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絶滅のおそれのあるカメ2種の違法取引でペットショップ経営者ら書類送検

2012年04月26日
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120526G_japonica.jpg 今回みつかった天然記念物のリュウキュウヤマガメ
© トラフィックイーストアジアジャパン
 
120526M_tricarinata.jpg ミツウネヤマガメ © トラフィックイーストアジアジャパン

 2012年4月24日に、ミツウネヤマガメ(ミスジヤマガメ)Melanochelys tricarinata およびリュウキュウヤマガメGeoemyda japonica の違法取引でペットショップ経営者ら3名と1社が東京地方検察庁へ書類送致された。

 ペットショップ経営者は2011年9月13日に、歯科医の男性から、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)で原則的に国内取引が禁止されているミツウネヤマガメ1頭を譲り受けた。またペットショップ経営者は、このミツウネヤマガメが許可なく不正に輸入されたものだと知りながら譲り受けたことで、関税贓物(ぞうぶつ)罪(犯罪に係る貨物について知っているのにこれを運搬、保管、取得する行為のこと)として関税法違反の疑いがもたれている。
 さらにこのペットショップ経営者は2011年9月17日頃、天然記念物のリュウキュウヤマガメ8頭を歯科医男性から譲り受け、6頭を別の自営業の男性に譲り渡したとされる。必要な許可を得ずに天然記念物の現状を変更(捕獲、移動など)した文化財保護法違反の疑いがもたれている。

 過去にほとんど国際取引されたことのないミツウネヤマガメのような種が日本でみつかったことは、世界的にも絶滅のおそれのある種が密輸され、日本国内で消費されている可能性があることを示唆しており、本件は表面化した一事例にすぎない。日本における消費活動は、世界の野生生物の存続を左右する可能性もあるということを私たちは自覚しなければならない。

 また今回は、日本の固有種であり、日本の法律によって保護対象とされているリュウキュウヤマガメの違法な取引が報告された。トラフィックでは、この種の海外への流出の可能性も含めてその取引について懸念している。

 今回のように国際取引が規制されている野生生物を取引する場合、不正に輸入されたと知っているのに取引をした場合には罪に問われることとなる。事業者や消費者は、譲り受けたり、購入する場合、適正な取引経路をたどって入手されたものであることを確認することが重要である。


 トラフィックイーストアジアジャパンはこれまで、種の保存法での法執行がより効果的におこなえるような法体制となるよう、法改正の提言もおこなっている。
 

ミツウネヤマガメとは
 ミツウネヤマガメ(ミスジヤマガメ)Melanochelys tricarinata はインドやバングラデシュ、ネパールの、川沿いや湿地帯の草原などに生息する陸生の小型のカメであるが、生息状況についてはよくわかっていないことも多い。現在IUCNの絶滅のおそれのある種のレッドリストでは危急種(VU)に分類されている。主に脅威となっているのは、生息域の破壊であるが、卵など食用のために採取されたり、甲羅が工芸品のマスク作りに使われ、土産物などとして売られているという。ミツウネヤマガメは1975年よりワシントン条約附属書 I に掲載されている。UNEP-WCMC CITES Trade Databaseによれば、世界的には1975年以降生きた個体8頭が公式に国際取引された記録があるが、日本へ輸入された記録はない。日本国内では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国際希少野生動植物種に指定されているため、譲渡や販売目的での陳列などは原則的に禁止されている。

リュウキュウヤマガメとは
 リュウキュウヤマガメGeoemyda japonica は、沖縄の沖縄島、渡嘉敷島、久米島の、常緑広葉樹の自然林など湿潤な林床や渓流沿いに生息する。IUCNレッドリストでは絶滅危惧種(EN)に、日本のレッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に分類されている。生息域の縮小が心配されているが、特に沖縄島では、道路での轢死(れきし)や側溝への転落死、違法捕獲などの影響も懸念されている。リュウキュウヤマガメは「種の保存法」では規制の対象とされていないが、「文化財保護法」の下、国の天然記念物に指定されている。  日本では過去2003年9月にも、リュウキュウヤマガメ41頭を捕獲・売買し、うち32頭を死なせたとして文化財保護法違反の疑いでペットショップ経営者らが逮捕された事件があった。
 


関連ニュース:「世界の野生動植物を守れる日本になるために 「種の保存法」による国内取引管理の改善を要望」

2012年04月26日
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