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【タイ、バンコク発 3月11日】
野生生物の取引に関する国連の会議(ワシントン条約締約国会議)で、高価なヒレと肉のための過剰な漁獲が原因で、深刻な減少を見せるサメ類の数種に対して、国際的な取引管理を改善するために、締約国政府が投票をおこなった。
3つの提案が、5種のサメ類をワシントン条約の附属書 Ⅱ へ掲載することに成功した。
附属書 Ⅱ の下、厳しい対策が、種の懸念事項であるヒレと肉の国際取引を規制するために整備されるだろう。各国政府は、新しい対策の実施準備のために最大18ヵ月与えられる。
ヨゴレ Carcharhinus longimanus 、アカシュモクザメ Sphyrna lewini 、ヒラシュモクザメ S. mokarran、シロシュモクザメ S. zygaena 、ニシネズミザメ Lamna nasus の5種は、附属書 Ⅱ へ掲載するための締約国政府の投票において、すべて3分の2の賛成を得た。
これらの5種は、ヒレの過剰な取引による懸念から、ワシントン条約の規制の対象となるはじめてのサメ類である。ニシネズミザメは、主に肉のために取引されている。フカヒレの商業取引における世界的価値は、FAO(食糧農業機関)によると、1年間におよそ4億7千8百万ドル(およそ450億円)だと見積もられている。
今回の会議で議論されたサメ類は、成長が遅く、性的成熟が遅く、長生きで若い個体が少ないため、過剰な漁獲に脆弱である。つまり、過剰な漁獲から個体数を回復させるのが難しい。
ヨゴレを含む、掲載されたサメ類のいくつかの種の個体数は、90%以上も減少している。
ヒレと肉の国際取引によって打撃を受けているサメ類の、ワシントン条約附属書掲載のための前回までの試みは失敗している。その理由のひとつは、どの機関が水産種を適切に管理するのにもっとも適しているか、という点で意見の相違があったためだった。最初、投票によってニシネズミザメが附属書 Ⅱ へ含まれたが、その後の最終的な全体会議の中で、決定が覆った。
保全活動家たちは、前回激しく失望させられた。今回の決定は温かく迎えられたが、残りの会議中において覆る可能性もある。
「今日の結果は、ワシントン条約が、どのように水産種の取引規制を支援することができるかどうかにおいて、転機となるかもしれない」と、トラフィックの海洋プログラムのリーダー、グレン・サントは言う。
「全体会議で可決されれば、今回の会議は、ワシントン条約が最終的に海の保全を実現するツールのひとつとなったことで、歴史に残るだろう」。
「サメにとっては、ほろ苦い思い出となる」とサントは語る。「ワシントン条約において、これらの採択は温かく迎えられるが、それは、サメ類の個体数が、対策が必要になる程低いレベルに落ちてしまったことを示す悲しい告発だ」。
また、オニイトマキエイ属 Manta spp. の掲載に関する提案も議論された。この種は、サメと同じような理由から、過剰な漁獲の危険にさらされている。
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