
![]() 『Slipping Away:International Anguilla eel trade and the role of the Philippines』 |
【フィリピン、2014年11月3日】
トラフィックとロンドン動物学会(Zoological Society of London :ZSL)共同の最新の報告書により、ウナギの稚魚の予防的輸出禁止措置の導入にもかかわらず、国際的に高い需要を満たすため、引き続きフィリピンから大量に持ち出されていることが明らかになった。
ダーウィン・イニシアティブ(英国政府による支援プログラム)の資金援助により実施した最新の調査『Slipping away: International Anguilla eel trade and the role of the Philippines(問われる政策:ウナギの取引とフィリピンの役割)』は、フィリピン漁業水産資源局(Philippine Bureau of Fisheries and Aquatic Resources :BFAR)とフィリピン生物多様性管理局(Philippine Biodiversity Management Bureau :BMB)との協力によりおこなわれた。調査では、フィリピンのウナギ漁獲量や取引量、特に養殖用の稚魚(シラスウナギ)の供給について、国際的なレベルでのフィリピンの役割や重要性について示している。
フィリピン原産のウナギの需要の増加は、近年のシラスウナギの来遊量の減少や、これまでの供給源となっていたヨーロッパおよび東アジアの国々で、減少し続けるウナギの個体数を保護するための様々な漁獲制限や取引規制が導入されたことに伴う。
調査によると、2004年から2013年までの間、フィリピンからの輸出は、ほとんどを生きたウナギが占めており、それらの主な行き先は、生きたウナギの重要な取引中継地となっている香港に加え、4つの主要なウナギの養殖および消費国・地域、すなわち、中国、日本、韓国、台湾であった。2012年と2013年には、東アジア全土のシラスウナギの輸入のおよそ30%がフィリピンからであった。
フィリピンでは、2011年と2012年に、シラスウナギの捕獲および価格が著しく増加したことを受け、2012年5月、BFARにより、15cm未満のウナギの稚魚の輸出を禁止する予防措置が導入された。しかし、税関のデータ、押収事例、インターネット上の広告により、禁止となっているにもかかわらず、フィリピンからの輸出が認められるサイズを下回るウナギの持ち出しが違法に続いていることが明らかになっている。
ウナギ属 Anguilla spp.のウナギには16種 が存在し、温帯および熱帯の水域のいたる所に分布している。稚魚から成魚にいたるまで、様々な成長段階のウナギが世界規模で漁獲・取引されており、現在の需要は、主に東アジアの消費のためとなっている。
![]() シラスウナギを育てることに依存している ©Matthew Gollock/ZSL |
飼育下でのウナギの繁殖は、商業レベルでは成功しておらず、世界中の Anguilla 種のウナギ生産量の90%を占める「ウナギの養殖」は、現在も依然として、野生で捕獲されたシラスウナギを育てることに依存している。
「この報告書は、変化し続けるウナギ取引の動向や、特にヨーロッパウナギ Anguilla anguilla、ニホンウナギAnguilla japonica の利用可能量の減少が、熱帯ウナギの個体数を含め、新たな資源への圧力と利用増加につながっていることを明確に示している」と、トラフィックのビッキー・クルークは言う。
この報告書では、フィリピンおよび、より広範な地域におけるウナギの保全と管理についての見解を示している。その中には、データ収集の改善、モニタリング、法整備と法執行、幅広い利害関係者との協議と協働が含まれる。
「フィリピンの状況は、世界中の需要を満たすための持続可能で合法的なウナギの供給を確保するため、世界的な協力体制の明確な必要性を示している」
ダーウィン・イニシアティブの資金援助により完成した報告書
『Slipping away: International Anguilla eel trade and the role of the Philippines
(問われる政策:ウナギの取引とフィリピンの役割)』
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