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タイで1.4 t の象牙が押収

2010年05月12日
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100422ivory-seizure-c-Royal-Thai-Customs.jpgスワンナプーム空港で押収された296本の象牙を職員が検査している様子© Royal Thai Customs

【タイ、バンコク発 2010年4月22日】

4月17日にバンコクのスワンナプーム国際空港で税関職員が約1.4 t の象牙を押収したと、タイ当局が21日に公表した。

 内部情報に従って、税関職員が296本、重さにすると合わせて1,390kgのアフリカゾウの象牙を発見した。これらは、カタールからの航空便に載せられた3つの木箱に入っていた。貨物は「printing metal」とラベル付けされ、バンコクに拠点を置くタイの企業へ向けたものだった。

 これは、アフリカから中東を経由して違法に輸送された象牙とタイに関連した一連の大規模な象牙の押収事件の中でももっとも新しい事件である。2月にはスワンナプーム空港の税関職員が推定2 t になる239本のアフリカゾウの牙を押収し、タイでの史上最大の押収事件として報告があった。この象牙はナイロビでエミレーツ航空機によって運ばれドバイに到着し、見たところラオス行きだったようだ。それに先立ち、2009年8月にも、空港の職員が、ウガンダやケニアから来た積荷の中から重さ2 t になる象牙316個を押収したことが報告されている。

 「またひとつの象牙の大規模な違法積荷の発見は、タイの法執行官たちの熱心な法執行活動や警戒がおこなわれている証明であるとともに、タイが違法な象牙取引の中心地としての役割を担っていることを示唆している」とトラフィックサウスイーストアジアの William Schaedla博士は言う。

 トラフィックがワシントン条約締約国の代わりに情報のとりまとめをおこなっているゾウ取引情報システム(ETIS)の最新の報告が2009年11月に発表された。その報告書では、ナイジェリアやコンゴ民主共和国とともに、タイを違法な象牙取引にもっとも関与が深い3ヵ国のうちのひとつとして特定し、アジアの中ではもっとも懸念される国としてあげた。

 近年タイの当局は違法な象牙取引を制圧するために行動を起こしている。昨年の8月には、タイ政府は、象牙の取引業者に対して彼らの在庫の一覧をきちんと更新し、当局が必要とする際にこの一覧が利用できるようにすることを義務づける法案を提出した。

 政府はまた、Wildlife Animal Reservation and Protection Act (WARPA 1992)の見直しをおこなっている。この法律は飼い慣らされたゾウから入手された象牙を合法化し、その結果、取引に流れる違法な象牙がロンダリングされる抜け穴を作っている。この法律の欠陥はトラフィックの近年のレポート『The Elephant and Ivory Trade in Thailand』でも強調されている。このレポートは、2006年と2007年に実施された象牙の市場調査の結果をまとめている。タイ政府はまた、「Elephant Act(ゾウ法)」を起草する段階に入っており、この新しい法案は、改正されたWARPAとぴたりと適合し、今回限りで現存のすべての抜け穴をふさぐよう意図されている。

 「タイ政府は、象牙の違法取引に取り組む姿勢をはっきりと示している。しかしいまだ国内法に存在している抜け穴や、タイがいまだ大規模で違法な象牙の積荷の目的地である。満足のいく対策が実施される以前に、まだやることがある」とSchaedlaは言う。

 3月にタイの自然資源・環境相(Minster of Natural Resources and Environment) のH.E. Mr Suwit Khunkittiは、スワンナープーム空港を通る乗客をターゲットに「Buy Ivory, buy trouble(象牙を買うことはトラブルと買うこと)」キャンペーンを始め、特に観光客が象牙製品を購入して国境を越えることで象牙の違法取引に油を注ぐことがないよう呼びかけている。

2010年05月12日
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