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チョウザメ目に関するワシントン条約決議の実行前進(日本)

2015年09月18日
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上から:©Andrey Nekrasov/WWF-Canon
©トラフィック

【日本発 2015年9月18日】

 2015年9月18日以降、輸出向けの日本のチョウザメ養殖場、加工場および再包装工場は水産庁の定める制度にもとづき登録を受け、輸出向けキャビアには、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の決議で定められたラベルの貼付が義務となった。トラフィックは、日本でのチョウザメ養殖等施設の登録制度およびキャビアのラベリング制度の開始を歓迎する。

 チョウザメ目(ACIPENSERIFORMES)はチョウザメ科(ACIPENSERIDAE)25種およびヘラチョウザメ科(POLYODONTIDAE)2種に分類される。チョウザメ目は、高価な卵の採取を目的とした過剰漁獲や密漁、ダム建設や水質汚染などの影響による生息域や産卵場所の減少等が原因で、20世紀に入って資源量が急減した。1998年以降、全種がワシントン条約附属書ⅠまたはⅡに掲載されており、野生のものか養殖のものかにかかわらず、チョウザメの国際取引には輸出国政府の発行する輸出許可書が必要となっている。

 さらに、2002年の締約国会議で決議12.7(第16回締約国会議で改正)「チョウザメおよびヘラチョウザメの保全と取引」が採択され、キャビアの加工・再包装工場等の施設登録制度の確立や輸出入・国内市場での取引にかかわらず、すべてのキャビア容器に種名、交雑種を識別するためのコード、原産国、採取年、施設の登録コード等の情報の表示を義務付ける国際統一ラベリング・システムの導入等をおこなうこととなった。

 トラフィック イーストアジア ジャパンは日本の関係省庁に対し、国際統一ラベリング・システムを導入し、決議12.7を実行するよう要望してきた。本年6月に経済産業省および水産省から登録制度案が示された際にもパブリックコメントとして、提案を伝え、直接関係省庁との意見交換もおこなった。その結果、一部の要望については受け入れられたが、決議の内容すべて実行されたわけではない(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002174&Mode=2)

 今回、国際統一ラベリングシステムが導入されたことは望ましい。一方、導入されたチョウザメ養殖等施設の登録制度は、チョウザメ養殖をおこなうすべての養殖施設等に対して義務付けられているものではなく、キャビアの輸出・再輸出を行う施設に限られている。さらに、国際統一ラベリング制度についても、決議では国際取引・国内取引にかかわらずすべてのキャビアに適用されることとなっているが、今回の制度では国内向けのものについては、自主的取り組みに任されている。

 海外では、チョウザメの密漁、キャビアの違法取引は現在も、チョウザメにとっての脅威である。WWFとトラフィックが2013年に発表したレポート『Illegal Caviar Trade in Bulgaria and Romania(ブルガリアとルーマニアでのキャビアの違法取引)』では、両国でチョウザメの漁獲が禁漁となっているにもかかわらず、チョウザメが密漁され、違法な野生キャビアが市場に出回っていること、ラベリングと中身の種に齟齬があることが確認された。

 日本はキャビアの主要な輸入国として違法なキャビアの輸入を防ぐとともに、今回導入された制度の実行にあたって、日本の養殖場や加工場で違法なチョウザメやキャビアが使われることのないよう細心の注意を払う必要がある。

 「日本でキャビアのラベリングシステム導入に至ったことはとても喜ばしいことである。しかし、チョウザメの養殖が日本各地でおこなわれていることから、より多くの養殖場に登録を促し、養殖やラベリング制度の運用をモニタリングしながら、必要に応じて積極的に制度を見直していくべきである」と、トラフィックのプログラムオフィサー白石広美は述べた。


【参考資料】
●チョウザメ・キャビアの違法漁獲・違法取引に関する報告書
『Illegal Caviar Trade in Bulgaria and Romania:Results of a Market Survey on Trade in Caviar from Sturgeons(ACIPENSERIDAE)(ブルガリアとルーマニアでのキャビアの違法取引:チョウザメ科のキャビア取引に関する市場調査結果)』
英語版
日本語版

チョウザメ目の保全と日本の役割(トラフィック報告書抜粋)

キャビア国際統一ラべリング義務化(2006年発行トラフィック・ファクトシート)

2015年09月18日
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