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新たな調査 サメの取引規制を追究

2013年10月17日
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オニイトマキエイは主に鰓耙(さいは)のために取引される © Andrea Marshall

【ベルギー、ブリュッセル発 2013年7月30日】

 新たなトラフィックの調査は、サメ類とオニイトマキエイ類7種について、ワシントン条約の規制を通じた取引管理の実施により、持続可能に、かつ、合法的に漁獲されたもののみが国際取引で扱われることをどのように確かなものとすることができるのか、ということを調べるものである。

 調査の報告書 『Into the deep: Implementing CITES measures for commercially-valuable sharks and manta rays (深層へ:商業的価値の高いサメ類とオニイトマキエイ類に関するワシントン条約の施行措置)』は、今年3月にタイのバンコクで開催された締約国会議において、サメとオニイトマキエイの種がワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書に掲載されたことを受け、欧州委員会(European Commision)から依頼されて作成されたものである。

 今回附属書に掲載された種は、ヨゴレ Carcharhinus longimanus、ニシネズミザメ Lamna nasus、シュモクザメ属の3種(アカシュモクザメ Sphyyna lewini、ヒラシュモクザメ Sphyrna mokarran、シロシュモクザメ Sphyrna zygaena)とオニイトマキエイ属全種 Manta spp.を含み、これらすべてが引き続く過剰漁獲の対象となっている。これらの種はすべて成長に時間がかかり、性的成熟が遅く、産む個体の数が少ないため、過剰漁獲の影響を非常に受けやすい。

 「3月にこれらのサメ類とオニイトマキエイ類がワシントン条約に掲載された際は、大きな喜びがあった。これは保全の世界では重要な瞬間であったが、これらの種にとって残された時間は限られている。今の任務はこれらの掲載を実行に移すことだ」とトラフィックの海洋プログラムリーダー、グレン・サントは言う。

 「ワシントン条約への掲載により広範囲な漁業管理が不要になるということではない。持続可能ではない、あるいは違法な漁業により供給されたこれらの種の製品の国際取引を防ぎ、取引を管理することを目的とすることにより、掲載は漁業管理の重要な一部分となる」

 欧州委員会環境総局のヒューゴ・シャリー(Hugo Schally)氏は、「この報告書は、第16回のワシントン条約締約国会議で掲載されたサメ類とエイ類の状況の包括的な全体像を示し、また、これらの種の国際取引が持続可能なものとなることを確実にするためにクリアしなければならない課題を教えてくれるものである」と言う。

 「また、ワシントン条約のサメとエイの掲載を適切に実施するため、多くの国々やステークホルダーがともに取り組み、共同での活動を計画しているということも示されている」

 「この情報は、ワシントン条約に掲載されたサメ類とエイ類の漁獲があり、取引をおこなっている国々を特に対象とした能力構築のプログラムを実行するため、ワシントン条約事務局に、120万ユーロ(およそ1億5千万円)を支援したEU(欧州連合)にとって、非常に有益であろう」

 新しい掲載は2014年9月14日まで発効が延期され、ワシントン条約締約国が実施の準備のための時間を十分に確保できるようにしている。これは、該当する種にとって、どの程度の取引が持続可能かどうかを生息地域の国々がどのように決定するか―これはワシントン条約の下で取引が許可されるための必要条件となっている―を指導することを含む。

 この新たな調査が明らかにしようとしたのは以下の点である。

●ワシントン条約の178の締約国のうち、掲載により主に影響を受ける国々

●関連する現存の国際、地域および国内の規制

●規制を実施する際に直面する主な課題

●許可を出す前に、これらの種の漁獲や製品の取引をおこなう締約国がその持続可能性および合法性を証明できることを確実にするために追加で必要となる能力の構築

 この調査では、新たに掲載された水産種の個体数や漁獲量などの基本的な情報が不足していることが明らかになった。取引における種の識別、取引の報告、また、さらなる研究のため、取引が個体数に与える影響を見極めるための評価と監視が緊急的に必要である。また、この調査では、ワシントン条約の取引規制の実施を支援するために、国内規制の枠組みと管理体制が十分であることを確実にする必要性も強調されている。

 この調査ではさらに、対象となる種の取引に影響する非常に異なった力関係を分析した。オニイトマキエイ類は特に鰓耙(さいは)のために取引され、アジアの伝統的な薬として利用されるのに対し、ニシネズミザメは主に肉のために漁獲され、シュモクザメ属は肉が地元での消費のために、ヒレは国際取引のために漁獲される。より大きなヨゴレは、非常に高価なヒレのために漁獲され、東アジア、特に香港の市場に行きつく。

 調査の対象となった種の中には漁業操業で特に標的となっているものもあるが、その他は、マグロなどのほかの種を標的にする際に、副次的に、しかし価値のあるものとして、漁獲される。取引に関わる市場や利用が異なることを考えると、高度に複雑な一連の取引が生み出されており、それをこの新しい調査により解明を試みている。

 「ワシントン条約の規制を実行するために重要となるのは、漁獲が合法であることの立証と施行を促進させるための管理認証手段の構築である」とトラフィックのリサーチオフィサーであり、この新たな報告書の共著者であるビクトリア・マンディ・テイラーは言う。

 「取引規制は、海でのサメとオニイトマキエイ種の管理の基礎となるものである。規制なしには、これらの数は危険な水準まで減少し続けるだろう」

 いくつかのサメの種に対し、過剰漁獲が壊滅的な影響を与えていることを受け、先月、EUは、EUの船舶によるサメのヒレ切り(フィンニング:ヒレのみを切り取ること)を完全に禁止した。また、最近、ブルネイはサメのすべての種の漁獲および水揚げの禁止を発表した。さらに、ニュージーランド航空、キャセイパシフィック航空、大韓航空、カンタス航空、ソウルを拠点とするアシアナ航空を含む航空会社数社が最近、サメのヒレの輸送禁止を発表した。

付記:

サメの漁獲国上位20カ国は、降順で、インドネシア、インド、スペイン、台湾、アルゼンチン、メキシコ、米国、マレーシア、パキスタン、ブラジル、日本、フランス、ニュージーランド、タイ、ポルトガル、ナイジェリア、イラン、スリランカ、韓国、イエメンであり、これらの国々で、世界で報告されているサメの全漁獲量のほぼ80%を占める。また、2002年から2011年までの間、インドネシアとインドのみで世界の漁獲量の20%以上を占めた。EU加盟国の3カ国―スペイン、フランス、ポルトガル―は上位20カ国のサメ漁獲国の中にあり、世界の漁獲量の12%を占め、合計すると、28のEU加盟国は全体として、世界で最大のサメの漁獲量を占めている。

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