
ホーム>野生生物ニュース>ワシントン条約・法律ニュース>日本固有種のワシントン条約掲載提案 初の取り組み
![]() ⓒトラフィックイーストアジアジャパン |
日本の南西諸島には、世界でもそこにしか生息しない様々な固有の生き物が生息している。野生動植物の取引のモニタリングや調査をおこなうトラフィックは、2011年12月から2012年3月にかけて中国における南西諸島に固有の爬虫類5種の市場調査をおこなった。その結果、香港の市場などで、調査対象とした5種のうち4種の販売を確認したほか、中国語のオンライン販売でも3種の取引がみられた。中には、日本産、野生から捕獲された個体などとうたっているものも見られた。本調査で中国での販売が確認された種のうちの一つが、リュウキュウヤマガメ Geoemyda japonica であった。
販売が確認された種は、天然記念物として捕獲や移動が禁止され、日本国内では手厚く保護されている種である。にもかかわらず、こうして日本固有種が海外で販売されている現状を鑑み、トラフィックは調査結果をまとめ、ワシントン条約への掲載の検討を含めて日本の固有種の保全や取引の管理を強化するよう、提言をまとめた。
報告書:『 Trade in Japanese Endemic Reptiles in China and Recommendations for Species Conservation (英語)』
環境省は上記の調査結果を受けて、2013年3月におこなわれる第16回ワシントン条約締約国会議(CITES COP16)でリュウキュウヤマガメをあらたに附属書に掲載することを検討課題とする提案書を提出した。この提案は、日本が1980年にワシントン条約の締約国になって以来、初めて日本が提出するアップリスト提案*となる。この会議で検討の議題に挙げられ、3分の2の賛成があれば附属書掲載が決定する。
ワシントン条約へのアップリスト提案は、日本が生物多様性保全に向けて一歩前向きに動き出したということを表している。3種類ある附属書のどれに掲載するともっとも効果的か、掲載のための基準を満たすかどうか、などについてはさらなる分析が必要であるが、トラフィックイーストアジアジャパンは、この積極的な動きを歓迎する。
*今まで掲載されていなかった種の附属書への新規掲載や、附属書IIIからII、IIからIなど、より監視や規制が強化される方向への附属書掲載提案のこと。
関連ニュース
【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-
2017年09月25日
2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。
©トラフィック
国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に
2017年08月30日
2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。
©Martin Harvey / WWF
【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-
2017年08月23日
2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。
© Michel Terrettaz / WWF
2017年08月08日
2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。
©Martin Harvey / WWF
関連出版物
発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper
Closing Strategy:Ending Ivory Trade in Hong Kong
発行: TRAFFIC【2017年4月】 著者: Lau, W., Xu, L., Guan, J. and Xiao, Y【英語】48PP
最新野生生物ニュース
2018年02月09日
香港政府が象牙取引終了を決意 実現に向けた法案が可決
2018年02月01日
象牙密輸関与の疑いで国内の販売業者が逮捕
2018年01月31日
2017年、南アフリカのサイの密猟は減少するも、1,000頭が犠牲に