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【CBD-COP10】地球の薬箱を救え!イベント開催しました

2010年10月20日
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101019seminar1.JPG ©TRAFFIC East Asia-Japan
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会場の様子と賢人たち

 生物多様性条約COP10に関連したイベント「地球の薬箱を救え。Saving Plants that Save Lives」を開催しました。このイベントは、世界中で利用されている、野生の薬用植物の利用と取引をテーマにしたもので、WWFとIUCNの共同事業であるトラフィックが開催したものです。シンポジウムには80名あまりの方がご参加下さり、またインターネットでも中継をおこないました。

「地球の薬箱を救え」

 さまざまな薬、食糧、また香料の原料として、私たちが利用し、恩恵を受けている薬用植物は、野生から採取された植物に大きく頼っています。

 しかし、それらの植物が近年過剰に採集されるようになり、そのため世界各地の原産地の生物多様性に、大きな問題を引き起こしていることは、あまり知られていません。

 世界の植物の多様性を守りながら、薬用植物の恩恵を、持続可能な形で私たちが受け続けるためには、どうすれば良いのか。

 WWFとIUCNの共同事業であるトラフィックでは、2010年10月19日、この問題について考えるシンポジウム「地球の薬箱を救え。Saving Plants that Save Lives」を開催しました。

 会場となった名古屋学院大学体育館は、生物多様性条約(CBD)の第10回締約国会議(COP10)が開催されている会場のすぐ近く。ホスト国である日本のWWFジャパン事務局が、COP10関連イベントの第一弾として実施したものです。

「賢人」たちの言葉

 このシンポジウムには、人の「賢人」にゲストとしてお出でいただきました。  いずれも、さまざまな野生植物を、地域に受け継がれてきた伝統的な利用方法で現在も利用している人々。人と植物、人と自然が共存する、その「知恵」をお持ちの方々です。

 事実、お招きした「賢人」は、中国、ケニア、ブラジルと、まったく違う地域からお越しいただいたにもかかわらず、そのお話の根底には、人と自然のかかわりを考える上で、確かに共通点と言えるものがありました。

 賢人たちが暮らしているのは、病院もなく、医者も看護師もいない地域。人々の健康を支えているのは、昔も今も自然の森から採れる、薬用植物だそうです。

 そして、父から子へ、村の長老から若者たちへと、どの植物にどんな薬効があり、どのような方法で採取すれば使い尽くすことなく末永く利用し続けられるのか、地域の人々はその知恵を受け継いできたといいます。

フェアな野生の利用方法

 しかし、そうした自然との共存を実現してきた地域にも今、外部からのさまざまな影響が迫ってきています。

 ち込まれる新しい技術、文化、生活の仕方、経済や流通の大きな流れが持ち込んできたのは、ただ便利な暮らしだけではありませんでした。それまで地域だけで使っていた薬草が、海外にまで持ち出されて売られるようになり、過剰に採集されるようになったのです。

 シンポジウムでは、この問題を解決し、植物の過剰な利用を防いで、世界中の人々が等しくその恩恵を受けるための手段のひとつとして、「フェアワイルド基準」を詳しく紹介しました。

 この基準は、持続可能な水準で採集された薬用植物を、第三者機関が認証する際に使うもので、地域の生物多様性や、地域社会の暮らしを守ることにつながる、ひとつの社会的な仕組みとして、トラフィックやWWFが推奨しているものです。

 自然や植物に接する賢人たちの知恵や心に深く学びながら、グローバル化の波に対抗できる新しい制度を打ち出し、生物多様性の保全に結び付けてゆくこと。 それは、薬用植物のみならず、人が生きる上で利用しているさまざまな野生生物のすべてに通じた、取り組みのありかたといえます。

 シンポジウムは、定員80人の会場がほぼ満席となり、多くのお客様がお越しいただきました。また、せっかくの機会ということで、セミナー後にも、たくさんの出席者の方々が3人の賢人たちの周りに集まり、さまざまな質問をされていました。

ネット中継を実施しました!

 このシンポジウムの内容はネットで中継いたしました。

ネット中継の履歴はこちら(主に英語)

講演者の発表資料(PDF)はこちらでご覧いただけます。

■アンドリュー・ナイネネ・レレコイティエン氏
(イヤク族のリーダー:ケニヤ、ムコゴドの森から)
英語

■張毅(ヅァン・イー)氏
(中国伝統医療の医師 四川省中医薬科学院副理事:中国四川省から)
英語中国語

■刘雪雁(リウ・シュイエン)(トラフィック)
英語

■アナスタシア・ティモシャイナ(トラフィック)
英語日本語
2010年10月20日
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