ホーム野生生物ニュース違法事例・法執行ニュース>各国政府が世界的な野生生物の密猟に対処する断固とした緊急措置を誓う

野生生物ニュース

各国政府が世界的な野生生物の密猟に対処する断固とした緊急措置を誓う

2014年02月20日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
46カ国の政府代表が、ランカスターハウスにて、違法な野生生物取引に対処する断固とした緊急措置に合意
© Wikimedia Commons

【英国、ロンドン発 2014年2月13日】

 野生生物の密猟や違法取引によって大きな影響を被る国々を含む、46カ国の代表(首脳や大臣、政府高官)が、世界的な違法野生生物取引に対処するための「断固とした緊急措置」をとることを誓った。

 強力な文言で記された宣言は、ロンドンで英国政府によって開催された会議「野生生物の違法取引に関するロンドン会議(London Conference)」の2日間におよぶ非公開の交渉の後、発表された。この会議には、英国王室チャールズ皇太子とウィリアム王子、ヘンリー王子も参加した。

 宣言書に署名した国々が合意した措置は、違法な野生生物製品の市場を根絶させるための活動-法執行の強化、効果的な法制度と抑止力の確保、地域社会の有益な関与を通じた持続可能な生活の促進-を含む。

WWFとトラフィックは、違法な野生生物取引による経済、社会、環境への大規模で有害な影響を意識した「ロンドン宣言(London Declaration)」を歓迎する。この宣言には、法体制と国の管理体制を弱体化させ、政治的腐敗を助長している組織犯罪ネットワークが関与する密猟や違法取引がますます増大していることにも言及されている。

 WWF英国の種保全担当チーフアドバイザーであるヘザー・ソールは、

「ロンドン宣言に署名した各国政府は、野生生物犯罪は、重大な犯罪であり、食い止められなければならないという強力なメッセージを送った。違法取引は、種の個体数に打撃を与えるだけでなく、レンジャーの命を奪い、汚職の蔓延によって、国の経済発展を妨げ、社会を不安定にする。これは、一国や地域規模の話ではなく、緊急に国際社会の関心が求められる危機的事態であり、専門の国連特別代表の任命を通じて、各国政府レベルの政治的支援を必要とする。各国政府は、宣言にのっとって野生生物犯罪と闘うために、現実的な施策を講じ、資源を投じる時がきた」と語った。

 会議に参加した国には、ゾウの個体数が深刻な密猟の脅威にさらされているコンゴ民主共和国、ガボン、ケニア、タンザニアなども含まれる。他の参加国には、トーゴ、フィリピン、マレーシアなど、アフリカからアジアに密輸される象牙の主要な中継国があり、違法な象牙の一大市場を持つ中国が参加したことは重要である。

 同様に、サイの角の取引の中心にある国として、南アフリカ、モザンビーク、ベトナムが参加したほか、トラの部分(爪、歯、骨、皮など)の違法取引の影響を受けているインドネシア、ミャンマー、ロシア、中国も参加した。

 加えて、犯罪対策において重要な役割を担ういくつかの政府間国際機関-ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flola:CITES)、国際刑事警察機構(インターポール、International Criminal Police Organization: ICPO)、世界税関機構(World Customs Organization:WCO)、いくつかの国連機関、アフリカ開発銀行(African Development Bank:AfDB)、地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)、世界銀行なども参加した。これらの機関はそれぞれ、宣言の内容を実施するのに有効な資金や人的資源を提供できる可能性がある。

 「このロンドン宣言は、世界の象徴的な野生生物を絶滅の危機に追いやり、国内外の安全保障を揺るがす組織犯罪ネットワークを撃退するために各々が担いうる役割を果たすよう、各国に対する明確な呼びかけとなっている」とトラフィックの代表であるスティーブン・ブロードは言う。

 「これらの取り組みを支援する鍵は、野生生物製品に対する需要抑制が必須となる流通経路において、最終消費者に向けた行動計画を協働して策定することである」とブロードは付け加えた。

 「違法な野生生物取引への政府レベルでの関心と、全会一致で決まった行動への呼びかけは、前例のないものである。わたしたちの現在の課題は、こうした圧力を維持するとともに、宣言の力強い誓約を実行するべく、協調した行動がとられるように導くことである。」


【ロンドン会議(The London Conference)】
英国政府は、各国の政府関係者に呼びかけ、違法な野生生物取引を撲滅させ、世界で最も象徴的な種を絶滅の脅威から保護するための対策を話し合う国際的な会議をロンドンで開催した。(2014年2月12日、13日)

デービッド・キャメロン首相、外務省ウィリアム・ヘーグ大臣、環境・食料・農村地域省オーウェン・パターソン大臣、WWF英国の総裁であるチャールズ皇太子主催により開かれ、ウィリアム王子、ヘンリー王子も出席した。

◆会議による「ロンドン宣言(London Declaration)」(英国政府のサイト:英語)


【日本の外務省による会議報告】(外務省HP)

2014年02月20日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_Online_Ivory_Trade_in_Japan_JP.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート

発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper

17_Briefing_CHI-World_Rhino_Day.jpg

Chi Initiative BRIEFING PAPER World Rhino Day 2017

発行:Chi Initiative【2017年9月】 著者:TRAFFIC【英語】24pp