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数百万円のリクガメ取引でペットショップ経営者逮捕

2011年05月26日
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押収されたバタグールガメ(上)
©TRAFFIC East Asia-Japan(撮影協力:野毛山動物園)、
ヘサキリクガメ(中)、ホウシャガメ(下)
©野毛山動物園

続報:その後の6月14日、警視庁生活環境課は、マレーガビアル(ガビアルモドキ)Tomistoma schlegeliiを販売目的で引き取った種の保存法違反の疑いで、すでに逮捕されているペットショップ経営者を再逮捕した。この経営者は2011年2月18日頃にガビアルモドキの子ども3頭(全長約45cm)を、埼玉県戸田市のペットショップ店長から販売目的で引き取ったとされる。マレーガビアルはワニ目の一種で、ワシントン条約附属書 I に掲載されており、また種の保存法で国内取引が原則禁止されている。3頭は容疑者が入手後、自宅でペットショップを経営するこの店長に預けられていたが、買い手の目処がついたため容疑者が引き取ったという。3頭のうち1頭はすでに死んでいた。また、このペットショップの経営母体である法人も書類送検された。


 2011年5月22日に、警視庁生活環境課、立川署、石神井署は、取引が禁止されているカメ類を売買したとして「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」違反(譲渡し等の禁止)で、都内のペットショップ「DIZZY POINT東京店」の経営者、および購入者である埼玉県の会社役員の2人を逮捕した。

 この経営者は、会社役員に対し、2008年6月23日頃にヘサキリクガメAstrochelys yniphora (ワシントン条約附属書 I 掲載種)2頭を700万円で売り渡し、2008年7月中旬頃にも同会社役員にホウシャガメAstrochelys radiata (附属書 I 掲載種)1頭を100万円で譲り渡し、さらには2009年11月頃および2010年1月頃に他の人物にバタグールガメ(ヨツユビガメ)Batagur baska (附属書 I 掲載種)2頭を8万円でで譲り渡した疑いがもたれている。

 同課によると、この経営者は容疑の一部を否認しているという。同課は、この経営者が2003年ごろから密輸入にかかわったとみて調べを進めている。

 今回ターゲットとなったリクガメ・淡水ガメ3種は1975年よりワシントン条約の附属書Iに掲載され、条約の下、国際的な商業取引が禁止されている。さらに国内で「種の保存法」によって、原則的に譲り渡しや陳列が禁止されている。

 これら3種はまた、いずれもIUCNの絶滅のおそれのある種を掲載した2010年のレッドリストで近絶滅種(CR)に分類され、世界的にも絶滅が危惧されている。さらに、ヘサキリクガメとヨツユビガメは、カメの専門家が構成するカメ保全同盟(Turtle Conservation Coalition)がまとめた「Turtles in Trouble: The World's 25+ Most Endangered Tortoises and Freshwater Turtles - 2011」で、世界でもっとも絶滅のおそれが高い淡水ガメ・リクガメ25種のうちの2種として名が挙げられている。さらにホウシャガメも同レポートにおいてもっとも絶滅のおそれの高い40種のうちの1種とされている。

 ヨツユビガメは、東南アジアに生息する淡水ガメ。ヘサキリクガメとホウシャガメは、マダガスカル島に生息している。特にヘサキリクガメは推定生息数が数百程度とされていて、過剰な捕獲や人為的な火災によっておびやかされている。2種とも生息国であるマダガスカルで保護種となっている。

 ヘサキリクガメについては、日本では、2004年にタイから密輸・密売しようとして逮捕された事件や、2006年にインターネットを通じて販売しようとして逮捕された事件があった。また、1996年5月に74頭がマダガスカルの飼育繁殖場から盗まれるという事件があり、当時、世界的な注目を集めた。今回のように日本で発見される違法個体が、この時の盗難個体である可能性もあり、こうした取引ルートについても調べが進むことを期待する。

 ヘサキリクガメとヨツユビガメはワシントン条約に掲載された1975年以降、これまで日本に合法的な輸入された記録はない。

 外国産の野生生物の不正な利用は、他国の自然、生物多様性を損なうことにつながる。さらには、種の絶滅を加速させる要因となることで、生態系、そして将来の人間の生活にとって悪い影響を及ぼす可能性がある。にもかかわらず、「種の保存法」の違反については、最高でも懲役1年罰金100万円以下であり、現在の罰則はこの問題が社会的に重要視されていないことを示している。附属書 I 掲載種の爬虫類の取引は大きな利益を生む場合があり、この罰則では抑止力としての効果が期待できないとトラフィックは考えている。また、違法取引が繰り返しおこなわれることのないよう、野生生物を扱う事業の営業を適切に管理する法的仕組みをより整備することも必要である。罰則強化を含め、今後もトラフィックは「種の保存法」や関連する法律の改正を訴えていく。


 

関連情報:

『ルーツをたどれ!ワイルドライフ-世界の生物多様性と日本の法体制-』開催報告書

トラフィック イーストアジア ジャパンニュースレター Vol.22 No.1/2合併号(無料ダウンロード)の「ヘサキリクガメのネット販売で書類送検」

世界一珍しいカメ-ヘサキリクガメ 絶滅・盗難・密輸

希少動物の取扱いに、より厳重な登録制度を要望

「動物の愛護及び管理に関する法律」についての要望書

参考資料:
Asian Turtle Trade Working Group 2000. Batagur baska. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4.<www.iucnredlist.org>. Downloaded on 23 May 2011.

Leuteritz, T. & Pedrono, M. 2008. Astrochelys yniphora. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4.
<www.iucnredlist.org>. Downloded on 23 May 2011.

Leuteritz, T. & Pedrono, M. 2008. Astrochelys radiata. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4.
<www.iucnredlist.org>. Downloded on 23 May 2011.

 

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