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サメとオニイトマキエイが国連の保護を受ける歴史的な日

2014年09月14日
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スリランカの市場で競りにかけられるヨゴレ © Andy Cornish / WWF-Canon

【2014年9月14日】

 9月14日、国際取引の規制措置の効力が発生するにあたり、5種のサメ類と2種のオニイトマキエイ類が、国連のワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)による保護を受けることとなった。

 5種のサメ類と2種のオニイトマキエイ類とは、アカシュモクザメSphyrna lewini、ヒラシュモクザメSphyrna mokarran、シロシュモクザメSphyrna zygaena、ヨゴレCarcharinus longimanus、ニシネズミザメLamna nasus、オニイトマキエイ属全種Manta spp.である。

 これらのサメ類のうち、ニシネズミザメを除くすべての種は、ヒレのために漁獲される。ヒレは東アジア、特に香港に輸出され、高額だが人気のある料理であるフカヒレスープの重要な材料となる。

 一方、ニシネズミザメは主にEU内での肉の消費のために漁獲され、オニイトマキエイ類の鰓耙(さいは)は中国南部で健康強壮剤として高い値段が付けられている。

 これらすべての種は商業的に価値のあるものであり、過剰漁獲のために絶滅の危機に瀕している。

 ワシントン条約の措置が新たに導入されることにより、これらの種の商業取引は厳格な規制を受けることとなる。すなわち、これらの種の輸出や公海からの持ち込みが可能となるのは、輸出国あるいは漁業国が、それらが合法的に調達され、全体の輸出量がその種の存続を脅かすこととならないと認めたときのみとなる。

 2013年3月、ワシントン条約に加盟する180の締約国の代表が投票をおこない、これらのサメおよびオニイトマキエイの種を附属書Ⅱに掲載することを決めた。

 この掲載にあたっては、取引される製品(ヒレは通常、乾燥させた形で取引される)を、法執行を担う当局がどのように識別するのかを学ぶ必要があるなど、数々の技術的な問題が存在した。そこで、ワシントン条約の必要条件を導入するにあたっての準備のため、加盟国には18カ月間の猶予が与えられた。

 そこで、ワシントン条約事務局、FAO(国際連合食糧農業機関)、そしてトラフィックやWWFを含む非政府組織などの多くの機関は、施行開始の期限まで、ワシントン条約の規定に沿った形で、サメ漁業を管理する能力を向上させるために尽力した。

 ドイツ政府の支援を受け、トラフィックは、「有害でないという判定」またはNDFと呼ばれる決定をおこなう必要のある国々のためのガイドラインを作成した。NDFとは、各国がワシントン条約の輸出許可書の発行を検討するにあたり、個体数が維持されうる取引量について、十分な情報を得たうえでおこなう判定のことである。このNDFガイドラインは、各国の漁業管理当局に広く配布されている。

 また、これと並行して、トラフィックは、イギリス政府から支援を受けたプロジェクトの一部として、不十分/不適切な漁業管理の結果としてサメ資源が過剰漁獲に陥るリスクを定量化する「漁業管理リスク(Mリスク)」を作成した。

 「トラフィックは、これらのサメとオニイトマキエイの種に係るワシントン条約の措置の施行が、商業的に重要な水産種の取引を規制するというワシントン条約の価値を示すという点においても、ワシントン条約掲載に究極的な保全利益があるという点においても、成功するように最大限尽力している」とトラフィックの漁業取引プログラムリーダーのグレン・サントは言う。

 サメ類の多くは、マグロを標的とする船舶によって、副次的な漁獲として捕獲される。

「この新たなワシントン条約の措置を実行するためには、国際的な協力が不可欠である。そして、世界の海域においてマグロ漁業を管理する機関の加盟国は、施行を成功させるために、重要な役割を担うこととなる」とサントは言う。

 「ワシントン条約の必要条件を実施するにあたり、克服できないような技術的な障害というのは存在しない。そして、トラフィックを含むNGOは、求められれば支援する準備ができている」

 「とても重要な局面である。我々の海の健全性を維持するためには、世界のサメ資源の回復は極めて重要である」

 トラフィックとWWFは、共同で、世界規模の取り組みとして「サメ:バランスを取り戻す(Sharks: Restoring the Balance)」を策定し、責任あるサメ漁業の促進、サメ加工品の国際的な取引規制の改善、非持続的に調達されたサメおよびオニイトマキエイ加工品の消費者需要の減少を目指している。

 なお、日本はサメ5種について留保を付しているが、ワシントン条約で求められている輸出許可に関連する手続きを自主的に行う旨を表明している。

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