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専門家、サイの国際的なDNA検査を強化することに合意(南アフリカ共和国)

2017年04月06日
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 犀角(サイの角)は、薬用利用やステータスシンボルとしての人気から、需要と価格が高騰し、密猟が後をたたない。2008年以降密猟数は上昇し、2013年以降は南アフリカで毎年1,000頭を超えるサイが犠牲になっている。南アフリカ政府は2009年2月より犀角について国内取引のモラトリアム(一時停止/一定期間の停止)を発効した。

 そんな中、南アフリカの一部の農場主が犀角の国内取引解禁(モラトリアムの無効化)の申し立てをした。裁判所はこの要求を認める判断を下したため、懸念を示す南アフリカ政府は、再審を求めていた。今回(2017年4月5日)、これら政府の訴えが憲法裁判所 (最高裁判所より拘束力があり最終的決定権を持つ)にて棄却されたため、農場主の要求が認められた形となり審議の終了が確定したことになる。

 南アフリカ政府は国内のサイの密猟頭数が依然として高いことを2月に発表している。

 裁判所の決定により犀角の国内取引に関するモラトリアムは無効となったが、政府は、国内取引は依然として規制の下行われること、また国際取引はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引関する条約:CITES)の規定により原則禁止であることを強調している。

 トラフィックでは、南アフリカにおける犀角の密猟対策の一環である科学捜査の一助となるDNA分析の調査をサポートしている。今回は、昨年開催した調査の概要を紹介したワークショップの報告書を紹介する。今後も継続して調査や科学捜査へのサポートをおこなっていく。

【2017年2月13日リリース:ワークショップ報告書】
「RhODIS®」のワークショップの全概要、調査結果および提言
報告書 『RhODIS®(Rhino DNA Index System) Collaborative Action Planning Workshop Proceedings(サイのDNA解析システムに関する共同ワークショップの議事録)』

専門家がクルーガー国立公園内のサイ密猟現場を訪問
© Dr Cindy Harper

【南アフリカ共和国、プレトリア発:2016年6月開催ワークショップ】
 南アフリカ共和国のクルーガー国立公園とプレトリア大学獣医遺伝学研究所(Veterinary Genetics Lab :VGL)でおこなわれた「RhODIS®」-サイのDNAに関する科学的ワークショップ-で、犀角(サイの角)のDNAテストが国際的に拡大されることが発表された。

 RhODISは、VGLが開発したサイのDNA分析およびデータベース・システムである。これまでのところ、1カ国を除くアフリカのサイ生息国全てが、VGLに対し RhODISの分析にサンプルを提供している。

 米国国際開発庁(USAID)の支援によるこのワークショップで、野生生物TRAPS(Trafficking, Response, Assessment and Priority Setting:不正取引に関する分析と対応措置の優先順位設定)プロジェクト、およびWWFアフリカ・サイ保護プログラムを介し、犀角の原産国、中継国および消費国から野生生物のDNA科学捜査官、警察官ならびに調査官が結集することとなった。南アフリカの警察各署は、同国環境省(DEA)の代表として出席した。

 アフリカでサイの密猟が急増し始めた2008年以降、アフリカ大陸でのサイの密猟は5,000頭を超えている。「密猟の背後にある多国籍の組織犯罪集団の影響が、サイの主要生息国全土に拡大している。過去20年以上に及ぶサイの保護で成し遂げた成功を台無しにしている。密猟の増加レベルを抑えることができなければ、アフリカとサイの両者を危機に追い込むことになる」とIUCN(国際自然保護連合) 種の保存委員会(SSC)アフリカ・サイ専門家グループのRichard Emslie博士は述べた。

 VGL、トラフィック、WWFおよびTRACE(Tools and Resources for Applied Conservation and Enforcement:保全と執行に適用可能なツール)野生生物法医学ネットワーク主導のワークショップでは、科学捜査官と警察官がクルーガー国立公園のサイ密猟現場に赴き、殺害され無残に斧で角を切り落とされた2頭のサイと遭遇した。この国立公園は、密猟で1日に2頭あまりのサイを失っており、クロサイ、シロサイ両種の個体数が減少しはじめている。

