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トラフィック イーストアジア ジャパンより、2015年1月にリリースした報告書『日本におけるインターネットでの象牙取引:現状と対策』の英語版 Summary が完成し、この度発表した。
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『A Review of Online Ivory Trade in Japan』
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【東京発 2015年1月13日】
トラフィックは、日本におけるインターネットでの象牙取引の現状と課題を探るための調査を実施し、2015年1月に報告書を発表した。
本報告書の作成にあたってトラフィックは、2014年5月に対象ウェブサイトにおける象牙の取引状況を調査し、その結果を基に、対策の必要性や取り組みの検討・実施状況などについて関係省庁とeコマース(電子商取引)企業にヒアリングをおこなった。報告書では、これらの結果を総合的に解説し、インターネット取引における国内管理体制の強化と違法取引の排除に向けた課題を整理した。
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上から: © Martin Harvey / WWF-Canon ©Folke Wulf / WWF-Canon |
今回、日本最大のサイバーモール(電子商店街)である「楽天市場」、インターネットオークションサイトの「ヤフオク!」および「楽天オークション」、さらに、象牙の買い取りを宣伝する個別の事業者のウェブサイトを対象に販売・取引状況を調べた。結果、印鑑やアクセサリーなどの製品をはじめ、彫刻や置物、全形象牙のほか、カットピースや端材といった素材にわたるまで、多様な形でインターネットを介した象牙の売買が行われている様子が明らかになった。
象牙の国際取引はワシントン条約で原則禁止されており、日本は合法的な市場を持つ国として、国内における象牙の製造と流通を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」で管理している。
調査では、ウェブページの記載内容から営業や取引の合法性に関連する記述も分析した。この結果、象牙製品を取り扱うすべての事業者に義務付けられている届出をしていない事業者がサイバーモールで4割近く確認されたほか、全形象牙の取引に必要な登録票の情報の記載がない、もしくは、海外発送が可能との明記がある(※)など、関連規制に違反する取引行為を誘発しかねない広告が散見され、規制を十分に認識していないオンライン店舗や出品者の存在が示唆された。さらに、利用者の視点からは、取引が合法であるかどうかの判断が困難であるという課題も浮かび上がった。
※象牙や象牙加工品の輸出はワシントン条約にもとづき原則禁止されている(輸出には再輸出許可証が必要で、条約適用前に取得した証明が条件となる)。
こうした状況に対し、経済産業省と環境省は、主要eコマース企業と協議を実施しながら、企業側に対応を要請しているほか、一般に向けた規制の周知などの取り組みを検討している。同時に、調査対象としたウェブサイトを運営するeコマース企業(ヤフー株式会社、楽天株式会社)においても、一部で出店店舗や広告のモニタリングと指導などの対策が開始されていることが明らかになった。
トラフィックはこうした関係者の動向を歓迎するとともに、今後解決すべき課題を報告書で分析している。
象牙については、近年、中国での需要拡大などが引き金となり、アフリカゾウの密猟と違法取引が深刻化している。さらに、サイについても、ベトナムにおける需要拡大に伴い密猟と違法取引が激増したことなどを受け、野生生物の違法取引撲滅に向けた取り組みが国際レベルで急速に進んでいる。
インターネットを介した違法取引についても、象牙をはじめ取引対象となる様々な希少野生動植物にとって脅威となり得ることから有効な対策が求められている。巨大な需要を抱える中国では、近年、違法取引削減に向けたeコマース企業などによる積極的な取り組みが展開されており、トラフィックはこうした活動を支援している。
日本においても、インターネット上で希少な野生動植物の取引が行われており、一部では違法取引も発覚している。「今後、国内管理体制の強化に向けた政府の取り組みが期待されると同時に、民間の協力による効果的なモニタリングの仕組みや法執行当局との連携など、インターネットにおける違法取引の排除につながる体制の整備が望まれる」と、トラフィックのプログラムオフィサー松本智美は言う。
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©トラフィック
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©Martin Harvey / WWF
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©Martin Harvey / WWF
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