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電子商取引企業がオンライン上の違法な野生生物取引に対していかなる違反もゆるさないと宣言

2012年07月23日
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120608e-commerce.jpg 電子商取引業者が、違法な野生生物取引に対して
いかなる違反も許さないという宣言に署名 ⓒTRAFFIC

【中国、北京発 2012年6月8日】

 阿里巴巴(Alibaba:アリババ)、淘宝網(Taobao:タオバオ)、騰訊(Tencent:テンセント)といった中国で事業を展開する中国有数の電子商取引業者15社が、違法な野生生物取引に自社のサービスが利用されることに対して、いかなる違反も許さない方針を掲げるとする宣言に署名した。 

 この宣言書では、販売者も購入者も、野生生物製品の取引を管理する中国の「野生動物保護法(Wild Animal Protection Law)」やワシントン条約に関する規制を全面的に遵守しなければならないと書かれている。 

 この宣言は、国家林業局森林警察支局(National Forest Police Bureau of the State Forestry Administration -SFA)がトラフィックと協力して今月初めに開催した、オンラインでの違法な野生生物取引の管理に関するワークショップに続いて発表された。 

 国家林業局森林警察支局、公安部ネットワーク安全保安局、国家林業局野生生物保全部(Wildlife Conservation Department of SFA)、中国のワシントン条約管理当局、電子商取引ウエブサイト、そしてトラフィックから 30人以上が参加した。 

 ワークショップ後に、すべての電子商取引企業の代表者らがオンラインでの違法な野生生物取引を阻止する決意を表すものとして、「いかなるオンライン上の違法な野生生物取引も許さない公約」を読み上げ、署名した。

 

署名された宣言の内容は以下のとおり

 120608e-commerce-2.jpg

簡易訳:『わたしたちは同じ星に住み、健全な環境は私たちや私たちの家族にとってもよいことである。生物多様性を保全し、健全な環境を維持すること は将来の世代にとっても重要だ。しかし人間活動を通じて、違法な取引のために次第に希少な野生生物種が脅かされている。インターネットの急速な発達は、違 法な野生生物取引をバーチャルな世界にも展開させた。絶滅のおそれのある種のオンライン上の違法取引は、中国の「野生動物保護法」および「刑法 (Criminal Law)」に違反しているだけでなくワシントン条約にも違反するこにつながり、自然資源を著しく損ない、生物多様性保全に負のインパクトを与える。さらに は、オークションや関連サイトの通常の合法的な運用の妨げにもなる。今日、我々はトラ、サイ、ゾウの製品のオンライン上での違法取引に対しいかなる違反も 許さない体制を導入すると約束することをここに記す。我々は、絶滅のおそれのある種の違法取引情報を効果的にフィルタリング、スクリーニングし、積極的に こうした情報を法執行機関に通報し、違法な利用者には厳しく対応するなど通じて、関連する法律や規則を厳格に遵守する。是非私たちと一緒に地球の美しい生 き物たちを守ろう。 』

 

 中国における野生生物に関する法執行活動は、野生生物の実体市場への取り締まりを強化してきている。しかし一方でインターネットの人気が高まり、ゾウやサイやトラ、ウミガメといった「注目される」ような動物種の体の部分が違法に販売されるウエブサイトの増加が著しいことからもわかるように、違法な野生生物製品がオンライン上で提供されることもまた増えてきている。 

 2012年4月にトラフィックは、15の中国語の電子商取引サイトや関連のオークションサイトやチャットを通じて提供されていた、トラの骨、象牙、サイの角、ウミガメ製品の3389件の広告をみつけた。 

 中国の野生生物法執行当局は、継続した徹底的な法執行活動を通じて、またオンライン上の違法な野生生物取引の管理に関する機関の間でワークショップを開催することによって、この問題に取り組むために前向きな一歩を踏み出している。 

 今年4月、中国の森林警察(Forest Police)は700件の関連事件を立件し、628のオンラインショップを閉鎖し、野生生物の違法取引に関連する1607件の情報をウエブサイトから削除した。 