© Simon Robertson

 マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、香港、韓国、南アフリカ、ケニア、ボツワナ、ナミビア、オランダ、英国、オーストラリア、チェコ共和国およびインドが、RhODIS用に開発された特殊な法医学試料キットを使っておこなわれた密猟現場でのDNAサンプルを採集する研修に参加した。

 「この研修で犀角の取引の実態を痛感させられました。また、先日、法執行に協力する意味で、RhODISのDNA検査のために、押収した14の犀角のサンプルを南アフリカ政府へ引き渡したことは正しかったという証明になります」と、マレーシアのNational Wildlife Forensic Laboratory(国立野生生物法医学研究所)のJeffrine Rovie博士は語った。代表団は、データ収集アプリ"eRhODIS"のデモも視聴した。今後、同アプリの多言語版が開発される可能性もある。

 ワークショップの出席者とアフリカのサイ生息国は、統一基準化され、互換性のある法医学的なサイのDNAシステムの開発と利用を世界的に支援している。VGLのディレクターであるCindy Harper博士によれば、今回の会議の大きな成果は、互換性のある解析システムであるRhODISの改良版を世界中の研究所に共有、公開しやすくするため、簡略化された方法の要件を詳しく説明したことだという。これは、DNAプロファイルを国際的なデータベースに蓄積することができ、これが国際基準になる可能性がある。

 「RhODISのシステムは、すでにサイの密猟事件の捜査において実証済みの手段であり、数々の起訴事例に用いられています。サイのDNAの公認された国際法医学的基準の改良と公開が、法執行や国際規模での取引ルートの捜査を積極的に支援するものでなければなりません」RhODISは、回収した犀角からアフリカのサイであることを特定することもすでに可能で、この会議では、アジアの種との識別に利用できる可能性も視野に入れ、RhODISをさらに改良する必要があるとの認識がなされた。

 WWFアフリカ・サイ保護プログラムのリーダーであるジョセフ・オコリ(Joseph Okori)博士は、サイに関する犯罪と闘う上で大きく貢献しているとして、世界的な法医学コミュニティが担う重要な役割について言及した。DNA解析は取引ルートに関する知識を深め、サイの管理に関する他の面でも役立ちつつある。

 「このワークショップのもうひとつの狙いは、犀角の違法取引に関わる主要国から参加している多方面の科学者たちを結び付けることで、それは確実に達成でき、参加したサイの生息国、中継国および消費国から、前向きなフィードバックをもらうことができた」と、トラフィックとIUCNの野生生物TRAPSプロジェクトを取り仕切るニック・アーラース(Nick Ahlers)は述べた。

 「サイの密猟は、この象徴的な種を滅ぼす恐れがあるだけでなく、犯罪、暴力や窃盗によって地域社会を荒廃させています。DNA法医学は、野生生物犯罪と闘う上での欠かせない手段であり、このワークショップでの成果は、野生生物の違法取引にさらされているサイの他、その他の種にも効果が見込めることです」と、USAIDの生物多様性・天然資源専門家であるSara Carlson博士は述べた。

【補足情報】
VGL:プレトリア大学獣医学遺伝研究所:
オンダーステッポート(南アフリカ共和国)にある獣医科学部を基盤としている。この研究所は、DNA分析・解析情報を提供し、アフリカの野生生物の遺伝的特徴や法医学の調査をおこない、様々な研究プロジェクトを支えている。プレトリア大学は南アフリカで第一線の研究大学で、国内最大規模の大学のひとつである。

TRACE(保全と執行に適用可能なツール)野生生物法医学ネットワーク:
英国を拠点とする非営利組織であり、野生生物犯罪の訴追における科学捜査の利用とともに、研修、能力開発、法医学検査開発プロジェクトを通じた野生生物取引のモニタリングを促進するために活動を行っている。

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