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『消えゆくゾウたち-アフリカゾウの危機』和訳完成

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アフリカゾウ密猟は2014年も高水準
『消えゆくゾウたち-アフリカゾウの危機』和訳完成

2015年03月25日
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UNEP作成の報告書 日本語訳版

 3月23日にカサネ(ボツワナ)で開催されたアフリカゾウサミットにおいて、ワシントン条約(CITES)事務局はゾウ違法捕殺監視システム(MIKE)の最新データを発表した。それによると、2014年の密猟レベルは前年に続き高水準を保っていることが明らかになった。2011年の最高値からは減少しているものの、違法捕殺率が自然な出生率を上回る状況は継続しており、個体群の減少が懸念される。

 2013年国連環境計画(UNEP)は、事態の深刻さを踏まえアフリカゾウの緊急アセスメントを実施し報告書を作成している。報告書作成には、国際自然保護連合(IUCN)、ワシントン条約事務局、およびトラフィックが携わり、ゾウの生息状況から取引の傾向、密猟が起きる要因や保護活動の課題にいたるまで、包括的な内容となっている。

 このたびトラフィックイーストアジアジャパンでは、象牙の合法市場をもつ日本国内にも、このアフリカゾウの危機についてデータにもとづいた情報を提供し、消費国としての役割を考える機会を提供するため本書の日本語翻訳版を制作した。

『消えゆくゾウたち-アフリカゾウの危機
(Elephants in the Dust-The African Elephant Crisis)』

 ゾウはかつて象牙目的によって過剰に密猟され個体数が激減したが、1989年に象牙の国際取引が禁止となって以来、一部個体群では保全政策の成果もあり個体数が回復傾向にあった。にもかかわらず、近年アジア諸国の経済成長や、アフリカ諸国の政情不安に伴い、密猟が激増し、再び危機に瀕している。

 アフリカゾウの他、サイも近年、激しい密猟に晒されている。南アフリカ共和国では2014年1年間の密猟数が1,215頭を記録し、2007年(13頭)以降年々増加を辿り、最高の値となった。

 このように深刻化する野生生物の密猟と違法取引に対処するため、2014年2月13日、英国政府主催の「野生生物の違法取引に関するロンドン会議(London Conference)」が開催された。同会議では、違法な野生生物取引によってもたらされる国際的な脅威に対処するため、新たなレベルで政治的機運を高めるべく、各国の政府代表が参加し、25項目に及ぶ「ロンドン宣言(London Declaration)」に41カ国(+EU)が署名した。宣言で合意された措置は、違法な野生生物製品の市場を根絶するための活動や、法執行機関の取り組みを強化し、効果的な法的枠組みと抑止力を確保すること、地域社会の関与を通じて持続可能な暮らしを促進すること、などが盛り込まれた。

 更に、これらの措置を確かなものにするために、2015年のはじめに進捗を報告するハイレベルの会合を開催することが約束され、先立って3月23日に開催されたアフリカゾウサミットに引き続き、3月25日カサネにて、「カサネ会議(Kasane Conference)」がボツワナ政府によって開催された。参加国によりどのような進捗報告がなされ、今後のさらなる取り組みが話し合われるのか、注目が集まる。


【関連記事】
各国政府が世界的な野生生物の密猟に対処する断固とした緊急措置を誓う【英国、ロンドン発 2014年2月13日】

2015年03月25日
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