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国連、野生生物の違法取引対策決議を採択

2015年08月06日
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© United Nations Photo / Creative Commons 2.0

【米国、ニューヨーク発 2015年7月30日】

 第69回国連(国際連合)総会は、7月30日、野生生物犯罪に対処し、世界的な密猟の危機に終止符を打つために集団的努力を向上させることを各国が誓約する決議を採択した。

 「Tackling illicit trafficking in wildlife(野生生物の違法取引への取り組み)」に関する決議A/RES/69/314は、ガボン、ドイツとその他80以上の国々が協調した、3年間の外交努力の集大成である。

 「今日(7/30)は歴史的な日である-世界は、野生生物犯罪の終焉が最優先事項であるという明確かつ共有されたメッセージをもっとも高いレベルで発信した」と、トラフィックの代表Steven Broad(スティーブン・ブロード)は述べた。

 国連決議は、"野生生物の違法取引、野生生物製品、さらに密猟のような環境に影響を与える犯罪の深刻な問題を、防ぎ、手を打つための効果的な措置を採択すること"を各国に促す。

この決議は、良いガバナンス、法規範と地域社会の幸福などを蝕む野生生物犯罪のより広範な影響も認識している。

 加盟国には、取引網(チェーン)全体に対する以下の活動が強く求められた。
・(重大な犯罪として)組織的犯罪グループが関与する野生生物の違法取引への対処
・マネーロンダリング防止対策の実施
・国家レベルの政府機関内野生生物犯罪対策部門の設置
・司法と法執行努力の強化
・汚職の防止と打倒
・危機にある野生生物の製品の需要削減-消費者行動に影響を与えるための目標と戦略を使用して-

 アフリカでは、3万頭に上るゾウが象牙目的で毎年捕殺されている。南アフリカ共和国で角のために捕殺された昨年のサイの密猟数は、1,215という高い数値であった。アジアのトラ生息国では、2000年から2012年の間に、少なくとも1,425というトラの部位が押収された。ゾウ・サイ・トラや、その他の野生生物製品の違法取引の大半を指揮しているのは、高度に組織化された犯罪シンジケートである。

 「国家安全保障と持続可能な開発努力を弱体化させ、世界の象徴的な野生生物の種のいくつかをおびやかし、レンジャーの生命やその他の多くを危険にさらす組織的犯罪集団が優位にたつ形勢が逆転されるだろう」と、ブロードは語る。

 国連決議はさらに、"野生生物の違法取引によって影響を受ける地域社会のための、持続可能で代替となる生計手段の構築"を、各国に呼びかけ、"保全と持続可能な利用におけるアクティブパートナー(参画者、協働者)として、野生生物の生息地内および隣接する地域社会が全面的に関与すること"を促している。

 2016年から国連事務総長は、世界的な野生生物犯罪と各国の決議の実施状況について、さらなる行動のための勧告とともに、年次報告書を提示するよう課されている。

 「トラフィックは、野生生物の密猟危機の規模へ世界の注目を向け、対処するための解決策を立てる手助けをしてきた。今、ここで描かれた各国の実施政策を支援する準備がある」と、ブロードは述べた。

【注記】
国連総会決議は、2013年パリ宣言、2014年ロンドン宣言、2015年カサネ声明と2015年のブラザビル宣言を含む、違法な野生生物取引における一連の主要な国際的宣言にもとづいている。
◆パリ宣言
http://pfbc-cbfp.org
◆ロンドン宣言
https://www.gov.uk
◆カサネ声明
https://www.gov.uk
◆ブラザビル宣言
http://www.unep.org

トラフィックとWWFはかつてない勢いとハイレベルな政治的決意を生み出した2012年の"Illegal Wildlife Trade campaign(違法な野生生物取引対策キャンペーン)"に続き、2014年"Wildlife Crime Initiative(野生生物犯罪対策イニシアティブ"を立ち上げた。
Wildlife Crime Initiative
http://wwf.panda.org


【関連記事】
カサネ会議-野生生物犯罪撲滅へ向けた国際的な勢い続く(2015年)
各国政府が世界的な野生生物の密猟に対処する断固とした緊急措置を誓う(2014年)
密猟問題 国連の安全保障理事会の議題に(2013年)

2015年08月06日
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