 森林警察野生生物犯罪課(Wildlife Crime Division of the National Forest Police)のダイレクターZhang Libao氏はワークショップ中で参加者に対し、違法な野生生物取引のための媒体を提供しているウエブサイトは「野生動物保護法」第22条と「刑法」第341条により罪になると伝えた。 

 国家林業局野生生物保全部の部長であるWang Weisheng氏は参加者に対して「トラの骨、サイの角はどんな形態であれ、その商業取引はすべて1993年から禁止されています。象牙製品をオンラインで取引することも禁止されており、違法となります」と伝えた。 

 また、特にこれら3種類の動物に関連するすべての情報を電子商取引企業がスクリーニングし、違法な野生生物取引の証拠を集めるためにサイトを丹念に調べることを優先的におこない、オンライン上の野生生物犯罪を抑止するために法執行機関と協力することを要請した。 

 公安部ネットワーク安全保安局のWang Huiyuan氏は、どのようにしてオンライン上の違法な野生生物取引がインターネット上の治安を台なしにするかについて言及した。 

 「新しい規則が発効することは、オンライン上での違法な野生生物取引を手助けしているウエブサイトが、自身のオークションについて全面的に責任を持たなければならないことを意味する。」 

 トラフィック中国のシニアプログラムオフィサーの徐 玲(シュー・リン)は、オンライン上の違法な野生生物取引の動向について発表し、それと闘うための主要な障害について分析した。彼女は、ウエブサイト運営会社の代表者らに、オンライン上に証拠を残さず野生生物製品を取引する際に使用されるさまざまな隠語や隠されたメッセージについて話をした。 

 「電子商取引のウエブサイトや、関連するオンライン取引においては、すべての疑わしい情報を削除し、オンラインショップの潜在的な利用者に対し野生生物取引規制について情報を提供するべきである。また違法性や不正が疑われる取引を、サーバー上や当局に通告する方法を一般の人々に提供するために、さらに努力する必要がある」と徐 玲(シュー・リン)は言う。 

 中国の企業間電子商取引サイトとしてもっともよく知られているAlibaba.comは、「野生動物保護法」やワシントン条約に記載されている保護動物(およびその派生物)についての情報を効果的にスクリーニングすることによってオンライン上の違法な野生生物取引へ対抗するため、先導的に活動している。 

 会議中、Alibaba International の代表、Draper Denial氏は、国内や国際的な野生生物保護の法律を広め、実施してきた自社の経験について話をした。特に、阿里巴巴(Alibaba:アリババ)、淘宝網(Taobao:タオバオ)でのオンライン上の違法な野生生物取引を阻止するための販売が禁止された種のリスト公表、スタッフや利用者へ野生生物保全についての知識の普及、キーワードを使った効果的なフィルタリング、オンラインコンテンツの定期的な二重チェック、ボランティアやNGOの支援による報告および迅速な対応システムの確立、などといった方法について話をした。 

 2社の骨董収集ウエブサイトの代表は、自社が関連法や規則を厳格に遵守し、違法な情報を削除する措置をとり、全利用者が環境や生物多様性の問題を真剣に考慮するようアドバイスすると言及した。 

 この最新の会議は、トラフィックやWWFが電子商取引サイトが違法な野生生物製品を販売しないことに責任を持つための長期キャンペーンの一部としておこなわれた。その目的はそうした禁制品の利用や需要も減少させることである。 

 トラフィック中国プログラムの石建 武(ジャンビン・シ)博士によると「トラフィックは、プロバイダーや野生生物法執行当局と協力し、潜在的な購買者や販売者に対しオンライン上の違法な野生生物取引への意識の向上をおこなっている。 

 オンライン上の野生生物取引に関してトラフィックがモニタリングをおこなった結果については、さらなる捜査の進行を目指して関係する野生生物法執行当局と、違法取引を防ぐための戦略を改善するため、電子商取引企業にも伝えた。」

2012年07月23日
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