ホーム野生生物ニュース林産物ニュース>レッドサンダー、厳戒態勢へ

野生生物ニュース

レッドサンダー、厳戒態勢へ

2010年02月12日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

  ネパールで差し押さえられた、レッドサンダー運搬のトラック。インド国外へ高級材を搬送する密輸はますます巧妙になっている。cSamir Sinha / TRAFFIC India
  ネパールで差し押さえられた、レッドサンダー運搬のトラック。インド国外へ高級材を搬送する密輸はますます巧妙になっている。cSamir Sinha / TRAFFIC India

【インド、ニューデリー】

 南インドに生育する高級木材として知られるレッドサンダー(コウキシタン、紅木)の一連の押収が過去48時間の間におこなわれた。密輸業者がインド国外へ高級材を搬送するのがますます巧妙になっているようだ。

 各メディアが報じたところによると2009年12月22日に、もっとも北に位置するジャム・カシミール州のレーにおいて、中国に向かう途中の50 t以上のレッドサンダーが差し押さえられた。ひとりが逮捕されたほか、さらなる逮捕者が見込まれる。

 さらなる報告によれば、11 t 近くの高級木材がパンジャブ州で押収され、その後の追跡調査により、ここ数日の間にさらにデリーからの26 t ものレッドサンダーが差し押さえられている。同捜査では約5 t のクダサンゴも発見され、これまで5人の逮捕者を出している。一方、12月22日にミャンマーと中国の国境付近にある北東部のナガランド州ディマプルでは、森林局(Forest Department)職員がトラック1台分の高級木材を押収している。

 
   

 トラフィックインドの事務局長であるサミール・シンハは「一連の押収事件は、レッドサンダーの密輸は大規模におこなわれており、高度に組織化された国際的な密輸業をおこなっている証拠である」と述べている。

 レッドサンダー(コウキシタン、紅木) Pterocarpus santalinus はインドの東ガーツ山脈南部の、主にアンドラプラデシュ州の固有種である。

 現在ではレッドサンダルウッドとしても知られている。薬や家具、彫刻を作るため、中国と日本での需要が大きく、家具や彫刻、あるいは薬などとして用いられる。インドでは染料としても使用される。

 トラフィックの事前調査では、希少木材の家具への利用がレッドサンダーの密輸を推し進める最大の動因となる一方、その端材が家具業界から伝統薬市場へ流れ、販売されている。

 しかしこの樹種は過剰に利用され、その輸出はインドの対外貿易政策(Foreign Trade Policy)により、特別な場合を除き、禁止されている。レッドサンダーは、アンドラプラデシュ森林法1967 (Andhra Pradesh Forest Act, 1967)の「レッドサンダーおよびサンダルウッドの輸送規則(Red Sanders and Sandalwood Transit Rules)」の下で保護され、レッドサンダー Pterocarpus santalinus としてワシントン条約の附属書II に掲載されることで国際取引が規制されている。

 最新の年次報告書によると、インドの歳入情報局(Directorate of Revenue Intelligence = DRI)は2008年から2009年の間で、15件のレッドサンダーの押収をおこなった。これは2005年以降続いた年間20件強の押収件数を若干下回る。2005年から2006年の間には、最高記録の計466m3 の丸太の押収があった。

 密輸の試みが発見される場合、それはしばしば積荷中の木材の隠ぺいや申告の不備を伴っており、麻袋から酸化亜鉛、固形のマスタードオイルや塩などありとあらゆる物として申告される。

 丸太は、インドからネパールを経由して中国へ向かう陸路でしばしば差し止められている。

 2006年以来、おおよそ1,000 t ものレッドサンダーがインド中の税関各所やインドとネパール間を含む国境の検問所で回収されている。同じ期間にネパールでは、400 t ものレッドサンダーが押収されており、ほとんどが中国へ向けてであった。

  トラフィックの事前の調査から、レッドサンダーの端材が家具業界から中国の伝統薬市場へと流れている事が示唆されている。cJames Compton / TRAFFIC
  トラフィックの事前の調査から、レッドサンダーの端材が家具業界から中国の伝統薬市場へと流れている事が示唆されている。cJames Compton / TRAFFIC

 しかし、ほかの密輸用陸路も明らかにされつつある。2009年10月にはインド北西部のアイザウルにほど近い地域で、DRIの職員が約2000本の丸太の委託貨物を差し押さえている。これはインドから直接中国へ向かう途中だったと考えられている。6人の中国人が現行犯逮捕された。

