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南アフリカのサイ密猟 2014年は最悪を記録

2015年02月03日
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密猟されたクロサイ ©Anti-Poaching Patrol

【南アフリカ発 2015年1月22日】

 南アフリカ政府が発表した公式統計によると、2007年以降増加を続けていたサイの密猟頭数が2014年に最悪となったことが確認された。

 合計で1,215頭ものサイが南アフリカで2014年に密猟された。換算すると一日平均3頭、毎月およそ100頭が犠牲になったことになる。

 この最新の統計は、サイの密猟危機がいかに深刻であるかを物語っている。サイの密猟数は、過去7年の間に毎年増加している。密猟によるこれまでの死亡数からして、今、南アフリカのサイの個体群が減少している可能性が懸念され始めている。過去100年間で初めてのことである。

 増え続ける密猟に対処するため、近年では、現地の保護官の増員や最新の機器の導入といった形での支援が拡大してきた。それにもかかわらず、状況は悪化の一途をたどっている。

 昨年一年の間に、世界中で数々の強力なメッセージが各国政府要人から打ち出されてきた。世界的な密猟危機に対処するための資金や行動を約束するものである。

 一方で、今日のサイ密猟の最前線にある南アフリカは、「ロンドン宣言」に参加しなかったことで注目を集めた。2014年2月に表明されたロンドン宣言は、世界的な密猟危機によって影響を受けている国々が事態に対処するための行動を掲げた国際的な誓約である。

 「欠けているのは、強い政治的意思とリーダーシップだ。南アフリカ政府内のあらゆる関連部門、そして、隣国のモザンビークや主要なアジア諸国におけるこうした意思の欠如が、今日の危機的状況の打開を大きく妨げている」と、トラフィックの東・南アフリカ地域ダイレクターのデイビッド・ニュートンは言う。

 今年3月には、ボツワナのカサネで、ロンドン宣言の誓約に対する進捗を評価するためのフォローアップ会議が開催される。南アフリカにとってこの会議は、同様のコミットメントを示す機会となり得る。

 南アフリカでサイの密猟が増加を続ける理由は複雑であるが、腐敗、組織内部の不和、さらに、主要な起訴案件における司法プロセスの遅れなどの複数の要因が絡み合っていると思われる。

 南アフリカ警察局では、中でも「ホークス(Hawks)」と呼ばれる野生生物犯罪も担当している特捜部において、複数の上官が停職処分を受けたことを発端に組織内部の混乱が拡大している。こうした騒動によって組織的犯罪捜査の遂行が手薄になることは、同時に密猟危機への対処にも十分な労力が回っていないことを意味する。

 南アフリカ最大のサイの個体群を抱えるクルーガー国立公園は、密猟によって特に大きな被害を受けている。2014年には827頭という膨大な数のサイが密猟された。クルーガー国立公園は2万km2の広大な敷地を持ち、一部の境界が隣国のモザンビークとの開けた国境となっている。ここから、密猟シンジケートが、モザンビーク側の当局からは刑罰を受けることなく、また、当人らも逮捕や起訴の恐れがないとの認識を持って、活動を続けている。しかし、問題はこれだけではないとされる。クルーガー国立公園の保護官の数名が昨年逮捕されたが、この容疑が公園内の密猟事件への関与であった。

 一方で、関連した他の事象は、また別の体制的問題を指摘している。サイの密猟グループとその首謀者格の逮捕が大々的に報道されたが、まだ起訴が完全には確定していない。また別のある事件に至っては、4年もの間こうしたプロセスが長引いているものもある。今回容疑のかかっている首謀者については、チェコ共和国において逮捕された16名の密輸グループのメンバーとの関連が先月明らかになっている。同容疑者らは、スポーツハンティングのトロフィーを隠れ蓑にした南アフリカからベトナムへの犀角(サイカク)の密輸への関与の疑いで逮捕されている。

 2014年10月に、米国当局はこの首謀者とその兄弟を、共謀、マネーロンダリング、野生生物犯罪などの複数の罪で起訴しており、現在、容疑者らの米国への引き渡しを求めている。

 2015年は南アフリカのサイにとって危機的な年となる。現在の状況からすると、密猟との戦いは引き続き厳しい戦況となることが見込まれる。多くの賞賛に値する法執行努力がなされている一方で、政府内部の政治的抗争や、さらには南アフリカの力の及ばないところでの国際取引の動向などが、こうした努力を根底から損ねてしまうためだ。

 「もし2014年と同じレベルで密猟が続けば、今後、南アフリカのサイの保護に明るい未来を見出すことはますます難しくなってゆくだろう」と、トラフィックのゾウ・サイプログラムリーダーのトム・ミリケンは言う。

 「我々は絶体絶命の状況に今直面している。必死で取り組む以外、道はない。」


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