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レンジャーの命を守る新たな訓練ガイドライン

2017年02月09日
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パトロール隊長の指示を受ける
ラジャジ国立公園(インド)のレンジャー
 © Rohit Singh / WWF

【2017年2月9日】

 過去10年で任務中に命を落としたレンジャーは1000人を超え(※)、このうち80%は密猟者や武装集団に殺害されている。こうした痛ましい犠牲は、十分な訓練と装備を身につけた密猟取り締まりレンジャーの必要性を強調するものだ。

 このたび、専門家チームによるレンジャーのための訓練ガイドライン一式が作成され、これを国際レンジャー連盟(The International Ranger Federation)、国際トラフォーラム(The Global Tiger Forum)、Thin Green Line Foundation、PAMS Foundation、WWFらが世界的に展開する。トラフィックもこれに提携する形で貢献している。専門家チームは合わせて一世紀以上の経験を有し、名高い野生生物レンジャーも参加している。

 「野生生物とその製品の違法取引によって、世界中で多くの種の個体数が大幅に減少している。例えば、ゾウやサイ、センザンコウ、トラに対する激しい密猟は、これらの種を野生で絶滅の危機に追いやっている。保護区の当局とレンジャーがこうした甚大な脅威から野生生物をより有効に保護できるように、密猟取り締まりの訓練は効果的なものでなければならない」と、国際レンジャー連盟の総裁を務めるショーン・ウィルモア(Sean Willmore)氏は述べた。

 野性生物の違法取引は、最も利益を生む犯罪取引の4番目に数えられ、その額は少なくとも年間190億ドル(およそ2兆円)と推定される。ゾウやサイ、トラのような象徴的な種をターゲットにする密猟者たちは、その目的を果たすため、ますます高度な技術と過激な戦術を用いている。訓練が十分でないレンジャーの配備は、時に作戦の失敗を招き、重傷者や死者を出すに至っている。多くのレンジャーは保険にも加入しておらず、万一重傷を負ったり最悪死亡したりすれば、それ以上家族を養うことはできなくなる。

「レンジャーにとっての過酷な現実は、彼らが重傷を負ったり命の危険の脅威に日々直面していることを意味する。多くの場合、作戦の失敗は、訓練、資金、人材の欠如に起因する。我々が野生生物の保護を望み、その目的のために奮闘するレンジャーの暮らしの向上を願うのであれば、こうした実情を変えなければならない」と、国際トラフォーラムの事務局長ラジェシュ・ゴパル(Rajesh Gopal)博士は述べた。

 昨年、WWFは初となるレンジャーの認識調査を実施し、アジアアフリカ地域の野生生物関連のレンジャーがそれに回答した。その結果明らかになったことは、大部分のレンジャーが任務中に命に危険が及ぶ事態に遭遇したことがあり、自らの装備が不十分であったと考えていた。また、ほぼ半数のレンジャーが自らの任務を安全かつ効果的に遂行するための十分な訓練が存在しないと感じていた。

 「最も重要なのは、レンジャーが任務を安全に、かつ首尾よく遂行するために不可欠なスキルとツールを訓練から身につけることだ。ベストプラクティス・ガイドラインの作成は、密猟取り締まりを担うレンジャーに適切な水準の訓練を保証するための道のりにおける、画期的な一歩を意味する」と、PAMS Foundationのウェイン・ロッター(Wayne Lotter)氏は述べた。

 フィールドに出るレンジャーの基礎訓練は、レンジャーの成長において最も重要な位置を占める。それは、ひとたび彼らがレンジャーとして雇用され、日々の作業にあたれば必ず遭遇する実際の状況に備えるためのものである。

 フィールドに出るレンジャーは、世界で最も危機にさらされている種を保護するのに重大な役割を担っている。最近の推計によると、毎年2万頭にのぼるゾウがアフリカで密猟されている。セルース動物保護区では、1982年に世界遺産に登録されて以降、生息するゾウのほぼ90%が失われており、そのほとんどが密猟によるものである。アジアでは、13のトラの生息国が2022年までにその生息数を倍増すべく惜しみない努力を続けている。しかし、野生生物の違法取引は依然として最大の脅威のひとつであり、近年の前進もこうした違法行為よって窮状を極めている。

※出典:Thin Green Line Foundation


レンジャーのための訓練ガイドライン: 『Anti-poaching in and Around Protected Areas:Training Guidelines for Field Rangers』(英語2MB)

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