 メディアによれば、インド北東部の他の場所では、2009年8月よりマニプール州とミゾラム州で少なくとも100 tのレッドサンダーが押収され、600 tがドゥブリとバードワンを経由中に森林局により押収されている。

 DRIの報告によると、2008年から2009年にレッドサンダーを積載したコンテナをドバイに向かうルートでDRIが摘発したケースが5件あり、2件がそれぞれアラブ首長国連邦とマレーシア行きであった。しかし最近の押収では、インド国外への船での木材の密輸はより巧妙となりつつあることがわかる。

 2009年11月、チェンナイ港にて2人の通関職員が32 tのレッドサンダーの丸太の密輸に関与したとして逮捕されている。逮捕された職員らは何も知らない出入りの輸出業者の名を使い、船積みに必要な書類を複製し、関係しているすべての税関職員の署名を揃えていたと供述している。さらに彼らはスタンプ印を偽造し、税関で使う時限錠(訳注:時間が来るまで開かない鍵)でさえ複製し、信頼性を確保するため貨物を封印していた。そして貨物は職員によって審査を通過し船に積み込まれ、税関のチェックなしで通関した。2009年12月、DRI職員がドバイに向かう貨物を呼び戻し、9 tに及ぶ339本のレッドサンダーの丸太を発見し、同様の委託貨物の一部が明らかになった。

 「レッドサンダーをめぐる違法取引の特質や規模がいくらか変わってきている」とシンハは言及する。

 「例えば、丸太は様々な陸上ルートをたどり、中東へ向け船で輸送される。ただしそこに市場があるのか、それともただの中継地でしかないのかは今の段階では定かではない。」
「DRIのこれまでの密輸のルートや、テクニックの解明への努力は称賛に価するものである。しかし我々はインド国内での密輸防止と共に、中国や日本やそのほかの地域でのレッドサンダーに対する需要の誘因となっているものをコントロールするために、なにができるかもっと調べることが急務である。」

 インド政府の環境・森林省のニューデリーにある野生生物犯罪管理局(Wildlife Crime Control Bureau)は「レッドサンダーに関する法執行担当者マニュアル(Enforcer's manual on Red Sanders)」を発行した。


2010年02月12日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

20170715c.jpg

香港で史上最大級7.2tの密輸象牙を押収

2017年07月18日

2017年7月4日、香港税関は葵涌(クワイチョン)でコンテナに隠された7.2tの密輸象牙を押収した。年に2万頭を超えるアフリカゾウが密猟されている中で起きた今回の摘発は、過去30年で最大級の規模と見られており、象牙の違法取引をめぐる国際的な組織犯罪の深刻さを物語っている。こうした一連の野生生物の違法取引に問題に対し、各国政府は今、強く連携した取り組みを進めようとしている。合法的な象牙の国内市場を持つ日本にも、この流れに参加する積極的な姿勢と取り組みが強く求められている。

©Keiko Tsunoda

170710_elephant.jpg

楽天がオンライン店舗での象牙製品販売を停止

2017年07月10日

楽天株式会社が楽天市場での象牙製品の販売行為を今後認めないことが明らかになった。現在、日本国内で合法的に販売されている象牙製品は、近年のアフリカゾウの密猟とは因果関係がないとされている。しかし、トラフィックの新たな調査でも、急成長を続けるeコマースを通じた象牙取引については、法律の整備が追いつかず、対応しきれない状況が続いていることが明らかになっており、トラフィックとWWFジャパンも厳しい措置を求めていた。日本のe-コマース企業の判断としては、大規模な今回の楽天の決定が、他企業にもより厳しい対応を迫るものとなることが期待される。

©Steve Morello / WWF

関連出版物

Timber-trade-East-Southern-Africa201702.jpg

Overview of the Tmber Trade in East and Southern Africa: National Perspectives and Regional Trade Linkages

発行:TRAFFIC【2017年2月】 著者:Kahana Lukumbuzya and Cassian Sianga【英語】79pp

16_Timber_Island_Madagascar-1.jpg

TIMBER ISLAND The Rosewood and Ebony Trade of Madagascar

発行:TRAFFIC【2016年11月】 著者:Cynthia Ratsimbazafy, David J. Newton and Stéphane Ringuet【英語】144pp

pagetop