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ベトナム:野生生物の法執行官たちが違法な取引と闘うためのスキルを磨く

2011年03月03日
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サイゴン動物園での識別トレーニングの様子
©TRAFFIC East Asia-Japan

【ベトナム、ホーチミン、2011年2月21日~23日】
  法執行官たちはこの週開かれたワークショップで、爬虫類の種の識別方法のトレーニングを受けたり、国際的な野生生物の保護政策について理解を深め、アセアン(ASEAN)地域での違法な野生生物取引に立ち向かおうとしている。

 このワークショップは、先月マレーシアでおこなわれた、10のアセアン加盟国向けの「講師養成のためのトレーニング」に参加したベトナムの講師主導で実施された。これは東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)の下での日・ASEAN統合基金(JAIF)および日本の環境省の資金援助によるプロジェクトの一環である。

 本プロジェクトは、分類に関する知識や野生生物取引に関する規制を理解することおよびそれを適用することにおいて、アセアン諸国と隣国を参加させ、その能力を強化しようというものだ。

 ベトナムは、国内のトレーナーのみで実施する独自のワシントン条約と種識別のコースを開催するのに選ばれた、このアセアン地域で最初の国となる。

 3日間のコースに参加すると、ベトナム南部の内陸や空港の主要なスタッフが東南アジアの野生生物取引や、ワシントン条約や関連した国内の法律のような取引を管理している規制の基礎知識を身につけることができる。また、参加者たちは、サイゴン動物園でおこなわれた対話型セッションで、この地域でよく取引されている絶滅のおそれのある爬虫類を識別するためのトレーニングを受ける。

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密輸の手口として紹介された卵を隠せるようにしたTシャツ
©TRAFFIC East Asia-Japan
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サイゴン動物園での識別トレーニングの様子
©TRAFFIC East Asia-Japan

 違法取引は、この地域の生物多様性を脅かす最大の脅威とされてきた。開会の挨拶の中でベトナムの森林局(Directorate of Forestry)副長官(Deputy Director)のHa Cong Tuan博士は「このトレーニングは、国際的な野生生物取引の取り締まりをおこなっている法執行官たちが、より効果的に彼らの大切な自然資源を保護し、持続可能な形で利用するためのスキルを身につけられるよう手助けしてくれる。」

 トレーニングをサポートしているアセアン野生生物法執行ネットワーク(ASEAN-WEN)のプログラム調整部(Program Coordination Unit)のシニアオフィサーのManop Lauprasert氏はこう言う。「犯罪ネットワークは、この地域の内陸や海上、空港の法執行能力が限られているところにつけ込んでいる。こういったトレーニングの取り組みはそうした欠陥を埋めてくれる。」

 「野生生物取引は、合法と違法の双方とも、国際的な水際においてますます増えているとの認識が高まっている。そのため空港や内陸の水際の法執行担当者の能力強化が、野生生物の取引を阻止するために重要な役割を果たすことになる。」

 トラフィックサウスイーストアジアの地域事務局長のウィリアム・シャイードラ博士は言う。「このトレーニングコースは、前線に立つ法執行官やその他のカギとなる関係者たちに必要な知識や技術を伝えるだけでなく、ベトナムの担当官たちがそうした能力開発の取組をリードし続けていけるよう支援することにもなる。」

 今回のトレーニングコース実施にあたって協力してきたトラフィックイーストアジアジャパンの代表、石原明子は言う。「ベトナムは野生生物の消費大国である中国と国境を接している要所であるだけでなく、国内での消費も増加している。今回のトレーニングは日本の環境省の支援で実現したものであり、参加者の熱心な姿に接すると、野生生物保全にとって国際協力がいかに有効か感じる。」

 このトレーニングコースは、ベトナムのワシントン条約管理当局、生物多様性保全庁(Biodiversity Conservation Agency)、自然博物館がトラフィックサウスイーストアジア、日本の環境省、ASEAN-WENの支援によっておこなわれた。

→1月にマレーシアでおこなわれた「講師養成のためのトレーニング」についてはこちら

 


注:
• ベトナムの農業・地方開発省森林局(Directorate of Forestry, Ministry of Agriculture and Rural Development)に属するワシントン条約管理当局は、ワシントン条約の施行にあたってのベトナム社会主義共和国の代表として、またASEAN-WENの国内での活動の中心を担っている。

• アセアン野生生物法執行ネットワーク(ASEAN-WEN)は、アセアン地域内でのワシントン条約掲載種の違法な利用や取引に取り組むことを目的としてい る。ASEAN-WENは、アセアン加盟10ヵ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の法執行機関と、ワシントン条約担当当局、税関、警察、検察、政府の野生生物法執行専門機 関、その他の国内の関係する法執行機関などを含めた、統合ネットワークである。この10の加盟国ネットワークは当地域での違法な野生生物取引に対抗するため越境的な協力をおこなっていくことも目指している。詳細についてはこちら www.asean-wen.org

• トラフィックは、世界規模で違法な野生生物取引に対抗すべくアジアの法執行ネットワークの政府機関を支援している。アセアン諸国や南アジアの野生生物法執 行ネットワーク、中国や差し迫った状況の隣国への要求に応じて、法執行のつながりを越えた技術的な支援をおこなっている。こうした技術支援には、政府間の対話の促進、司法分野との連動、現地に基盤をおいたレンジャーと国レベルの機関とのつながりの改善にWWFとともに取り組むことなどが含まれている。

2011年03月03日
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