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中国の違法な野生生物取引の推移明らかに
-トラフィックによるインターネット取引の調査結果

2015年05月29日
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【中国、北京発 2015年3月3日】

 中国語のオンライン小売業界に関するトラフィックの調査によると、違法な野生生物製品の取引、とりわけ象牙の取引は、オンライン小売業者からソーシャルメディアへ舞台が移ってきている。

 これは最新報告書『Moving targets: Tracking online sales of illegal wildlife products in China(動く標的:中国における違法な野生生物製品のオンライン取引追跡)』の主な調査結果であり、2006年に開始した中国国内のオンライン小売業者による市場取引を定期的にモニタリングすることで明らかにされたものである。この報告は、「世界野生生物の日」である3月3日に発表された。

 中国語のオンラインショップサイト上の違法な野生生物製品に関連する新規の広告は、2012年3月にピークを迎え、月に4,000件以上も掲載されていたことが報告書によって示された。違法な製品の半数以上が象牙製品で占められていた。

 トラフィックの調査結果によるeコマース(電子商取引)企業と法執行機関との定期的な情報交換を通じて、広告の削除や違法製品を検索する際に使用される隠語がブロックされ、2012年7月から広告数が1,500件に劇的に減少した。件数はそれ以来そのレベルのままである。

 「中国の大手オンライン小売業者は、違法な野生生物取引を根絶する取り組みに大変重要な協力者であり、彼らの努力は違法な製品の広告を減らす結果につながっている。それでも、そういった広告は依然数多く存在し続けており、現在おこなわれている違法取引の手段も新しいものへ変化している」と、トラフィック中国オフィス代表Zhou Fei(ゾウ・フェイ)は言う。

 変化のひとつは、売り手が商品の実体を隠すため用いる隠語の数が増えていることである。2012年に使用されていた隠語数は15であったのに対し、現在では64(語)が確認されており、監視対象となっている。少なくとも22の象牙に関する隠語があり、"アフリカ材(African materials)、黄色素材(yellow materials)、白色プラスチック(white plastic)、ゼリー(jelly)"のような言葉も含まれている。

 象牙、犀角、虎骨、べっ甲、センザンコウのうろこ、ヒョウの骨、サイガの角およびサイチョウのカスク(かぶと状の角質突起)の8種類の野生生物製品について25のeコマース企業と古物商のサイトを対象にトラフィックは64の隠語すべてを毎月調査している。

 また、ソーシャルメディアへの進出も確認されており、販売業者は興味がありそうな購入者を引き寄せ接触するために、違法な野生生物製品の写真や製品情報を公開している。中には顧客の幅を広げようと"仲介者"を使い、その仲介者の持つソーシャルメディア上に違法な野生生物製品の情報を転載している業者もいる。

 「ソーシャルメディアという秘匿性の高い世界を利用した取引へ変わってきたことで、法執行機関には密売人の一歩先を行くために継続的な対策を模索しなければならない全く新しい課題がうまれた」とトラフィック東・南アジア地域担当ダイレクターであるYannick Kuehl(ヤニック・キュール)は言う。

 「このような闇市場のモニタリングと取り締まりは、法執行において最優先事項にすべきである。犯罪者たちは、違法行為を隠れておこなうためにソーシャルメディアを利用しているようだ」。


【注記】

・中国は世界最大のオンライン市場を有しており、2014年には推定2,746億ドル(およそ32兆9,000億円)がオンライン取引に注がれた。

・トラフィックの調査では、広告の総数が減少したように、違法な野生生物製品の新規ネット掲載数が劇的に減少したことを確認した‐2012年1月、トラフィックは15のサイト上で5種類の違法な野生生物製品の30,000件におよぶ広告を発見し、調査をおこなった。その後の2カ月間で広告数は50,000件以上にまで跳ね上がったが、トラフィックがサイト管理者に連絡を取り、モニタリング結果を共有したところ、特定した広告を直ちに削除する管理者も数人いたため、4月には再び30,000件程度に減少した。


モニタリング対象の中国語サイトにおける"毎月掲載される野生生物製品の新規の広告数"(2012年1月~2014年9月)


モニタリング対象の中国語サイトにおける"違法な野生生物製品の広告総数"(2012年1月~2014年9月)

2015年05月29日
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