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国内:トラなど野生のネコ科動物の爪などの取引で逮捕

2012年06月27日
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120611Pantheratigris.jpg ©Vivek R. Sinha / WWF-Canon

 2012年6月11日に警視庁生活環境課と東京税関、赤坂署、大崎署、石神井署は、ワニの剥製やトラ等の爪などを不正に取引したとして、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下、種の保存法)および「外国為替および外国貿易法」(以下、外為法)違反の疑いで会社役員の2人を逮捕した。

 神奈川県のアクセサリー等販売会社役員(38)は、「種の保存法」で国際希少野生動植物種に指定されているシャムワニCrocodylus siamensis(ワシントン条約附属書 I 掲載種)のはく製4体を、タイから必要な輸入承認を受けずして、2011年9月9日に自身が取締役を務める自社宛てに送り密輸入したとされる。
またこの男性はもうひとりの茨城県の会社役員(53)にトラPanthera tigris の爪2個、アジアゴールデンキャットCatopuma temminckii の爪2個、ヒョウPanthera pardus の爪3個をまず引き渡し、後にそのうちのトラの爪1個、アジアゴールデンキャットの爪1個、ヒョウの爪3個を有償で譲渡し、残りの返品されたトラの爪1個とゴールデンキャットの爪1個を引き取った疑いがもたれている。こうした爪は装飾品に加工され販売されていた。
上記ネコ科3種はいずれもワシントン条約の附属書 I に掲載されており国際取引は禁止されている。国内においても3種とも「種の保存法」により国際希少野生動植物種に指定され、国内でも原則的に譲り渡し等が禁止されている。

 爪など、野生生物の体の部分の識別は難しいことが多く、その違法取引を取り締まることは容易ではない。しかし今回の法執行関係者らの努力が、ケーススタディとして今後の野生生物犯罪に対する法執行活動に役立てられることを期待する。
 絶滅のおそれが心配されているトラだが、東南アジアなどでいまだトラの密猟やトラの体の部分が不正に取引される事件が後を絶たない。今回のようにトラの体の部分を日本で違法に取引するということが、ひいては生息域などでのこうした厳しい状況をさらに後押しすることにもなりかねない。
 爪から野生生物の現状を想像することは容易ではないかもしれないが、野生生物の違法取引は世界の生物多様性を脅かす国際的な犯罪である。日本も国際社会の一員として、事件の背後に隠れている原産国での厳しい現状を理解し、世界的な取り組みを後押しできるよう違法取引に対する断固たる対応が必要である。
 トラフィックイーストアジアジャパンはこうした違反行為への罰則強化も含め、「種の保存法」の改正を求めている。


 

注:
 シャムワニはカンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどに生息するワニで、IUCNの絶滅のおそれのあるレッドリストで近絶滅種(CR)に分類されている。ワシントン条約においても1975年から附属書Iに掲載され、飼育繁殖事業としてワシントン条約に登録された施設から輸出されるもの以外は、商業的に輸入することはできない。
 アジアゴールデンキャットは東南アジアに生息するネコ科動物。UNEP-WCMC CITES Trade Databaseによれば、近年(2000年~2009年)、日本へ合法的に輸入されたのは、2001年の生きた個体1頭だけである。また附属書 I に掲載された1975年以降、爪(Claws)の形態で合法的に日本に輸入されたことはない。
 ヒョウはアフリカからアジアにかけて広く分布している。アムールヒョウなどアジア地域のいくつかの亜種については絶滅が危惧されている。CITES Trade Databaseによれば、過去に様々な形態で合法的に輸入されているものの、爪の形態で日本に輸入された記録はない。
 トラは、1900年代初頭には約10万頭いたとされる野生の個体数は現在推定3,200頭程度となり絶滅が危惧されている。世界の野生のトラの個体群を2022年までに2倍に増やすことを目的とするグローバルトラ回復プログラム(Global Tiger Recovery Programme (GTRP))など、世界規模で保護の取り組みがおこなわれている。ワシントン条約の下、商業的な国際取引は禁止されている。(特集サイト『絶滅の危機にあるトラを救う』

2012年06月27日
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