
新しく開通した鉄道が、チベット高原に生息する野生生物を脅かさないように
WWFとトラフィックが、旅行者向けパンフレットを作成し、チベットでの買い物に気をつけるよう呼びかけた
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【2006年6月30日 ベルギー、ブリュッセル発】
7月1日チベット高原を走る鉄道が開通した。これにより、チベットを訪れる旅行者が増えるものと見込まれている。これにあわせてWWFとトラフィックでは、世界でもっとも広大で、高いところに存在する同高原に対する保全活動を呼びかける試みを始めた。
世界でもっとも高いところに建設された「青蔵鉄道」は中国の中央部からチベット自治区のラサまで1,000キロメートルを超える距離を走る。WWFやトラフィックなどの環境保護団体は、この鉄道の影響で、チベット高原の傷つきやすく、脆弱な生態系が脅かされるのではないかと心配している。
チベット高原は、平均して標高4,000mの高地に位置し、250万平方kmもの広大な面積をほこる。そのため、同高原は珍しい生き物の宝庫となっている。その中には、チルー(チベットアンテロープ)やチベットガゼル、野生のヤク、バーラル(ブルーシープ)、ユキヒョウ、ヒグマ、オグロヅルなどがいる。同高原には、黄河、長江、メコン川、インダス川などアジアを代表する大河の源流も存在する。
「たいへんな高地であるため、ここの生態系はとてももろいのです」とWWF中国のラサ事務所所長を務めるダワ・ツェリングは言う。
「ここの生態系は、いったんダメージを受けると、回復させるのが非常に困難なのです。チベットの生物多様性を保全することと、中国西部地域の開発を両立させることについて、緊急に注意の目を向ける必要があります。」
青蔵鉄道の開通に合わせて、WWFとトラフィックでは、中国政府の協力を得て、鉄道の乗客やチベットへの旅行者に対して、パンフレットを配布した。英語と中国語の二ヵ国語でこのパンフレットは制作されているが、トラやチルー(チベットアンテロープ)のような絶滅の危機に瀕する野生生物に由来する製品を買わないように呼びかけている。
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