
ホーム>野生生物ニュース>違法事例・法執行ニュース>何万羽もの鳥類 ジャカルタの路上で違法販売
![]() © Kanitha Krishnasamy/TRAFFIC |
【インドネシア、ジャカルタ発 2015年9月25日】
ジャカルタで無秩序に広がりを見せている鳥市場の包括的な調査で、恐ろしい規模の在来種の違法取引が明らかになり、インドネシアに危機感が募っている。インドネシアはアジアの中で絶滅のおそれのある鳥類の数がもっとも多い国である。
トラフィックにより発表された報告書『In the Market for Extinction: An inventory of Jakarta's bird markets(絶滅を招く市場で:ジャカルタの鳥市場販売種リスト)』では、Pramuka(プラムカ)、Jatinegara(ジャティヌガラ)および、Barito(バリト)の市場における3日間におよぶ調査で206種、1万9,000羽を超える鳥類の販売を確認した。
![]() 確認された固有種であることが近年認められた © Kanitha Krishnasamy/TRAFFIC |
数えた鳥類の大部分(98%)がインドネシアの在来種で、国内の捕獲割当制度の枠外、あるいは特定の種に対する保護法そのものに違反して捕獲されていた。大半が野生捕獲だと見なされた。
インドネシアの法律は、保護対象外の鳥類の取引を認めているが、2002年から在来種についての「捕獲禁止」割当措置が導入されている。これにより、保護の対象種であるか否かにかかわらず、インドネシアのあらゆる野鳥類の捕獲または取引が違法となっている。この規則の唯一の例外は、商業目的の繁殖用種鳥として、数種の少量捕獲を認めていることである。
調査員が調査した鳥類の5分の1がインドネシアの固有種、すなわち地球上の他のどの場所でも見ることのない種であると判明した。販売されていた在来8種は、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで世界的に絶滅が危惧されている種として評価されている。その8種は、カンムリシロムク、ソデグロムクドリ(ともにCR:近絶滅種)、チャビタイガビチョウ(EN:絶滅危惧種)、ブンチョウ、スマトラガビチョウ、ショウジョウインコ、キガシラヒヨドリおよび、ジャワバンケン(すべてVU:危急種)である。
プラムカ市場は、国内最大の鳥市場であり、バリトやジャティヌガラ市場の10倍以上の鳥類を販売している。
都市部の3大鳥市場における販売の包括的調査が一斉におこなわれたのは、今回がはじめてである。インドネシアの鳥市場に関する以前の調査では、特定種に大きく焦点が当たり、首都の鳥類取引の規模の全容を明らかにできていなかった。
インドネシアでは、鳥を飼うことは文化的に重要な意味を持っており、これらの市場に多くの鳥類がいることは、そのことを反映している。また、さえずりコンテストが、賞を取った特定の鳥類の需要を増加させ、野生でのその種への影響も大きくしている。そして結果的に、多くの種が取引によって絶滅の危機にさらされている。
「これはインドネシアの鳥類にとって最悪の事態である。たった3日間の3市場における調査で、膨大な量が記録されたことを考えると、野鳥類の個体数に対する狩猟と取引の全体的な影響は計り知れない」と、調査報告書の共著者であるトラフィック東南アジアのプログラムオフィサーSerene Chngは述べた。
在来種に対する法律は概ね抑止効果を発揮していたが、市場においての監視と執行が欠如していたことを今回の調査が、明らかにした。この結果を受けて、保護対象種を公然と販売する業者の起訴が、法執行の最優先事項であると、トラフィックは提言する。
「このような市場が現在の形で存続するかぎり、インドネシアの鳥類保全を台無しにする違法取引は続くだろう。保全努力の強化をすでに始めているインドネシアの新政府に対して、私たちは、今の危機に取り組むために断固とした行動をとることを要請する」と、トラフィックの東南アジア地域代表クリス・シェファード(Chris R. Shepherd)は述べた。「このような市場での違法取引を終了させることが不可欠である」。
取引の規模と広がりを考え、トラフィックは、インドネシアの法律の見直しと改訂についても求めた。現状では保護対象リストに掲載されていない在来種を対象に加えること、また、取引でよく見られる在来種ではない種も網羅することなどである。
インドネシアの野鳥類の需要を減らす長期的な保全戦略と合わせ、調査報告は、商業目的の飼育繁殖事業に対する適切な監視や規制を確かなものにする必要性も強調した。
この調査の結果は、シンガポールで開催される"Songbird Crisis Summit"での議論を支える材料になるだろう。このサミットは、専門家が集まり戦略的行動計画をまとめ上げ、アジアにおける絶滅のおそれのある鳥類の保全や執行への取り組みを強化するものである。
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