
ホーム>野生生物ニュース>違法事例・法執行ニュース>タンザニア:1000本を越えるゾウの牙を押収
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【タンザニア発、2011年8月26日】
報じられたところによれば、ザンジバルの警察が、マレーシア向けに運ばれていた積み荷の中に隠された1,041本の象牙を押収した。
積荷は、ダルエスサラームより2週間前にザンジバルに到着し、荷下ろしされてストーンタウン近くで保管されていた。
2つの地元の運送仲介者が、さらに事情聴取のため拘留されている。
象牙は、アンチョビの入ったコンテナの中に隠されており、強烈な匂いで中身の検査を妨げようとしたとみられる。
昨年も似たような手口が使われていた。9月に起きたその事件では、384本の象牙が香港当局に押収された。この象牙はザンジバルから運ばれてきた2つのコンテナに詰められ、干した魚としてラベリングされていた。
その押収事件の後のタンザニア政府と話し合いの中で、トラフィックはザンジバルの港での法執行強化を要請した。
「トラフィックは今回の押収をおこなったことについてタンザニアの担当官に対し称賛を送る。担当官達が、禁制品とされる野生生物製品の主要ルートとしてのザンジバルの港に注力しているのは喜ばしいことだ」とトラフィックのゾウ・サイプログラムのコーディネーター、トム・ミリケンは言う。
トラフィックは、ワシントン条約締約国に代わって違法な象牙取引の監視システムであるETIS(ゾウ取引情報システム)を運営しているが、ミリケンは、そのETISを管理している。
ETISは、1989年以来世界中で起きた1万7,000件近くの象牙やその他のゾウ製品の押収事例に関する報告データに関する詳細情報を有している。
ETISのデータによると、タンザニアは他のどの国よりも、象牙のより大規模な取引に関与している(これまでの83件の(800kgを越える)最大規模の象牙の押収のうち21件)。
今回の事件は、タンザニアが2007年以来、自国でおこなった押収の中で最初の大規模な押収事例で、多くの小規模な押収がこの期間におこなわれたものの2002年以来2番目に大きな押収事件となった。
1989~2002年の間に、タンザニアは違法に輸出される前の象牙について10件の大規模な押収(約18.7 t の象牙)をおこなっており、この期間、世界的にみてもタンザニアが関与したような大規模な押収はなく、国として非常に良好な法執行実績を示していた。
しかし2003年から2010年にかけて、タンザニアを出所とする大規模な押収事件がさらに10件(合計28.6 t)アジア(香港、フィリピン、台湾、ベトナム)で起き、1件だけ大規模な押収(890 kg)がタンザニア国内でおこなわれた。
「喜ばしいことに、タンザニア当局による法執行活動は、彼らが1990年代に達成してきた、より活発だった時の実績に、戻りつつある」とミリケンは言う。
「アフリカでも第2に大きなゾウ個体群を有する国として、違法な象牙の差し止めという観点だけでなく、それに続く、犯人に対する捜査・逮捕・起訴の観点からも、タンザニアが良好な法執行状態を示していることは極めて重要である。」
「今回の押収は、少なくとも500頭のゾウが死んだことを意味しており、誰がこの捕殺の背後にいるか、またどうやって象牙を入手したかわかるかぎりのことを突き止めることが不可欠である。」
全体的に見て、2004年以降アフリカにおいて象牙の違法取引は増えている。
先週のワシントン条約の常設委員会に提出された報告の中でこのように言及されている。「近年の重大な押収事件はケニアで起きているけれども、原産国または輸出国として主要なケニアやタンザニアを抱える東部アフリカ地域は、アフリカ大陸から出て行く違法な象牙の主要な出口としての地位を固めている。」
違法な象牙流通におけるマレーシアの役割もまた、ETISデータの分析を通じて特定されている。2009年に発表された最新の全体的な分析の中によると。「一連のETISの分析の中で、マレーシアは、アフリカの象牙の経由国として次第に目立つ存在となっている。」
トラフィックの象牙取引やタンザニアのアフリカゾウに関する活動は、Liz Claiborne Art Ortenberg Foundationのご支援によりおこなわれている。
野生生物ニュース:「ゾウ取引情報システム(ETIS)の 最新報告書の日本語版がダウンロードできます」(2011年9月20日)
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