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野生生物のサイバー犯罪 ワシントン条約での焦点に

2016年09月27日
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ワシントン条約締約国会議のサイドイベントで
講演するトラフィックのXu Ling

【南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ発 2016年9月26日】

 大企業、政府当局、NGOが、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」締約国会議の間に開催されたユニークなイベントにおいて、オンライン犯罪から絶滅のおそれのある野生生物を保護するために結集した。

 「野生生物のサイバー犯罪を知る」と銘打ったサイドイベントにおいて、巨大なオンラインテクノロジー企業であるTencentとeBay、トラフィック、IFAW(国際動物福祉基金)、ケニア検察庁、中国のワシントン条約管理当局が集結し、野生生物のサイバー犯罪に対する戦略を紹介した。

 このイベントにより、NGOとオンラインテクノロジー企業は、標準的な野生生物の方針の枠組みを共有することが可能となった。この枠組みは、TencentとeBayを含む7企業がトラフィック、IFAW、WWFと共同で最近採択したものである。

 講演者は、国々に、違法なオンライン取引を抑制するための早急な対応を促し、ワシントン条約の締約国によって今週議論される予定の「野生生物のサイバー犯罪との闘いに関する決定案」を支持するよう求めた。

 トラフィックは、2012年から中国のオンライン小売業の定期的なモニタリングを実施しており、2015年には報告書『Moving targets: Tracking online sales of illegal wildlife products in China from 2012 to 2014(動く標的:中国における違法な野生生物製品のオンライン取引追跡-2012-2014)』を発行した。報告書では、中国語のウェブサイトにおいて、最も多い時には、毎月4,000件を超える新たな広告がオンライン上に出現していたことが明らかになった。

 違法な野生生物製品、特に象牙の取引が、オンライン小売業からソーシャルメディアの場に移りつつあることが確認された。

 2015年11月、トラフィックと中国で影響力のあるインターネット付加価値サービスプロバイダーであるTencentは、WeChatおよびTencentのその他のソーシャルメディアを通じて行われる違法な野生生物取引への対処に関する戦略的な覚書を締結した。それ以降、トラフィックとTencentはオンラインで違法な野生生物取引を防ぎ、阻止するために密接に連携のうえ、定期的なモニタリングとユーザーの野生生物の違法取引への関与を防ぐための独創的なメッセージの発信を行っている。

 「Tencentは安全で環境にやさしいインターネットシステムを作ることに注力している」と、イベントの共同主催者でもあるTencentのDirector of Information Security Executive CommitteeのBand Yang氏は述べた。「我々の製品やサービスを通じた違法な野生生物取引に対しては、いかなる違反も許さないという方針を掲げ、インターネットを通じ、絶滅のおそれのある種を保護する革新的な方法を作り出すために我々の専門知識を使うことに専念している。また、我々は他の主要な世界的テクノロジー企業と連携のうえ、野生生物に関連する違法取引と闘うための基準を設け、同じ志を持つこれらの企業と経験を共有している」。

 2015年12月、トラフィック、IFAW、TNC(The Nature Conservancy)は、Tencentの取り組みに加わった。その取り組みには、様々なTencentのプラットフォームのユーザーに対する種の保全に関する普及啓発、野生生物の違法取引の非難、Tencentのモニタリング能力の構築、実施の促進、TencentのWeChatとQQのプラットフォームにおける違反投稿の削除が含まれる。

 「オンラインでの野生生物犯罪は、ゾウ、サイ、爬虫類、鳥類を含む絶滅のおそれのある動物を深刻な脅威にさらすものである」と、IFAWのGlobal Wildlife Cybercrime Project LeadであるTania McCrea-Steele氏は述べた。「アフリカゾウの個体数が歴史的に少なくなり、サイの密猟数が数千となり、3年連続で増加している状況においては、企業、政府、NGOがひとつとなり、この増大しつつある危機に立ち向かうことが不可欠である。この取り組みにより、より総体的な方法でオンラインでの野生生物犯罪と闘うことが可能となる」。

 2009年1月、eBayは、世界中のプラットフォームにおいて、すべての象牙製品の販売を禁止する措置をとり、それ以降、実施の強化と監視に取り組んでいる。

 「eBayは10年以上、違法な野生生物取引と闘ってきた経験がある」と、eBayのHead of Global RegulationであるWolfgang Weberは述べた。「我々は、2006年にIFAWと法執行当局とともに、象牙の違法取引に焦点を当てた会議を開催した。我々の経験上、このようなパートナーシップは、持続的で目に見える成果を実現するためには最も強力で効果的な手段である。そのため、我々はこのような重要な取り組みを歓迎し、支援する」。

 「絶滅のおそれのある野生生物のサイバー犯罪は世界的な課題であり、政府、企業、NGOが国レベルで協働し、この問題を優先させることが必要である。絶滅のおそれのある種を保全し、持続可能な発展を促進するための世界的な取り組みの一環として、野生生物のサイバー犯罪に対処する協調的な措置をとる必要がある」と、中国のワシントン条約管理当局のExecutive deputy directorであるMeng Xianlin氏は述べた。

 「IFAWのレポート『Wanted-Dead or Alive(求む:生死は問わない)』で、オンライン広告のほぼ3分の1を象牙および象牙と疑われる製品が占めているということを読んで衝撃を受けた。ケニアは自国のゾウに大きな誇りを持っており、密猟のおそれから守るために熱心に取り組んでいる。あらゆる場所で執行官がオンラインの象牙の違法取引を取り締まることが不可欠である」と、ケニアのSenior Assistant Director for Public ProsecutionsであるRodah Ogoma氏は述べた。

 「インターネットが世界的な規模のものであることを考えると、オンライン上での違法な野生生物引の問題に包括的、効果的に対処するためには、業界全体にわたる情報交換や方針の枠組みが求められる。この取り組みは、インターネットを監視する取り組みを簡易化、標準化する助けとなる」と、トラフィックのシニア・プログラム・マネージャーであるシュー・リン(Xu Ling)は述べた。

 このサイドイベントは、ドイツ経済協力開発省(BMZ)、環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)を代表してドイツ国際協力公社(GIZ)の資金援助により開催された。

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