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 「種の保存法」による国内取引管理の改善を要望

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世界の野生動植物を守れる日本になるために
 「種の保存法」による国内取引管理の改善を要望

2012年02月20日
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120221tortoise_onHand.jpg 世界的にみても日本はリクガメ類の輸入大国
©トラフィックイーストアジアジャパン
 
120221orangutan.jpg 1999年の密輸事件でみつかったオランウータン
©トラフィックイーストアジアジャパン

 【2012年2月21日 トラフィックイーストアジアジャパン発】
 野生生物の取引を調査・監視しているトラフィックイーストアジアジャパンは、世界の生物多様性の保全に日本が積極的に貢献できるよう、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下、「種の保存法」)による野生生物の国内取引の管理に対する要望書を、本日環境省に提出した。

 「種の保存法」は、国内に生息する野生生物の保全および、国内外の野生生物の国内流通を管理するというふたつの側面を持った法律である。近年は、環境意識がますます高まり、各々が環境保全に対して責任のある行動をとることを求められるようになった。取引の形態はインターネット等の情報技術の進歩により様変わりしている。さらに中国やインドなどアジアの国々の台頭により市場構造も変化し、野生生物取引を取り巻く環境は刻々と変わっている。「種の保存法」は1992年に制定されて以降、大きな改正はおこなわれていない。社会の現状に合った管理・法体制が必要である。

 現状では、例えば野生生物の国内取引において以下の問題が起きている。
• 「種の保存法」で販売が原則的に禁止されている野生生物が売られているのをみても、それが合法か違法か消費者が明確に判断することは難しい。
• 違法な取引をおこなった業者が違反を繰り返す。
• ワシントン条約に違反して密輸されたもの(附属書IIやIII掲載種など)が売られていても、買う際に判別できず、一般の人でも容易に買えてしまう。

 日本は世界各国から多種多様な野生生物を輸入している。そのため日本として、国内の野生生物を保全するだけでなく、世界中の生物多様性保全に対しても責任ある体制を整える必要がある。野生生物取引の調査・監視を専門におこなってきたトラフィックがこれまで見聞きしてきた事例などを分析し、改善すべき点をまとめている。要望内容については、主に以下の3つの目的を目指している。
• 合法な野生動植物種と違法なものを判別できるようにすること
• 違法な行為への責任ある対処と未然の抑止を実現すること
• 世界の中の日本という視点で、生物多様性の保全に向けた役割を果たすこと

 3つの目的から、種の保存法の条文とその施行について次のように要望する。
・登録票の返納と時限設定
・個体登録方法の改善
・飼育繁殖施設の登録制度の構築
・取扱い業者の登録制度の構築
・用語の改善
・ゾウ類に関する事業者登録の義務づけと情報公開、標章のトレーサビリティ確保
・罰則の強化
・所持の規制
・原産地への返還費用の負担
・ワシントン条約附属書II、IIIの生きた動物個体のトレーサビリティ確保
・クマ類やウミガメ類の取引管理強化
・象牙の国内在庫量の把握
・識別困難で対象外とする措置について
・登録票発行の際の目的条件

 日本は、世界中の動物や植物の一大輸入国である。日本人の豊かな生活は、世界の生物多様性から授かる恩恵に支えられている。世界の野生生物を利用する責任のある国、また2010年からは生物多様性条約の議長国としても、世界の生物多様性の保全に今後どのように貢献していくべきであるか、まさに再考を迫られる時期にきている。

 

■要望書(PDF)はこちらからダウンロードできます。
「「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」および野生動植物の国内流通管理に関する要望書」



■関連情報
野生生物ニュース:「ルーツをたどれ!ワイルドライフ」開催報告書が完成

野生生物ニュース:「動物の愛護及び管理に関する法律」についての要望書

2012年02月20日
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