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ワシントン条約 厳しさを見せるが、効果を出せるか?

2012年09月05日
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【スイス、ジュネーブ発 2012年7月27日】

 1週間におよぶワシントン条約常設委員会の会合が27日、閉幕した。委員会は、ワシントン条約と締約国会議全体とを統治している。

 得られた決定は、蔓延している密猟と違法取引に関する対策の失敗について責任を問われている各国に、圧力を与えているが、制裁や懲罰的な方策の合意はなかった。

 アフリカの国々は、取引において違法な象牙の主な源であると認識されている。さらにアジア、中継地である東アフリカの国々、最大の違法な象牙消費市場がある2カ国-中国とタイ-は、今年の終わりまでに、不正取引の取り組みに関して進捗を報告書にまとめるように、常設委員会からの通告を受けた。

 そうしなければ、関係国において、最終的にワシントン条約掲載種のすべての取引を一時停止するような結果となるが、ワシントン条約締約国は、そのような措置を避け続けてきた。

 たとえばタイは、すでにそのような報告書を提示することを要求されていて、今回の会合で示したが、WWFとトラフィックは、その報告書が漠然としていて曖昧だと判断した。そして、他の関係者とともに、タイの市場において、合法的と見せかけて違法出所の象牙が出回ってしまう抜け穴をふさぐために必要な法改正の具体的なスケジュールを要求した。

 「ゾウの密輸と象牙の違法取引がかつてない状況に達しているいま、本格的なゾウの危機を防ぐための国際的なツールとしてワシントン条約の取引一時停止措置を利用することについて、遠慮するべきではない」と会合に提出した、ゾウの状況についての報告書の共著者であるトム・ミリケンは言う。

 報告書は、中部アフリカのゾウの個体数の23%に上る数が毎年捕殺されていると強調した。これは、ワシントン条約の会合の期間中にチャドで起きた、30頭以上のゾウの虐殺によって、さらに証拠づけられた。それと同時に中部アフリカの政府は、地域の密猟と違法取引に対抗するために、この会合で新しい計画を啓示した。

 「新しい中部アフリカの計画はあたたかく迎えられたが、計画が迅速に遂行されることが重要である。この地域のゾウに残された時間は少ない」とWWFの野生生物取引の専門家であるコールマン・オクリオダンは言う。

 会期中のサイドイベントでは、ワシントン条約締約国に代わってトラフィックによって管理されているETIS(ゾウ取引情報システム)のオンライン版が、紹介された。この新しい、インターネットを土台としたシステムは、データ収集と分析をより改善させた機能を提供している。今年の終わりには正式に発表されるだろう。

 違法な犀角の需要が上昇している中心の国-ベトナム-は、犀角の需要を抑制させる過程を報告するように、同じように指示されており、9月3日までに報告しなければならない。特にベトナムは、犀角の違法な輸入と取引を防ぐために実行させる手段は何か、どのような闇市場が国内で標的になっているのか、どのようにして犀角の利用を阻止することを達成させるのか、を説明する必要がある。

 「ベトナムは犀角の不正取引の主要な推進力となっていることから、角の需要を抑制することや、国内取引管理の実施とアフリカのサイの密猟への終止符を助けるといった、国際義務を負っている」と、トラフィックのサイの専門家トム・ミリケンは言う。

 常設委員会は、ワシントン条約のサイの作業部会に犀角の需要を減らすために必要とされる活動を推し進めるよう指示した。また、当委員会は、去年の11月にトラフィックとWWFによって開催された専門家会議の結果を考慮しながら、トラやその他の絶滅のおそれのある野生生物種の消費需要を減少させるための戦略を立てることが責務であった。

 トラに関しては、2010年11月、サンクトペテルブルクで協定したグローバルトラ回復プログラム(Global Tiger Recovery Programme) に注目が当たっていが、多くのトラの生息国の状況は、適正に報告されなかった。

 「いまだに野生のトラが生息している幸運な何カ国にとって、トラをどのように保護しているのかを他国に知らせることが、十分な動機にならないのは、残念なことである」と、オクリオダンは言う。 

 トラの部分の違法取引も、トラ製品の需要を減らすための活動においてトラフィックが注目している課題である。中国は、トラの部分の取引禁止の責任を再確認したとはいえ、現存するトラ牧場を徐々に減らすことについての声明を固められなかった。

 この話題の数年後、ソロモン諸島は、生きたイルカ類の持続可能ではない取引の禁止を、ついに発表した。その発表は、諸島から野生の鳥を取引する際に、ワシントン条約の規制を避けるため"飼育繁殖"と主張した個体を、トラフィックが摘発した直後で、話題になった。

 最後に、公海上で捕えられる種に対するワシントン条約の取り組みがどのようになっているか、という重要な突破口が、議論の最中である。いわゆる「海からの持ち込み」が実際に行われていることから、定期的に取り締まり当局が関与すべきである、という議論は20年近くもおこなわれてきた。現在、一部では懸念が表されているが、次回2013年3月にタイのバンコクで開催される第16回ワシントン条約締約国会議で承認されるであろう同意文書が出来あがっている。

◆関連記事(英語)◆

ゾウの状況についての報告書について

ETISのオンライン版について

トラフィックとWWFによって開催された専門家会議について

「飼育繁殖」と主張して横行する不正取引について

「海からの持ち込み」について


「ETIS(ゾウ取引情報システム)の最新報告書(2011年9月20日)の日本語版がダウンロードできます」

2012年09月05日
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