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2006年1月3日、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(以下、ワシントン条約)の事務局は、条約決議12.7(第13回ワシントン条約締約国会議で改正)にもとづき、すべての生息国・輸出国がその輸出や漁獲割当が持続可能であるとの情報を提示しするまで2006年の輸出割当を出さないと発表した。また同時に、輸出国と輸入国の両方が、キャビアの取引が合法的で持続可能であることを確保するという、ワシントン条約締約国会議で合意した義務を果たすよう強く主張しています。
野生動植物の取引を監視するトラフィックネットワークは、世界的なキャビアの違法取引が依然として存在することを憂慮しており、以下のような問題指摘と提案をおこなっています。
日本においても不正なキャビアの国際取引を排除するよう要望いたします。トラフィックとしては、輸入大国である我が国がワシントン条約の執行を適切におこない、キャビアの持続可能な取引を図っていくことが重要であり、条約締約国としての責務とも考えています。
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参考資料
キャビアとは
キャビアは粒の大きさによって名称が異なり、それぞれ採取するチョウザメの種類が違う。ベルーガは、オオチョウザメHuso huso の卵でもっとも貴重とされている。オオチョウザメは寿命が100年程で、重量は2 t 以上に達する。またオシェートラは、ロシアチョウザメAcipenser gueldenstaedtii やペルシャチョウザメAcipenser persicus から採取される。さらに、セブルーガはAcipenser stellatusから採取される。 世界のキャビアの約80%はカスピ海産であり、これらが質が良いとされている。その他には、アムール川、ダニューブ川、黒海、アゾフ海などで採取されたものが取引されている。
日本の利用状況
日本は世界有数のキャビア輸入国である。世界におけるキャビアの主な輸入国は、2001、2002年ともに、米国、ドイツ、フランス、日本の順であった。日本の輸入量は、2001年に少なくとも約32 t (世界輸入量の13.9%)、2002年に16 t (11.3%)、2003年15 t (11.8%)であった(図参照)。種としては、ペルシャチョウザメ Acipenser stellatu、ヘラチョウザメPolyodon spathulaが多い。これらは、ほとんどが野生個体から採取されたものであった。
一方、日本の市場での販売価格を調べたところ、セブルーガ10 g 当たり1,400~4,390円、ベルーガ10g当たり1,300~13,300円で販売されていた。
世界の違法な取引
トラフィックの調べでは、1998~2003年のあいだに、EUとスイスに約720 t の違法なキャビアが輸入された。また、2000~2005年にはヨーロッパで約12 t の違法キャビアが押収された。違法キャビアがみつかった国は、ドイツ(2,224 kg)、 スイス (2,067kg)、 オランダ (1,920 kg)、 ポーランド (1,841 kg) 、英国 (1,587 kg) などであった。
CITES事務局によると、キャビアの合法取引額は年間世界で約117億円である。また違法な取引はその5倍(約585億円)にのぼると考えられている。
米国とEUの規制状況
米国は、ベル-ガの世界取引量の約5分の3を輸入していた。しかし、2005年9月にはカスピ海地域の、また同年10月には黒海からのベルーガの貨物の輸入を禁止した。米国でベルーガは1ポンド約2000£(10g約9,100円)で売られていた。 また、条約決議に基づいて実施する必要のある、適正な管理のもとにつくられた製品であることを示すラベルをつける制度も導入が遅れているが、EUは2006年3月に新しい規則を制定してキャビア取引のラベルづけを義務化することとなっている。
以上
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