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【中国、北京発 2008年1月28日】
毎日、絶滅のおそれのある種から作られた、何千もの製品が公然と中国語のインターネット上で宣伝されている。中国本土、香港、台湾のウエブサイトをモニタリングしたトラフィックの新しい調査で、ワシントン条約で保護の対象で、絶滅のおそれのある野生生物からできた膨大な数の製品がウエブ上にあることを明らかにした。そこにはゾウやサイ、トラやウミガメが含まれていた。
実際の市場においては法執行の活動は強化されている一方、インターネット市場は新しい挑戦となる。バーチャルな市場は、売り手と買い手の簡単かつ素早いアクセスを可能にしている。そしてこれらバーチャルな市場については、絶滅のおそれのある種の野生個体群に新しい圧力を与えているが、いまだ適切な規制がおこなわれていない。
野生生物取引に関するインターネットの効果的なモニタリングの必要性が高まっていることに対応するため、トラフィックの調査ではオンライン取引を合法的で持続可能なものにする今後の取り組みの推進を目指している。調査では、中国本土と香港、台湾における、オークションサイトであるYahooやeBay、さらに野生生物取引を主題としたいくつかの独立サイトを調べた。オークションと中国本土、香港、台湾3市場すべてのテーマサイトを、毎週もしくは隔週、8ヵ月にわたってモニターした。変化がより小さいため、テーマサイトについては月ごとに調査した。
調査中、調査員は4,291種類の野生生物製品の宣伝を確認した。もっとも多く宣伝していたのは、中国本土のオークションサイトで、台湾、香港と続く。かなりの割合の提供は購入者をだます可能性さえあり(すなわち、売り手は宣伝した製品を提供する気はない)国際法・国内法に明らかに違反してインターネット上で販売されている野生生物の広がりについては憂慮すべきである。
「インターネットサービスのプロバイダーやウエブサイトは野生生物の取引を合法的におこなう大きな責任を負う必要がある」とトラフィックイーストアジアのプログラムオフィサー、ジョイス・ウーは言う。「政府当局もまたインターネット上の野生生物取引を実際の市場での野生生物に対する同様の規制にあわせる必要がある。」
この難しい課題の中で進歩があった。調査の間、中国、香港、台湾の野生生物取引当局に疑わしい違法取引について情報を提供した。それぞれの場合において、当局は迅速に行動し、これらの明らかな法律違反の捜査に乗り出した。そして結果として、広告の削除や配送の差し止め、関係者の有罪判決につながった。
このレポートは、野生生物当局に対し、仮想的なインターネット市場を取り締まる戦略を作り上げ、ウエブ基盤の市場を実際の市場と同様の規制構造下に置くためにより努力し、インターネット店主に対しては違法な野生生物取引のためのインターネット使用が増えている旨を警告するようを提言している。
レポートに続いて、トラフィックは中国のワシントン条約管理当局と中国のインターネット安全監視局China Internet Information Security Monitoring Bureau(公安省の一セクション)と面会し、これらの問題について申し入れをおこなった。2008年1月11日に、このグループで主要なウエブサイト会社(Taobao、eBay、Tencent)と国家林業局(State Forestry Administration)と税関局(the Customs Bureau)を含む他の関係機関と会い、インターネット上での違法な野生生物取引を一緒に管理していくための道を探った。
レポートはこちらから見ることができます(英語) TRAFFIC BULLETIN Vol.21 No.2 の pp.75-84 「World Without Borders: Wildlife Trade on the Chinese-language Internet」
■詳細に関するお問い合わせ
Joyce Wu, Programme Officer, TRAFFIC East Asia, email: ycjoycew@ms57.hinet.net
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