
【英国、ケンブリッジ発 2016年7月25日】
オンラインで提供するこのツールキットは、需要削減のための「実践コミュニティ(Community of Practice)」-野生生物製品の消費者の選択を変える利害関係、愛着、関心や義務に関わるすべての事柄の情報源/リソース-として、トラフィックが開発した。このようなツールが開発されたのははじめてである。
このツールキットは、野生生物部門だけではなく、多数の分野からの経験を基に「コミュニティ」のメンバーが消費者の行動を変えるために本当に必要な最新の根拠や見識を共有できる場を提供する。
100を超える研究レポート、研究論文、政策枠組や消費市場の理解など、消費者の行動変革達成への「クリエイティブ・インスピレーション(創造的発想)」につながる情報は、サイト上ですでに閲覧可能である。
オンラインのプラットフォームには、最終的にExpert Roundtables(専門家による会合)、Masterclasses(上級特別クラス)やDiagnostic Clinics(診断クリニック)といったイベントの詳細を組み込む予定であり、さらにメンバー限定のディスカッション・フォーラムやオンラインセミナーとポッドキャスト用の専用領域などを含む対話型要素も盛り込む予定である。
コミュニティのメンバーは、こういった情報源すべてを利用できるようになり、メンバー自身の情報を追加することも奨励されている。つまり、需要削減のためのやりとりにおいて行動変革の原則に作用する努力を後押しし、様々なキャンペーンや取り組みでの協調を向上させ、成功の要因と得られた教訓を反映させていく。
メンバーたちは、今後の取り組みに対するアイデアを共有することに、このサイトを利用することもでき、特定の問題について意見を求めると、リストに記載された外部の専門家たちから専門的なアドバイスが得られる。
需要削減のための「実践コミュニティ」は、現在の急速な開発と重要な保全分野で活動することに関心を持つ人なら誰でも利用できる。これは2016年3月に香港で開催された"Changing Behaviour to Reduce Demand for Illegal Wildlife Products(違法な野生生物製品に対する需要削減への行動変革)"での革新的なワークショップでツールキットの試作版が紹介されたことに続き創設された。
このワークショップの議事録もこの日に発行され、イベントと専門家のインタビュー映像を通じて紹介された。
「行動科学は興味深い分野であり、公衆衛生、持続可能なライフスタイル、国際開発のような領域への適用から得た優れた知見が集まっている。このツールキットは、その知見から最良の要素を寄せ集め、実質的かつ迅速な保全効果を及ぼす需要削減のための介入に関心のある人々を支援することを目指している」と、トラフィックの消費者行動変革コーディネーター、ゲイル・バーゲス(Gayle Burgess)は述べた。
「このツールキットの持つ可能性が、消費者の姿勢に変化をもたらすための取り組みをおこなう人々の助けになると期待しており、集合的な保全効果と成功を確信している。これは、ベトナムにおける野生生物消費行動に対する健全かつ、現代企業の社会的責任(corporate social responsibility :CSR)であるゼロトレランスに影響を与える手段になり得る」と、ベトナム商工会議所(VCCI)中小企業振興センター次長Le Thi Thu Thuy氏は述べた。
「このウェブサイトは画期的なプラットフォームであり、絶滅危惧の野生動物やその派生製品の需要削減を中心とした知識、事例、取り組み、コミュニケーションやその他の資源を統合する狙いがある。これによって、野生生物保護に関わるステークホルダー(利害関係者)に包括的対策案を提供する。より多くの企業や個人が環境保全について社会の意識を高めることや、世間の持続不可能な消費行動を変えることにこのサイトが活用できることを願っている」と、WildAidの中国プログラムで種に関するプログラムマネージャーZhang Wenting,氏は語った。
需要削減のための「実践コミュニティ」への参加は、ウェブサイトwww.changewildlifeconsumers.orgを参照するか、gayle.burgess@traffic.org へメールで問い合わせ。
需要削減を掲げる一連の団体から成る「ステアリング・グループ(Steering Group」は、ツールキットの今後の強化を支援し導く目的で立ち上げられる。これは、「コミュニティ」全体のニーズに対応するため確実にプラットフォームを最適化させる助力となる。
ツールキットおよび香港でのワークショップ"違法な野生生物製品の需要削減への行動変革"は、国際自然保護連合(IUCN)、トラフィック主導の「野生生物の不正取引に関する分析と対応措置の優先順位設定(TRAPS)」プロジェクト、ドイツ経済協力開発省(BMZ)ならびにドイツ環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)を代表するドイツ国際協力公社(GIZ)および英国環境食糧農林省(Defra)を通じ、米国国際開発庁(USAID)からの惜しみない支援を得ており、さらに世界銀行およびパートナー団体であるWWFの支援も受けている。
関連ニュース
【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-
2017年09月25日
2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。
©トラフィック
国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に
2017年08月30日
2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。
©Martin Harvey / WWF
【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-
2017年08月23日
2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。
© Michel Terrettaz / WWF
2017年08月08日
2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。
©Martin Harvey / WWF
関連出版物
Wildlife Cybercrime in China:E-commerce and social media monitoring in 2016
発行:TRAFFIC【2017年5月】 著者:Yu Xiao, Jing Guan, Ling Xu【英語】Briefing Paper
RhODIS® (Rhino DNA Index System): Collaborative Action Planning Workshop Proceedings
発行:TRAFFIC【2017年2月13日】 著者:Ross McEwing, Nick Ahlers【英語】30pp