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【クウェート発 2011年10月】
貴重な沈香を生産・消費している主要18ヵ国から、68人の参加者がクウェート集まり、古くから続く沈香取引の将来について話し合いがおこなわれた。
沈香とは、アクイラリア属Aquilariaおよびギリノプス属Gyrinopsの数種(大きな常緑樹で、北東インドから、東は東南アジアや中国南部にかけた数ヵ国を原産とする)の心材の中で、菌に感染したり木が傷つけられることで作られる濃い色の芳香性のある沈着物の総称である。
沈香は高価な香水、香、伝統的な薬として、アジアから中東地域にかけて何世紀にもわたり利用されてきた。
その貴重な製品は、マレーシアやインドネシアではガハル、中東ではウード、またイーグルウッドやアロエウッドなどさまざまな名前で知られている。
貴重な樹脂沈着部位を得るため、木は通常、切り倒されるが、およそ10%の木しか自然には発生しておらす、その方法はとても非効率的である。
最近発表されたトラフィックのレポートの中では、沈香の需要の伸びや、採取時の管理における問題点、この貴重な香木の未来を脅かす、いまだ続く違法取引について明らかにしている。
![]() 沈香© James Compton/TRAFFIC |
「沈香に危機的状況が差し迫っているこの状況の中、今回のワークショップは時宜を得た開催であった。こうした危機的状況は、アジアにおいてアクイラリア属Aquilariaの木の違法で持続可能でない採取を増やし、中東の文化にかかせないこうした沈香製品の供給を脅かすことになるかもしれない」と、クウェートでの会合に参加したトラフィックサウスイーストアジアのシニアプログラムオフィサーのノレイニー・アワング・アナックは言う。
合法的な国際取引は、ワシントン条約(CITES)の許可制度によって管理されている。しかし、違法で非持続可能な取引が、沈香の継続的な供給をおこなう上で障害となっている。
10月3日~6日にクウェートで開かれた「Workshop on implementation of CITES for agarwood-producing species(沈香を産生する種に対するワシントン条約の施行に関するワークショップ)」は、沈香取引の合法性と持続可能性を確保するためのワシントン条約の規制施行を改善することを目標とした会合であった。
毎年何百 t もの沈香が取引され、その取引には少なくとも18ヵ国が関わっている。老齢樹が過剰採取され、利用可能な沈香の質と量の低下を招いている。
日本、台湾、サウジアラビア、アラブ首長国連邦における人口増加や豊かな消費者市場の過去30年における需要の急上昇を招いている。こうした急上昇によって、野生における沈香資源は減少し、将来の供給への懸念と価格が上昇することとなった。
違法取引の増加も見られている―スター誌でも、マレーシアで活動していた海外のシンジゲートが、沈香を探すために、違法伐採をおこなっていた件について報じられている。彼らは、ブキット・マータジャン(Bukit Mertajam)やブキット・パンコール(Bukit Panchor)の保護林で過去4年間、毎晩多い時で7本もの木を違法伐採していた疑いがもたれている。
マレーシアでみられる、沈香を産出する18の樹種のうち7種が世界的にみても絶滅の危機にある。
クウェート会合の参加者による提言の中には、既存のワシントン条約の「有害でないという判定」のプロセスを通して、取引が「安全なレベル」であるという評価方法を検討することも含まれている。
参加者は、野生の植物原料の持続可能な採取に関するフェアワイルド基準がこうした議論に役立つ可能性があると指摘した。
また参加者は、関税コードの明確化、ナーセリーの登録、プランテーション、沈香の取引業者、法執行担当官のためのより簡単に利用できる識別資料、手回り品として所持できる沈香のレベルと量の決定といった、沈香取引の現在の水準に関するより適正なモニタリングについて提言をおこなった。
「中東の当局が、アジアの主要な取引相手国や中東の当局と直接連動することで、規制と法執行の問題に取り組み、沈香取引の長期的な持続可能性と合法性を確保できるだろう」とアワング・アナックは言う。
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