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野生生物取引に関する世界的な会議 堅い決意をもって終了

2013年03月26日
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【タイ、バンコク発 2013年3月14日】

 野生動植物の取引規制について各国政府が話し合う2週間が終了した。違法な野生生物取引を撲滅するため、また、貴重な種が生息する地域で、持続可能な取引の未来を保証するための世界的な取組みにおいて、いくつか大きく前進をした。

 「集まった各国政府が、脆弱な地域と貴重な木材やサメ類について、ワシントン条約の管理の範囲を広げるために、期待されていた行動をとった2週間であった」と、トラフィックの事務局長スティーブン・ブロードは言う。「また、ワシントン条約によって、取引が禁止されている希少な種の市場や違法取引を根絶するための取組みを支持する行動や、報告義務について重大な合意を得た」

 サメ類の取引規制を取り込むための3つの提案-ヨゴレ Carcharhinus longimanus 、3種のシュモクザメ Sphyrna lewiniSphyrna mokarranSphyrna zygaena と、ニシネズミザメ Lamna nasus -と、オニイトマキエイ属、 Manta spp.に関する提案が、緊迫した話し合いの後、締約国会議によってすべて承認された。これらの種はすべて、合法的で持続可能な利用であることを明らかにした、正式な許可書なしには国際的な商業取引ができない附属書 Ⅱ に掲載された。

 「サメ類の掲載は温かく迎えられたが、これはほろ苦い勝利である。サメ類の個体数はすでに、このような対策が必要になる程、低いレベルに落ちてしまっている」と、トラフィックの海洋プログラムのリーダー、グレン・サントは言う。

 木材種についても、附属書 Ⅱ への掲載を通して国際的な取引管理をより強化するために、商業的に利用されている熱帯広葉樹の多くの種が、ワシントン条約で注目されていた。掲載された種は、マダガスカルに生息しているカキノキ属 Diospyros spp.、ローズウッド(ボアドローズ) Aniba rosaeodora 、シタン(ホンシタン) Dalbergia cochinchinensis と、中央アメリカとマダガスカルに生息しているツルサイカチ属 Dalbergia spp.が含まれている。

 多くの種が、バイオリンやギターといった楽器製造、また、家具やチェスの駒など装飾品に使われている。これらの種は、成長が遅く、その多くが森林破壊の進んでいる問題の地域や保護区内で伐採された違法な取引により、壊滅的な状態にある。

 「今回の会議は、木材種の現状に真に応える結果となった」と、トラフィックの東・南アフリカのダイレクターであるデイビッド・ニュートンは言う。

 ゾウやサイ、トラといったワシントン条約の下、取引が禁止されている象徴的な種についての保全対策でも進展が見られた。

 サイについて:密猟の危機の中心である2カ国-モザンビークとベトナム-が、現状を善処するために取っている対策を明らかにするように、ワシントン条約から指示を受けた。重要な進展とは、各国が、犀角に対する需要を抑えるための政策を実施するよう決まったことである。

 「絶滅のおそれのある種に対する消費削減を実施するための提案が、ワシントン条約で歓迎されるのは、はじめてのことである」と、トラフィックのアドボカシーダイレクター、サブリ・ザインは言う。「密猟と密売を食い止めるための法執行対策は、違法な製品の消費を減少させるための補完対策なしには成り立たないであろう」。

 さらにワシントン条約は、アジアのネコ科の動物の密猟事件と違法取引における情報収集と、関連する法執行機関と生息国に提供するために情報を精査すること、を含むトラの保護対策の改善を承認した。

 先週、トラフィックはWWFとの共著である報告書「Reduced to Skin and Bones Revisiteda(皮革と骨の利用における再考)」を発表した。トラの生息国13カ国のうち12カ国で、トラの部位が押収されたことについて分析した内容である。

 「トラフィックは、ワシントン条約の執行と施行の再検討において、わたしたちの持っているトラの押収と市場の情報に関する革新的で詳細な分析を提供することを約束する」と、ブロードは言う。

 ゾウについては、象牙管理を改善することになりそうな、いくつかの対策が合意された。それらは、政府が保管する象牙の在庫を年間ベースですべて報告することの義務化を含む。それには、500kgを超えるすべての象牙の押収については、科学的捜査がおこなわれ、原産国を特定することや、捕獲された生きたゾウの違法取引を防ぐための対策を取っている国々が、それを報告することなども含まれる。さらに、国際的な違法象牙取引に大きく関与している8カ国―最終消費国として中国、タイ、中継地となっているマレーシア、フィリピン、ベトナム、そして原産国でありアフリカの流出口となっているケニア、タンザニア、ウガンダ―が、トレードチェーンの間の象牙の違法な流れに対処するための行動計画を構築することに同意した。

 「野生生物犯罪の国際的な懸念は、過去最悪のレベルに達している」とブロードは言う。

 「今日終了した会議は、野生生物犯罪が重大な犯罪のひとつであることを国際的な認識の増大によって明確に喚起した。次にわたしたちは、こうした肯定的な言葉が、違法取引や持続可能ではない取引を根絶するための現実的で緊急的な活動に繋がることを期待している」

第16回ワシントン条約締約国会議
附属書改正提案に関する結果一覧

会議関連情報
トラフィックイーストアジアジャパン
ワシントン条約事務局

2013年03月26日
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