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【2005年12月15日 ベルギー、ブリュッセル発】
ヨーロッパのいたるところで盛んにおこなわれているキャビアの違法取引は、アジアとヨーロッパの多くのチョウザメ種を絶滅へと追い込んでいる、と野生動植物の取引監視ネットワークのトラフィックと世界的な自然保護団体のWWFはいう。
欧州連合加盟国とスイスが報告したデータによると、2000年から2005年の間に、およそ12,000kgの違法キャビアが、ヨーロッパ当局によって押収された。ドイツが2,224kgともっとも多く、次いでスイスが2067kg、オランダが1,920kg、ポーランドが1,841kg、そしてイギリスが1,587kgの順であった。
「私たちは、違法キャビアの量が、取引の隠された特性により、公式の統計をはるかに上回っていると危惧している」と、トラフィックヨーロッパのプログラムコーディネーターのStephanie Theileは言う。「ヨーロッパ諸国の政府は、いわゆる「黒い金」とよばれる伽キャビアの出所を特定し、かつ増加する違法取引に対抗する手助けとなるキャビアの国際統一ラベリング・システムの実行が遅れている。」
違法なキャビア取引は、青空市場の屋台でのキャビアの瓶詰を売る個人から、消費者に届けるために、闇取引きキャビア入りスーツケースを受け取る雇われ運び屋と一体となってうまく組織化された密輸運営まで幅広い。
WWFとトラフィックによると、トラックもしくはライトバンがたびたび西ヨーロッパへ積み荷を運ぶために用いられている。2005年3月のドイツ税関による捜査で、2人のビジネスマンがたった1年の間に1.4t以上のキャビアをEUの市場に密輸した事が明らかになった。
「世界各地でクリスマスと年末のお祝いが近づいてくると、私たちは消費者に対して、慎重に、かつしっかりした小売業のキャビアだけを買うようと強く訴えている」とWWFグローバルスピーシーズプログラムのGerald Dickは言う。「私たちは来年のこの時期までに、ヨーロッパすべての消費者が彼らが購入するキャビアが合法的に取引・取得され、チョウザメ種を絶滅に追 い立てる違法取引に手を貸していないということに確信がもてることを望む。」
キャビアの取引や識別のための、国際統一ラベリング・システムはワシントン条約の決議文付記のなかで取り入れられた。そして全締約国が2004年1月までにこれらの必要条件に従うことに同意した。
![]() ©TRAFFIC |
しかし、西ヨーロッパ諸国の政府はこれらの要求になかなか対応をしてこなかった。このことが、合法と違法のキャビアを識別することを困難にしてきた。キャビアのラベリング・システムを施行する新しいEU規則は2006年初めには効力を発する。キャビアの輸出入者から卸売業者や小売業者まで、ヨーロッパのすべての人々にラベルの義務化を取り入れなければならない、とWWFとトラフィックはいう。
多くのチョウザメの個体群が違法漁業や取引の結果、深刻に減っている。違法キャビアは国際取引に加え、かなりの量のキャビアが、原産国、例えばロシア連邦で国内消費されている。このキャビアの大半もまた違法な出所からのものである。
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©TRAFFIC
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