年01月27日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
110127Sshark(c)Shawn_Heinrichs.jpg 気仙沼のサメ加工工場。サメの漁獲上位20ヵ国のうち日本は唯一サメの保全策に関する国内行動計画を見直し、改定した。
©Shawn Heinrich

【2011年1月27日、米国、ワシントンD.C.発】
国際連合食糧農業機関(FAO)の加盟国がサメの保全のための国際計画を承認して10年、いまだ完全にその計画が実施されていないことが新しい分析によってわかった。

 サメ類全種の30%が絶滅危機種あるいは近危急種とされ、計画がこうしたサメ類の保全・管理の改善に大きく貢献しているという証拠はほとんどない。

 新しいレポート『The Future of Sharks: A Review of Action and Inaction』の分析では、上位20ヵ国/地域のサメ類漁獲国を特定するためにFAOによって提供された漁獲情報を使用した。そして、2001年に加盟国が合意した管理・保全策を、こうした国/地域がとっているかどうかを評価している。この評価によると、上位20のうち13ヵ国/地域のみが、2001年に第一に勧告されたことのひとつである、サメ類を保護するための国内行動計画を作成していた。こうした計画がどのように施行され、効果をもたらしているかはよくわからないままだ。

 上位20のサメ類漁獲国/地域の漁獲は年間64万t 以上になり、これは世界で報告されているサメ類の総漁獲量の80%近くになる。上位10ヵ国/地域を順に挙げると、インドネシア、インド、スペイン、台湾、アルゼンチン、メキシコ、パキスタン、米国、日本およびマレーシアである。インドネシア、インド、スペイン、台湾で、年間に獲られるサメの総漁獲量の35%以上になる。

 世界的にみても、無規制な漁獲や、ヒレ(フカヒレ)に対する高い需要に応えるため、サメ類の資源量は減少傾向にある。東アジア各国で人気のあるメニューであるフカヒレ・スープに使われるために、7,300万頭にも上るサメ類が獲られている。

 トラフィックとPEWがおこなった分析は、FAOの水産委員会(COFI)の重要な会議に先駆け発表された。この会議は1月31日から2月4日までイタリアのローマで開かれる。トラフィックとPEW(ピュー)はCOFIが「サメ類を獲る漁業を管理するために実施される活動について包括的なレビュー」をおこなうよう提言している。

 「世界のサメの運命は、上位20のサメ漁獲国/地域の手に委ねられている。こうした国や地域の多くが、こうした危機にさらされたサメ類を守るために何をしているかを示すことができなかった。こうした国々はサメの資源量減少を止めるための行動を起こさねばならないし、このまま過剰漁獲によって脅かされている種のリストが増え続けないようにしていかなければならない」とトラフィックのグローバル海洋プログラムのリーダー、グレン・サントは言う。

 「サメは海洋環境の中で重大な役割を果たしている。サメの資源が健全なところでは、海洋生物も繁栄する。しかしサメ類が過剰に漁獲されているところでは、生態系のバランスが不安定になる。サメの漁獲国/地域は、彼らの責任として立ち上がり、こうしたサメ類を保全し守るために今行動しなければならない」とピュー環境グループのグローバル・サメ保全マネージャーのジル・ヘップ氏は言う。

レポートはこちらからダウンロードできます。
『The Future of Sharks: A Review of Action and Inaction』

 注: ピュー環境グループ(The Pew Environment Group)は、Pew Charitable Trustsの保全部門である。Pew Charitable Trustは、社会政策を改善し、市民に広く知らせ、市民生活を活性化する、厳格で分析的なアプローチを用いるNGOである。www.PewEnvironment.org

その他関連レポートはこちら

2011年01月27日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
関連キーワード サメ レポート 漁業管理

関連ニュース

20160315Global transport leaders sign historic declaration.jpg

大手輸送関連企業の代表たちが歴史的な宣言に調印、野生生物の違法取引ルート断絶に立ち上がる

2017年05月31日

2017年5月、海外で日本人が野生生物の密輸容疑で逮捕される事件が2件起こった。いずれも日本へ向けた飛行機に乗り込む前に空港で発覚し、スーツケースの詰め込まれた動物たちは救出された。密猟の現場から需要のある市場への輸送は、野生生物犯罪に不可欠なプロセスである。この違法取引ルートを絶つべく輸送セクターの企業が動きだした。

© Purple Lorikeet / Creative Commons Licence CC BY-SA 2.0

170224.jpg

マダガスカルの木材伐採、制御不能 新たな調査で明らかに

2017年02月14日

トラフィックが新たに発表した報告書によって、マダガスカルの希少な木材資源が、近年実質的に管理不能な状態にあったことが示された。マダガスカルには、ローズウッドやエボニーといった木材種の固有種が多数生育し、その魅力的な色調と優れた耐久性を理由に、特にアジアで家具や調度品として大きな需要がある。

© Julien Noel Rakotoarisoa / MEEF

161108report.jpg

ヒレはお金についていく:新たな調査結果、
サメ取引におけるより良いトレーサビリティと全体像把握の必要性

2016年11月18日

新たなトラフィックの報告書によって、東アジアにおけるフカヒレの取引は、どこでどのように利益が得られるかによって急速に変化しており、より良いトレーサビリティと市場の世界的な全体像の把握が必要であることが浮き彫りになった。

161004CoP17.jpg

【CITES-CoP17】閉幕:野生の動植物保全における多くの進捗、懸念される違法取引の増大
-更なる取り組みの必要性

2016年10月05日

第17回ワシントン条約締約国会議が、10月4日に終了した。野生動植物の取引規制に関する各国間の2週間に亘る協議では、国際社会が協調して、違法取引の根絶と持続可能な利用を確かなものにするための大きな前進があった。多岐に亘る野生生物に関する課題に重要な前進が見られ、数々の新しい決議が採択された。

©TRAFFIC

関連出版物

17_SBT_Market_in_China.jpg

The Southern Bluefin Tuna Market in China

発行:TRAFFIC Hong Kong【2017年6月】 著者:Joyce Wu【英語】50pp

17_The_Shark_and_Ray_Trade_in_Singapore.jpg

The Shark and Ray Trade in Singapore

発行:TRAFFIC,Malaysia【2017年5月】 著者:Boon Pei Ya【英語】59pp