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【開催報告】地球の薬箱を救え! 企業が取り組めるアジアの薬用・アロマティック植物保全とは

2012年03月29日
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120323seminar.jpg ©トラフィックイーストアジアジャパン

<持続可能な植物利用の先進事例と企業のアクションプラン検討会>

 トラフィックイーストアジアジャパンは、3月23日、薬用・アロマティック植物に関連する日本企業を対象としたアクションプラン検討会を開催した。それぞれの分野で植物を原料とした製品を扱っている主要な企業関係者が集まり、持続可能な野生植物の利用やフェアワイルドについて情報交換し、今後のアクションプランを討議する場として企画したものである。

 本年2月に、トラフィックは日本の企業とともにインドの野生植物の採集現地を訪問している。今回のアクションプラン検討会では、この現地訪問に参加した企業である2社(株式会社ウチダ和漢薬、株式会社松栄堂)が発表をおこない、インド訪問から得た見識を基に、企業の視点からみた持続可能な植物利用について話題を提供した。

 特に、自社の事業が植物資源に支えられていること、採集現地の人々の野生植物の利用状況をみると栽培化は必ずしも保全のための絶対的な解決策ではないこと、国・州・地域間、あるいは官民間で、関わる人々の連携が重要であること、安定供給という面から持続可能な資源利用が必要であることなど、このテーマに関わる企業としての実感について発表した。

 トラフィックからは、持続可能な野生植物の採集・利用のためのフェアワイルドに関する基礎情報や、世界の最新事例として欧米でフェアワイルドを導入している企業の事例、日本の企業がこの活動に参加するためにはフェアワイルド認証の導入のほか調達方針や行動規範にフェアワイルド基準を採用できる点についても指摘している。

 最後の討論では、今後持続可能な植物の利用を進めるためにどのような課題を解決する必要があるかについて、企業の視点から意見が挙げられた。持続可能な野生植物の利用には異論はないものの、フェアワイルドを導入するにあたってはコスト面での不確実さがあること、数千種にもわたる少量多品種を扱う企業がすべての種のトレーサビリティを確保することの困難さ、対象となる「野生植物」の定義や範囲への疑問、同じ種を複数の企業でフェアワイルドに基づいた調達をおこなう方法、など、さまざまな疑問や意見が挙げられた

 「フェアワイルドは、世界ですでに複数の企業に取り入れられ始めています。これは、社会貢献や生物多様性の保全だけではなく、ビジネスを将来にわたって運営していく上でも意義が認められ始めていることを示しています」とトラフィックイーストアジアジャパンの金成かほるは述べる。

 「今回の討論でさまざまな意見や疑問が出されたことは大変有意義でした。このような企業側から出された意見をもとに、試行錯誤を重ねながら、日本の産業界によるフェアワイルドへの積極的な参加を仰ぎたいと考えています」

 トラフィックは引き続き、野生の薬用・アロマティック植物の持続可能な採集と利用を、採集地、消費地の双方で推進していく。

 本検討会は、経団連自然保護基金のご支援を受け実現しました。

2012年03月29日
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